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黄昏に鳴らぬ鐘、イシュタムの魂を宿すさえない俺  作者: 和泉發仙


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207/404

第一秤スケール——重さは値、秤は器

荷車から臨時の黒板をおろし、天秤台・棒秤台・分銅棚が並ぶ秤街の大路——風の上手に立てた。

あーさん(相沢千鶴)が白墨で三行に今日の二行を添える。


名は輪郭。

輪郭は境界。

境界は——蝶番。

重さは値。

秤は器。


胸骨の前で二拍。

とん・とん——B0.6。

静けさは扉。


「短く点呼」

「ユウキ」

「よっしーや」

「クリフさん」

「ニーヤですニャ」

「リンク」——「キュイ」

「あーさん、相沢千鶴にござります」

「……カァ(ブラック)」

《蒼角》ロウル/ツグリ、《炎狐》フェイ/チトセ。

後詰は「ガロット」「セレス」。外縁は「ジギー」「サジ」「カエナ」「ゴブリン若者隊**」。

特記:リリアーナ(台帳・呼び戻し札・受付筆リモート)。バーグ兵士長(捕虜札「非致死捕虜/雑炊済」)は今日も口は元気、節度訓練中。


セレスが氷地図に秤印を落とす。

「秤街。各秤台の秤口が秤歌と直結、『量れ=値札を付けよ=従え』で人や物に値を縫い止める。主宰——第一秤スケール。秤=値の押し付けで拍を奪う。秤口蝶番と梃子梁を座に戻せば、“命じる秤”は“置く器(座秤)へ」


よっしーの虚空庫アイテムボックスがぼん。

風幕(防鳴ブルーシート)/斜光帆(目盛の照り返し落とし)/フェルト幕(厚)/消音布/分銅詰め木箱(調整用)/指針止め楔/返秤鍵/返値鍵/押し戻しタンポ(〈秤〉〈値〉〈名〉)/面取り板(秤台角落とし)/縦抱え帆柱/枡枕/沈黙箱(細・中:値付け鴉・換算鬼用)/角布・拭い布/鎖輪。

