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黄昏に鳴らぬ鐘、イシュタムの魂を宿すさえない俺  作者: 和泉發仙


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205/404

鐘街、第一鐘ベル——鐘は合図、合図は座

荷車から臨時の黒板をおろし、鐘楼台と合図盤、拍子台がびっしり並ぶ鐘街の大路——風の上手に立てた。

あーさん(相沢千鶴)が白墨で三行に今日の二行を添える。


名は輪郭。

輪郭は境界。

境界は——蝶番。

鐘は合図。

合図は座。


胸骨の前で二拍。

とん・とん——B0.6。

静けさは扉。


「短く点呼」

「ユウキ」

「よっしーや」

「クリフさん」

「ニーヤですニャ」

「リンク」——「キュイ」

「あーさん、相沢千鶴にござります」

「……カァ(ブラック)」

《蒼角》ロウル/ツグリ、《炎狐》フェイ/チトセ。

後詰「ガロット」「セレス」。外縁「ジギー」「サジ」「カエナ」「ゴブリン若者隊**」。

特記:リリアーナ(台帳・呼び戻し札・受付筆リモート)。バーグ兵士長(捕虜札「非致死捕虜/雑炊済」)は本日も口は元気、節度は見習い。


セレスが氷地図に鐘印を落とす。

「鐘街。各鐘楼の鐘口が鐘歌と直結、『鳴らせ=揃えよ=従え』で人の動きと時を一律に縛る。主宰——第一鐘ベル。鐘=合図の押し付けで拍を奪う。鐘口蝶番と梁を座に戻せば、“命じる鐘”は“置く合図(座合)へ」


よっしーの虚空庫アイテムボックスがぼん。

風幕(防鳴ブルーシート)/遮音帆/フェルト幕(厚)/消音布/鐘舌止かねしたどめ楔/撥皮ばちがわ(打撃緩衝)/鳴り砂(余韻落とし)/返鐘鍵/返合鍵/押し戻しタンポ(〈鐘〉〈合〉〈名〉)/面取り板(鐘台角落とし)/縦抱え帆柱/枡枕/沈黙箱(細・中:時鴉・拍子鬼用)/角布・拭い布/鎖輪。

