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黄昏に鳴らぬ鐘、イシュタムの魂を宿すさえない俺  作者: 和泉發仙


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209/404

刃街、第一刃ブレード——刃は道具、道具は座

荷車から臨時の黒板をおろし、鍛台と打台、刃見棚がびっしり並ぶ刃街の大路——風の上手に立てた。

あーさん(相沢千鶴)が白墨で三行に今日の二行を添える。


名は輪郭。

輪郭は境界。

境界は——蝶番。

刃は道具。

道具は座。


胸骨の前で二拍。

とん・とん——B0.6。

静けさは扉。


「短く点呼」

「ユウキ」

「よっしーや」

「クリフさん」

「ニーヤですニャ」

「リンク」——「キュイ」

「あーさん、相沢千鶴にござります」

「……カァ(ブラック)」

《蒼角》ロウル/ツグリ、《炎狐》フェイ/チトセ。

後詰「ガロット」「セレス」。外縁「ジギー」「サジ」「カエナ」「ゴブリン若者隊**」。

特記:リリアーナ(台帳・呼び戻し札・受付筆リモート)。バーグ兵士長(捕虜札「非致死捕虜/雑炊済」)は本日も口は元気、節度は見習い中。


セレスが氷地図に刃印を落とす。

「刃街。各鍛台の刃口が刃歌と直結、『抜け=見せよ=従え』で脅し札を人と仕事に向けっぱなし。主宰——第一刃ブレード。刃=威圧の押し付けで拍を奪う。刃口蝶番と棟梁を座に戻せば、“命じる刃”は“置く道具(座具)へ」


よっしーの虚空庫アイテムボックスがぼん。

風幕(防鳴ブルーシート)/斜光帆(刃の照り返し落とし)/フェルト幕(厚)/消音布/鍔止め楔/棟あて木/刃こぼれ麻布(角殺し)/油紙(包み)/火消し砂/返刃鍵/返具鍵/押し戻しタンポ(〈刃〉〈具〉〈名〉)/面取り板(鍛台角落とし)/縦抱え帆柱/枡枕/沈黙箱(細・中:斬鴉・研ぎ鬼用)/角布・拭い布/鎖輪。