腹は——焼きおにぎり、豚汁、きなこ餅、ほうじ茶。

黒板の端にリナが小さく**「おやつは二個まで」。ルフィは三つ目のきなこ餅に手を伸ばしかけてそっと戻した(今日もほんとうにえらい**)。


ガロットが槍尻でとん・とん。

「目的は三つ。

一、秤の喉(秤口蝶番・梃子梁・秤枠)を倒さず座らせる(舌凧×2+風幕重ね+縦抱え帆柱+枡枕)。

二、秤歌鎖と値札鎖の直結をほどほどに解き、“量れば従価”を“置いて量る(座秤)”へ戻す。

三、人は返す。非致死、ほどほど」


胸骨の前で二拍。

とん・とん。出立。



1)計量門——「値札のない者は通行不可」の札


通りの中央、計量門。

額の札には**「値札のない者は通行不可」。

干し魚を背負った沿岸の漁婦が列に並ぶ。係が棒秤を肩に担ぎ、魚籠をぶら下げた。

「重量三・七、等級乙、対価は銀貨四枚。値札を胸へ」

漁婦の隣に、麻布の裂き帯**を握った小さな娘。娘は背伸びして母の顔を見る。


娘が一歩前へ。

「……ヒサって呼んでください。『乙』じゃなくて名で」


「風幕一段」

よっしーの防鳴シートが計量門の風上にぱさ、斜光帆が指針のギラをやわらげ、フェルト幕が金具の高鳴きを毛布に落とす。

俺は扉縫合(Lv.2)で門頭の秤口蝶番に角点。

カチ。

針先のぴと音が湯気に変わり、値札の押しが半拍座った。


リリアーナが五鈴法・秤版をひらく。

一——名(B0.6でちり)、

二——ロウルがとん・とん

三——秤(あーさんが器図を掲げる)、

四——口(ブラックが秤口を撫でる)、

五——返秤(置きどころは後で)。


ヒサの胸に落ちかけた等級乙札の影がきゅっと外へ抜け、返し棚の高さに逃げができた。



2)第一秤スケール——秤束の肩、秤舌はかりじた


中央の秤台から秤の人が現れる。

肩は秤束、胸は目盛盤、指は分銅匙、喉に小さな秤舌。

第一秤スケール。

声は従価句で話す——先に針が落ち、のちに語が従う。

「名は値札欄。重が値。

軽ければ安く、重ければ高い——秩序は分銅」


あーさんが板を軽く立て、短く。

重さは値。

秤は器。

「器は置くもの。胸に値札を縫い付ける針ではありません」


秤舌がぴとと鳴る。

「礼法は計量法。針が法だ」



3)“秤の喉”を座へ——舌凧×縦抱え×枡枕/取り量り台・返秤棚・値見席


「揚げる」

俺とニーヤの舌凧が秤口と秤枠へふわ。

あーさんの似せ印を浅く、扉縫合で角に点。

ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。

カチ、カチ。

“従価口”が“置き口”へ、針の張りが座に落ちる。


ツグリの縦抱え帆柱が梃子梁を抱え、よっしーの枡枕が金鳴きを丸める。

フェイが分銅詰め木箱で偏りをすっと補正、チトセが面取り板で台角をさっと落とす。

白墨で白の口を三つ——取り量り台(二拍+名+中身→量る/量らないを選ぶ)、返秤棚(値札・等級札の返却)、値見席(値=見立ての置きどころの席)。

「あわてず二拍。名→中身→置く」あーさん。



4)“重量=値段”の外し方——返値・返秤、名呼び、見積札


係が漁婦へ銀貨四枚札をぺたり。

よっしーが拭い布で角を一撫で、俺が押し戻しタンポで**〈秤〉印を〈値〉へ差し替え。

カチ。

リリアーナが四鈴法・値版を重ねる。

一——名、二——拍、三——値口(値見席に“座”)、四——返値。

ヒサは胸骨の前で二拍**、はっきり言う。

「……ヒサ。今日は荒天明け、香は強い。煮干用に半値で多め、明日は潮で上がる。従価札は返す」

合唱鍵がB0.6でちり。

銀貨札は返秤棚へさらりと落ち、見積札『用途:煮干/量:多め/礼:二拍のあと』が掌にすっと。

——従価はほどけ、値=見立てが座った。


第一秤スケールの秤舌がぴくと震える。

「返せば統一価格が崩れる」

「崩れるのは押し付け。秤は置くために」あーさん。



5)秤守と換算鬼、値付け鴉——非致死、“ほどほど”


台下から秤守が四人、腰に分銅束。

路地の陰から換算鬼(何でも金額に押し込む小鬼)がカチコチ、空から値付け鴉がカァ。

サジとカエナが屋根から滑り、藁布ふわり→痺れ粉を“薄く”。

「効きすぎはナシ」

リンクが梁上から二段、秤守の継手へちょん、ちょん。

俺の扉縫合が秤口の角に点、ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。

カチ。

秤守は倒れず、座って縄籠へ。

換算鬼はチトセの分銅詰め木箱で余白を与えられ、換算が見積に変わる。

値付け鴉はよっしーの沈黙箱(細)+斜光帆切れ端でふわと包んで非致死捕縛/ほうじ茶済。

「……温いのは正義」

「節度や」よっしー。

ルフィが籠を覗き、「アタシがやっつけたって言ってよい?」

「非致死でほどほどに、ね」リナ。

ルフィはきなこ餅二個で止め、三つ目に手を伸ばしかけてそっと戻した(今日もほんとうにえらい)。



6)“秤歌”——一括従価の節をほどく


第一秤スケールが秤舌をちりと鳴らし、秤歌を落とす。

「量れ・値札を貼れ・従え——針が主」

歌に呼応して通りの秤台がずらりと起き、人の肩や品に値札影が勝手に貼り付こうとする。


あーさんが板を立て、短く。

声は橋。

秤は器。

「橋で合図、器に置く。歌は礼のあと」

リリアーナが耳鈴をB0.6でちり。

「五の鈴——返秤」

俺は返秤鍵を掌でとん、秤口の角に点。

ブラックの羽衣が高域を熱へ、ニーヤの薄膜が喉に温。

カチ。

秤歌の押しは湯気にほどけ、二拍+名+中身→量る/見積もる→置く→礼の座秤が通りに広がる。

人々は自分の秤を選び、使うと返すを自分の拍で決めた。



7)勇者(選ばれた側)の横顔——“スケール・ショー”“物価保証”“統一価格規格”“次は紐”


白天幕の上、勇者レンは自動記録器に笑顔。

「“レン、スケール・ショーを演出! ワンタッチで全品一斉価格!”」

——秤街は取り量りの街へ。映えは座に溶ける。


仮設窓口の勇者サリアは金の細紐を指に絡め、柔らかに囁く。

「物価保証契約に入れば、値崩れはゼロ。指針は中央リモートで更新、特典も——」

人々が返秤棚に値札を返し、取り量り台で見積札を選び始めると、紐は縁へ戻り、サリアは微笑みながら舌打ち。


見晴台の勇者シュウは規律眼鏡で秤街を見下ろし、図面に赤×。

「非効率。統一価格規格で目盛間隔・分銅セット・値付単位を一本化」

図面の角にあーさんの一筆——秩序は座。

眼鏡は曇ったまま。


砂走りの狭間で勇者トウマは黒い栞を押さえ、短く記す。

「“秤が座にされた……次は紐だ”」

(——第一紐ロープ、紐=縁の押し付け。来る)



8)秤蔵の奥——“最初の秤(手秤・掌枡)”と古い名の借り


秤台の裏、秤蔵。

段棚に棒秤、天秤、掌秤、そして小さな掌枡が並ぶ。

それぞれに人の最初の取り量りが薄く刻まれている。

第一秤スケールの秤舌が俺を指した。

「君の古い名を借りよう。万秤の基準に」

——胸骨の裏でとん。イシュタム。

(貸さない。返すために置く)

あーさんの指が袖で二拍。とん・とん。


リリアーナが静かに合図。

「五鈴法・秤版、四——口/五——返秤。四鈴法・値版、四——返値」

俺は返秤鍵と返値鍵を掌秤の口の角に点、ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。

カチ、カチ。

封じられていた“量れば従う”は押しを失い、量れば分かち合う/見積もれば相談へ戻る。

チトセが分銅詰めで遊びを、ツグリが縦抱えで梁を抱え直す。

ロウルの拍が座に落ち、合唱鍵がB0.6でちり。

秤蔵の硬響が湯気に変わった。


第一秤スケールは秤束の肩を少し下げ、一礼。

「退屈な秤だ。だから安定する」

余韻に薄れた。



9)落としどころ——秤街は“取り量りの街”、秤台は“礼の取り量り台”


セレスの声が低く速い。

「白を三口。市口・学童前・祠。秤街→取り量りの街、中央秤台→礼の取り量り台。返秤鍵/返値鍵/取り量り台/返秤棚/値見席を常設。非致死、ほどほど」


ツグリの帆柱が梁を抱え直し、よっしーが枡枕を角に置く。

俺は扉縫合で秤口蝶番の角に点、ブラックの羽衣が最後のキンを熱へ、ニーヤの薄膜が喉を温め切る。

カチ、カチ、カチ。

秤台は倒れず、“二拍→名→中身→量る/見積もる→置く→礼”の順で扱う取り量り台として座った。


バーグ兵士長はむくれながらほうじ茶をすすり、ぼそり。

「ワイの焼きおにぎり、重さ換算で三個頼む」

「節度や」リナ。

バーグは素直に一個半に直し、きなこ餅は二個で止めた(ルール順守)。



10)学園式の昼餉——“二拍→見積→いただきます”


「ほな、飯や」

よっしーの屋台が焼きおにぎりを配り、豚汁をよそい、きなこ餅を並べる。

「甘いもんは二個まで! ほうじ茶はおかわり一回!」

「アタシここ一生いたい」

「出るために食べるのよ」あーさん。

ルフィは三つ目に手を伸ばしかけてそっと戻した(今日も最後までほんとうにえらい)。


リリアーナが受け札を張り替える。

「秤街→取り量りの街。秤歌→座秤。返秤鍵/返値鍵常設、返口は常時一口」


ジギーは骨騎士に合図し、外縁に針入れを埋める。

「分銅も桿も、まず座に仕舞え。返す時は一本、座の長さで」



11)小稽古——“分ける→余す→渡す→礼”