腹は——鶏ごぼうおにぎり、根菜けんちん、どら焼き、玄米茶。

黒板の端にリナが小さく**「おやつは二個まで」。ルフィは三つ目のどら焼きに手を伸ばしかけてそっと戻した(今日もほんとうにえらい**)。


ガロットが槍尻でとん・とん。

「目的は三つ。

一、刃の喉(刃口蝶番・棟梁・鍛枠)を倒さず座らせる(舌凧×2+風幕重ね+縦抱え帆柱+枡枕)。

二、刃歌鎖と脅し札鎖の直結をほどほどに解き、“抜けば従う”を“置いて使う(座具)”へ戻す。

三、人は返す。非致死、ほどほど」


胸骨の前で二拍。

とん・とん。出立。



1)帯刀門——「帯刀なき者、職無し」の札


通りの中央、帯刀門。

額の札には**「帯刀なき者、職無し」。

荷車を押す細工師の夫婦が列に入り、係が抜刀見本を掲げた。

「腰の刃を見せよ。鞘は不可。裸身の刃にて職**を与える」

幼い娘が父の着物の端を掴む。


母が一歩出る。

「……ミヅキって呼んでください。『職無し』じゃなくて名で」


「風幕一段」

よっしーの防鳴シートが門の風上にぱさ、斜光帆が刃のギラつきをやわらげ、フェルト幕が金具の甲高い鳴きを毛布に落とす。

俺は扉縫合(Lv.2)で門頭の刃口蝶番に角点。

カチ。

鋼のぴと音が湯気に変わり、抜刀の押しが半拍座った。


リリアーナが五鈴法・刃版をひらく。

一——名(B0.6でちり)、

二——ロウルがとん・とん

三——刃(あーさんが具図を掲げる)、

四——口(ブラックが刃口を撫でる)、

五——返刃(置きどころは後で)。


ミヅキの帯に落ちかけた裸身札の影がきゅっと外へ抜け、返し棚の高さに逃げができた。



2)第一刃ブレード——刃束の肩、刃舌はじた


中央の鍛台から刃の人が現れる。

肩は刃束、胸は刃目盤、指は砥石櫛、喉に小さな刃舌。

第一刃ブレード。

声は命令句で話す——先に抜が落ち、のちに語が従う。

「名は刻印。刃が主。

抜いて見せ、上に従え——威は秩序」


あーさんが板を軽く立て、短く。

刃は道具。

道具は座。

「座は置くもの。向けっぱなしの恐れを作るためじゃありません」


刃舌がぴとと鳴る。

「礼法は抜刀式。抜が法だ」



3)“刃の喉”を座へ——舌凧×縦抱え×枡枕/研ぎ合わせ台・返刃棚・道具見席


「揚げる」

俺とニーヤの舌凧が刃口と鍛枠へふわ。

あーさんの似せ印を浅く、扉縫合で角に点。

ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。

カチ、カチ。

“抜かせ口”が“置き口”へ、切先の張りが座に落ちる。


ツグリの縦抱え帆柱が棟梁を抱え、よっしーの枡枕が鉄鳴きを丸める。

フェイが鍔止め楔で遊びをすっととめ、チトセが棟あて木と刃こぼれ麻布で角をさっと落とす。

白墨で白の口を三つ——研ぎ合わせ台(二拍+名+用途→置く(抜く前に合わせる))、返刃棚(脅し札・抜刀証の返却)、道具見席(道具=置きどころの席)。

「あわてず二拍。名→用途→置く」あーさん。



4)“裸身義務”の外し方——返具・返刃、名呼び、仕事札


係が細工師へ裸身札をぺたり。

よっしーが拭い布で角を一撫で、俺が押し戻しタンポで**〈刃〉印を〈具〉へ差し替え。

カチ。

リリアーナが四鈴法・道具版を重ねる。

一——名、二——拍、三——具口(道具見席に“座”)、四——返具。

ミヅキは胸骨の前で二拍**、はっきり言う。

「……ミヅキ。今日は木地、削り刀は鞘。見せびらかしは不要。裸身札は返す」

合唱鍵がB0.6でちり。

裸身札は返刃棚へさらりと落ち、仕事札『木地:削り/刃は鞘/礼:二拍のあと』が掌にすっと。

——威圧はほどけ、道具=座が置かれた。


第一刃ブレードの刃舌がぴくと震える。

「返せば統制が崩れる」

「崩れるのは脅し。刃は置くために」あーさん。



5)刃守と研ぎ鬼、斬鴉——非致死、“ほどほど”


台下から刃守が四人、腰に緊帯。

路地の陰から研ぎ鬼(何でも尖らせる小鬼)がきしきし、空から斬鴉がカァ。

サジとカエナが屋根から滑り、藁布ふわり→痺れ粉を“薄く”。

「効きすぎはナシ」

リンクが梁上から二段、刃守の継手へちょん、ちょん。

俺の扉縫合が刃口の角に点、ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。

カチ。

刃守は倒れず、座って縄籠へ。

研ぎ鬼はチトセの刃こぼれ麻布で角を奪われ、尖りが当たりに変わる。

斬鴉はよっしーの沈黙箱(細)+油紙でふわと包んで非致死捕縛/玄米茶済。

「……温いのは正義」

「節度や」よっしー。

ルフィが籠を覗き、「アタシがやっつけたって言ってよい?」

「非致死でほどほどに、ね」リナ。

ルフィはどら焼き二つで止め、三つ目に手を伸ばしかけてそっと戻した(今日もほんとうにえらい)。



6)“刃歌”——一括抜刀の節をほどく


第一刃ブレードが刃舌をちりと鳴らし、刃歌を落とす。

「抜け・見せよ・従え——抜が主」

歌に呼応して通りの鍛台がずらりと起き、人の帯や手に切先影が勝手に向こうとする。


あーさんが板を立て、短く。

声は橋。

道具は座。

「橋で合図、座に置く。歌は礼のあと」

リリアーナが耳鈴をB0.6でちり。

「五の鈴——返刃」

俺は返刃鍵を掌でとん、刃口の角に点。

ブラックの羽衣が高域を熱へ、ニーヤの薄膜が喉に温。

カチ。

刃歌の押しは湯気にほどけ、二拍+名+用途→合わせ→置く→礼の座具が通りに広がる。

人々は鞘を撫で、刃を置き、使うと返すを自分の拍で決めた。



7)勇者(選ばれた側)の横顔——“ブレード・ショー”“護衛保証”“統一刃規格”“次は鞘”