白が三口、学園広場へ。

「今日の名」が順に呼ばれ、子ども達は胸骨二拍——とん・とん、

分け、余し、渡し、礼する。

ロウルの拍が座り、合唱鍵がB0.6でちり。

チトセが分銅を見せ、きつい取り立ての角を落とす言い直しをゆっくり。

笑いが橋になった。


耳飾りがちり。

『王都学院評議より、秤学/値学の常設承認。返秤鍵/返値鍵/取り量り台の規格化通過。

追記:北の紐街に縁務省の徴。第一紐ロープ(紐=縁の押し付け)の気配。紐と縁に注意、五鈴法・紐版(名/拍/紐/口/返紐)と四鈴法・縁版(名/拍/縁口/返縁)を準備』ミカエラ。

セレスが氷地図に紐印を落とす。


よっしーがブルーシートを肩に担ぎ直す。

「毛布は正義、白も正義。湯屋は……」

「節度」全員。

「はい」



12)落し分銅の小騒動——“ほどほど”の実演


広場の端で、落し分銅(誰かの小分銅)がころり。

「ワイの特盛り分銅どこいったんや!」バーグ。

「落し分銅札書いて、二拍や」よっしー。

バーグは渋々、胸骨の前でとん・とん。

「バーグ。盛りは腹八分、おかわりは一回」

合唱鍵がB0.6でちり。

分銅は屋台の幕からぴょいと顔を出す(※実際はゴブリン若者の気働き)。

バーグは礼に豚汁をよそい、きなこ餅は二個で止めた(今日もルール順守)。



13)外縁連絡——北の値付戦線・裁ち場の援け


外縁でジギーが骨騎士の肩をとん。

「裁ち場で布値を胸に縫う悪習が残ってる。紐の前座やね。

 取り量り台ひとつ貸してくれるかい?」

「もちろん」

骨騎士の列が分銅と枡枕を積んで出立。サジとカエナは粉袋を叩き、「薄め、ほどほど」と笑う。

学園の子らは見送りに二拍——とん・とん。



14)終礼——黒板の二行


夕刻の終礼。

あーさんが黒板に三行+二十行を書き連ね、今日の二行を添えた。

名は輪郭。

輪郭は境界。

境界は——蝶番。

道筋は地図。

重みは枡。

車輪は縁。

橋は手。

流れは拍。

舟は器。

港は掌。

門は蝶番。

鍵は歌。

歌は合図。

広場は皿。

交差は合拍。

刃は道具。

鞘は布。

重さは値。

秤は器。

街は器。

恐れは影。

塔は柱。

声は橋。

鏡は面。

面は器。

箱は蔵。

蔵は座。

蓋は布。

印は紐。

紐は縁。

契は文。

文は座。

そして今日の二行。

重さは値。

秤は器。


子どもたちがB0.6でそれぞれの名を呼び、道具(返秤鍵・返値鍵・分銅詰め木箱・面取り板・角布・拭い布・沈黙箱・風幕・枡枕)を撫でる。

黒板の「今日の名」に新しい丸が増え、リナが丁寧に色を変えて丸を付けた。

ガンツは「値」の字を指でなぞり、木枡にほうじ茶を注ぎながら笑う。

ルフィはきなこ餅を二個で止め、三つ目をそっと戻した(今日も最後までほんとにえらい)。



15)屋上の夜——次の扉、“紐街、第一紐ロープ——紐は縁、縁は座”


星が近い。紐街の結び台で紐歌が回り、縁札が人と物の関係を結びっぱなしにする気配。

クリフさんが弓弦をとんと鳴らす。

「紐に押されると、矢名は標的ではなく縁で縛られる」

セレスが氷地図に紐印を重ねる。

「第一紐ロープ。紐=縁の押し付け。対処は——風幕で紐歌を毛布に、舌凧で紐口蝶番に点、縦抱えで梁を抱える。

五鈴法・紐版(名/拍/紐/口/返紐)と、四鈴法・縁版(名/拍/縁口/返縁)の準備」


あーさんが板を抱え、静かに微笑む。

「講話は短く。

紐は縁。

縁は座。

——明日の黒板に、きれいに書こう」

挿絵(By みてみん)

胸骨の前で二拍。

とん・とん。

静けさは扉。


稽古は続く。

開ける。置く。結ぶ。閉じる。そして、返す。


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