白天幕の上、勇者レンは自動記録器に笑顔。

「“レン、ブレード・ショーを演出! ワンストロークで威圧、街まるごと整列!”」

——刃街は道具の街へ。映えは座に溶ける。


仮設窓口の勇者サリアは金の細紐を指に絡め、柔らかに囁く。

「護衛保証契約に入れば、抜刀許は永年。緊帯は自動更新、特典も——」

人々が返刃棚に抜刀証を返し、研ぎ合わせ台で仕事札を選び始めると、紐は縁へ戻り、サリアは微笑みながら舌打ち。


見晴台の勇者シュウは規律眼鏡で刃街を見下ろし、図面に赤×。

「非効率。統一刃規格で刃長・角度・研ぎ番手を一本化」

図面の角にあーさんの一筆——秩序は座。

眼鏡は曇ったまま。


砂走りの狭間で勇者トウマは黒い栞を押さえ、短く記す。

「“刃が座にされた……次は鞘だ”」

(——第一鞘シース、来る)



8)刃蔵の奥——“最初の刃(小刀・鉈・包丁)”と古い名の借り


鍛台の裏、刃蔵。

段棚に小刀、鉈、包丁、そして刃のない木型が並ぶ。

それぞれに人の最初の切るが薄く刻まれている。

第一刃ブレードの刃舌が俺を指した。

「君の古い名を借りよう。万刃の基準に」

——胸骨の裏でとん。イシュタム。

(貸さない。返すために置く)

あーさんの指が袖で二拍。とん・とん。


リリアーナが静かに合図。

「五鈴法・刃版、四——口/五——返刃。四鈴法・道具版、四——返具」

俺は返刃鍵と返具鍵を木型の口の角に点、ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。

カチ、カチ。

封じられていた“抜けば従う”は押しを失い、置けば使う/鞘に戻すへ戻る。

チトセが棟あて木で逃げを作り、ツグリが縦抱えで梁を抱え直す。

ロウルの拍が座に落ち、合唱鍵がB0.6でちり。

刃蔵の硬響が湯気に変わった。


第一刃ブレードは刃束の肩を少し下げ、一礼。

「退屈な刃だ。だから安定する」

余韻に薄れた。



9)落としどころ——刃街は“道具の街”、鍛台は“礼の研ぎ合わせ台”


セレスの声が低く速い。

「白を三口。市口・学童前・祠。刃街→道具の街、中央鍛台→礼の研ぎ合わせ台。返刃鍵/返具鍵/研ぎ合わせ台/返刃棚/道具見席を常設。非致死、ほどほど」


ツグリの帆柱が梁を抱え直し、よっしーが枡枕を角に置く。

俺は扉縫合で刃口蝶番の角に点、ブラックの羽衣が最後のキンを熱へ、ニーヤの薄膜が喉を温め切る。

カチ、カチ、カチ。

鍛台は倒れず、“二拍→名→用途→合わせ→置く→礼”の順で扱う研ぎ合わせ台として座った。


バーグ兵士長はむくれながら玄米茶をすすり、ぼそり。

「ワイの見せ刀、居合い用に磨いといて……あ、節度やな? 鞘に入れとくわ」

「うん、節度」リナ。

バーグは素直に鞘を撫で、どら焼きは二つで止めた(ルール順守)。



10)学園式の昼餉——“二拍→合わせ→いただきます”


「ほな、飯や」

よっしーの屋台が鶏ごぼうおにぎりを配り、根菜けんちんをよそい、どら焼きを並べる。

「甘いもんは二個まで! 玄米茶はおかわり一回!」

「アタシここ一生いたい」

「出るために食べるのよ」あーさん。

ルフィは三つ目に手を伸ばしかけてそっと戻した(今日も最後までほんとうにえらい)。


リリアーナが受け札を張り替える。

「刃街→道具の街。刃歌→座具。返刃鍵/返具鍵常設、返口は常時一口」


ジギーは骨騎士に合図し、外縁に針入れを埋める。

「刃物も砥も、まず座に仕舞え。返す時は一本、座の長さで」



11)小稽古——“抜かず→置く→使う→戻す”


白が三口、学園広場へ。

「今日の名」が順に呼ばれ、子ども達は胸骨二拍——とん・とん、

抜かず、置き、使い、戻す。

ロウルの拍が座り、合唱鍵がB0.6でちり。

チトセが刃こぼれ麻布を見せ、刺さる言い方の角を落とす言い直しをゆっくり。

笑いが橋になった。


耳飾りがちり。

『王都学院評議より、刃学/道具学の常設承認。返刃鍵/返具鍵/研ぎ合わせ台の規格化通過。

追記:北の鞘街に装束省の徴。第一鞘シース(鞘=包むの押し付け)の気配。鞘と布に注意、五鈴法・鞘版(名/拍/鞘/口/返鞘)と四鈴法・布版(名/拍/布口/返布)を準備』ミカエラ。

セレスが氷地図に鞘印を落とす。


よっしーがブルーシートを肩に担ぎ直す。

「毛布は正義、白も正義。湯屋は……」

「節度」全員。

「はい」



12)落し刃の小騒動——“ほどほど”の実演


広場の端で、落し刃(誰かの小刀)がころり。

「ワイの飾り小刀どこいったんや!」バーグ。

「落し刃札書いて、二拍や」よっしー。

バーグは渋々、胸骨の前でとん・とん。

「バーグ。見せは一度、使うは仕事、戻すは鞘」

合唱鍵がB0.6でちり。

小刀は屋台の幕からぴょいと顔を出す(※実際はゴブリン若者の気働き)。

バーグは礼にけんちんをよそい、どら焼きは二つで止めた(今日もルール順守)。



13)外縁連絡——裁ち場の刃と台所の包丁


外縁でジギーが骨騎士の肩をとん。

「裁ち場で裸身札の悪習、座具に直した。台所の包丁も研ぎ合わせ台でふるまいを教えといた。

 ほな、次は鞘や」


細工師のミヅキが仕事札を二拍で掲げる。

「鞘があると、肩が軽い」

胸骨の内側が、静かにとんと鳴った。



14)終礼——黒板の二行


夕刻の終礼。

あーさんが黒板に三行+二十行を書き連ね、今日の二行を添えた。

名は輪郭。

輪郭は境界。

境界は——蝶番。

道筋は地図。

重みは枡。

車輪は縁。

橋は手。

流れは拍。

舟は器。

港は掌。

門は蝶番。

鍵は歌。

歌は合図。

広場は皿。

交差は合拍。

刃は道具。

鞘は布。

重さは値。

秤は器。

街は器。

恐れは影。

塔は柱。

声は橋。

鏡は面。

面は器。

箱は蔵。

蔵は座。

蓋は布。

印は紐。

紐は縁。

契は文。

文は座。

そして今日の二行。

刃は道具。

道具は座。


子どもたちがB0.6でそれぞれの名を呼び、道具(返刃鍵・返具鍵・鍔止め楔・棟あて木・角布・拭い布・沈黙箱・風幕・枡枕)を撫でる。

黒板の「今日の名」に新しい丸が増え、リナが丁寧に色を変えて丸を付けた。

ガンツは「道具」の字を指でなぞり、木枡に玄米茶を注ぎながら笑う。

ルフィはどら焼きを二つで止め、三つ目をそっと戻した(今日も最後までほんとにえらい)。



15)屋上の夜——次の扉、“鞘街、第一鞘シース——鞘は布、布は幕”


星が近い。鞘街の鞘台で鞘歌が回り、包み札が人と物を過剰に覆い、隠して通さぬ気配。

クリフさんが弓弦をとんと鳴らす。

「鞘に押されると、矢名は的を見失う」

セレスが氷地図に鞘印を重ねる。

「第一鞘シース。鞘=包むの押し付け。対処は——風幕で鞘歌を毛布に、舌凧で鞘口蝶番に点、縦抱えで梁を抱える。

五鈴法・鞘版(名/拍/鞘/口/返鞘)と四鈴法・布版(名/拍/布口/返布)の準備」


あーさんが板を抱え、静かに微笑む。

「講話は短く。

鞘は布。

布は幕。

——明日の黒板に、きれいに書こう」


胸骨の前で二拍。

とん・とん。

静けさは扉。


稽古は続く。

開ける。置く。結ぶ。閉じる。そして、返す。


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