腹は——山菜おこわ、若布わかめの澄まし、くず餅、麦茶。

黒板の端にリナが小さく**「おやつは二個まで」。ルフィは三皿目のくず餅に手を伸ばしかけてそっと戻した(今日もほんとうにえらい**)。


ガロットが槍尻でとん・とん。

「目的は三つ。

一、鐘の喉(鐘口蝶番・梁・鐘枠)を倒さず座らせる(舌凧×2+風幕重ね+縦抱え帆柱+枡枕)。

二、鐘歌鎖と合図札鎖の直結をほどほどに解き、“鳴らして命令”を“置いて知らせる(座合)”へ戻す。

三、人は返す。非致死、ほどほど」


胸骨の前で二拍。

とん・とん。出立。



1)時刻門——「鐘一打につき一動作」の札


通りの中央、時刻門。

額の札には**「鐘一打につき一動作」。

背に薪束の老木樵と、脇に孫娘。

係が拍子棒でカン**。「三打後に屈伸、その後は回れ右」

孫娘が眉をひそめる。


少女が一歩前へ。

「……ナオって呼んでください。『屈伸』じゃなくて名で」


「風幕一段」

よっしーの防鳴シートが門の風上にぱさ、フェルト幕が金の高鳴きを毛布に落とす。

俺は扉縫合(Lv.2)で門頭の鐘口蝶番に角点。

カチ。

打鐘のぴと音が湯気に変わり、拍子棒の押しが半拍座った。


リリアーナが五鈴法・鐘版をひらく。

一——名(B0.6でちり)、

二——ロウルがとん・とん

三——鐘(あーさんが合図図を掲げる)、

四——口(ブラックが鐘口を撫でる)、

五——返鐘(置きどころは後で)。


ナオの肩に落ちかけた動作札の影がきゅっと外へ抜け、返し棚の高さに逃げができた。



2)第一鐘ベル——鐘束の肩、鐘舌しょうじた


中央の鐘楼台から鐘の人が現れる。

肩は鐘束、胸は時盤、指は拍子車、喉に小さな鐘舌。

第一鐘ベル。

声は号令句で話す——先に打が落ち、のちに語が従う。

「名は出席簿。鐘が主。

鳴らし、揃え、動かせ——時は支配」


あーさんが板を軽く立て、短く。

鐘は合図。

合図は座。

「座は置くもの。人を振り回す鞭ではありません」


鐘舌がぴとと鳴る。

「礼法は時刻表。刻が法だ」



3)“鐘の喉”を座へ——舌凧×縦抱え×枡枕/打合せ台・返鐘棚・合図見席


「揚げる」

俺とニーヤの舌凧が鐘口と鐘枠へふわ。

あーさんの似せ印を浅く、扉縫合で角に点。

ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。

カチ、カチ。

“号令口”が“置き口”へ、強制の張りが座に落ちる。


ツグリの縦抱え帆柱が梁を抱え、よっしーの枡枕が金鳴きを丸める。

フェイが鐘舌止め楔をすっと当て、チトセが撥皮で打面の角をさっと落とす。

白墨で白の口を三つ——打合せ台(二拍+名+用件→置く(鳴らす前に合わせる))、返鐘棚(合図札・動作札の返却)、合図見席(合図=知らせの置きどころの席)。

「あわてず二拍。名→用件→置く」あーさん。



4)“三打一動作”の外し方——返合・返鐘、名呼び、時合わせ札


係が老木樵へ動作札をぺたり。

よっしーが拭い布で角を一撫で、俺が押し戻しタンポで**〈鐘〉印を〈合〉へ差し替え。

カチ。

リリアーナが四鈴法・合図版を重ねる。

一——名、二——拍、三——合口(合図見席に“座”)、四——返合。

ナオは胸骨の前で二拍**、はっきり言う。

「……ナオ。行くのは水場、合図は二拍のあと、動作は用件で決める。三打一動作は返す」

合唱鍵がB0.6でちり。

動作札は返鐘棚へさらりと落ち、時合わせ札『水汲み:この刻/荷下ろし:次の拍/休む:礼のあと』が掌にすっと。

——号令はほどけ、合図=置く知らせが座った。


第一鐘ベルの鐘舌がぴくと震える。

「返せば統制が崩れる」

「崩れるのは振り回し。合図は置くために」あーさん。



5)鐘守と拍子鬼、時鴉——非致死、“ほどほど”


台下から鐘守が四人、腰に拍子車。

路地の陰から拍子鬼(何でも強拍に揃えさせる小鬼)がカチカチ、空から時鴉がカァ。

サジとカエナが屋根から滑り、藁布ふわり→痺れ粉を“薄く”。

「効きすぎはナシ」

リンクが梁上から二段、鐘守の継手へちょん、ちょん。

俺の扉縫合が鐘口の角に点、ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。

カチ。

鐘守は倒れず、座って縄籠へ。

拍子鬼はチトセの撥皮で強拍を和拍へ変えられ、詰めが余白に変わる。

時鴉はよっしーの沈黙箱(細)+鳴り砂でふわと包んで非致死捕縛/麦茶済。

「……温いのは正義」

「節度や」よっしー。

ルフィが籠を覗き、「アタシがやっつけたって言ってよい?」

「非致死でほどほどに、ね」リナ。

ルフィはくず餅二皿で止め、三皿目に手を伸ばしかけてそっと戻した(今日もほんとうにえらい)。



6)“鐘歌”——一斉号令の節をほどく


第一鐘ベルが鐘舌をちりと鳴らし、鐘歌を落とす。

「鳴らせ・揃えよ・従え——刻が主」

歌に呼応して通りの鐘楼がずらりと起き、人の足も口も作業も一斉に同じ拍へ引っ張られはじめる。


あーさんが板を立て、短く。

声は橋。

合図は座。

「橋で合図、座に置く。歌は礼のあと」

リリアーナが耳鈴をB0.6でちり。

「五の鈴——返鐘」

俺は返鐘鍵を掌でとん、鐘口の角に点。

ブラックの羽衣が高域を熱へ、ニーヤの薄膜が喉に温。

カチ。

鐘歌の押しは湯気にほどけ、二拍+名+用件→知らせ→置く→礼の座合が通りに広がる。

人々は自分の拍を選び、伝えると動くを自分の順で決めた。



7)勇者(選ばれた側)の横顔——“ベル・ショー”“時刻保証”“統一タイム規格”“次は鏡”


白天幕の上、勇者レンは自動記録器に笑顔。

「“レン、ベル・ショーを演出! 一打で街ぜんぶが同時に動く!”」

——鐘街は打合せの街へ。映えは座に溶ける。


仮設窓口の勇者サリアは金の細紐を指に絡め、柔らかに囁く。

「時刻保証契約に入れば、遅刻はゼロ。合図は自動更新、特典も——」

人々が返鐘棚に動作札を返し、打合せ台で時合わせ札を選び始めると、紐は縁へ戻り、サリアは微笑みながら舌打ち。


見晴台の勇者シュウは規律眼鏡で鐘街を見下ろし、図面に赤×。

「非効率。統一タイム規格で鐘打数・歩幅・休憩刻を一本化」

図面の角にあーさんの一筆——秩序は座。

眼鏡は曇ったまま。


砂走りの狭間で勇者トウマは黒い栞を押さえ、短く記す。

「“鐘が座にされた……次は鏡だ”」

(——第一鏡ミラー、来る)



8)鐘蔵の奥——“最初の鐘(風鈴・拍木)”と古い名の借り


鐘楼台の裏、鐘蔵。

段棚に古鐘、拍木、半鐘、そして小さな風鈴が並ぶ。

それぞれに人の最初の合図が薄く刻まれている。

第一鐘ベルの鐘舌が俺を指した。

「君の古い名を借りよう。万鐘の基準に」

——胸骨の裏でとん。イシュタム。

(貸さない。返すために置く)

あーさんの指が袖で二拍。とん・とん。


リリアーナが静かに合図。

「五鈴法・鐘版、四——口/五——返鐘。四鈴法・合図版、四——返合」

俺は返鐘鍵と返合鍵を拍木の口の角に点、ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。

カチ、カチ。

封じられていた“鳴れば従う”は押しを失い、鳴れば知らせる/二拍のあと置くへ戻る。

チトセが撥皮で響きを柔らげ、ツグリが縦抱えで梁を抱え直す。

ロウルの拍が座に落ち、合唱鍵がB0.6でちり。

鐘蔵の硬響が湯気に変わった。


第一鐘ベルは鐘束の肩を少し下げ、一礼。

「退屈な鐘だ。だから安定する」

余韻に薄れた。



9)落としどころ——鐘街は“打合せの街”、鐘楼は“礼の打合せ台”


セレスの声が低く速い。

「白を三口。市口・学童前・祠。鐘街→打合せの街、中央鐘楼→礼の打合せ台。返鐘鍵/返合鍵/打合せ台/返鐘棚/合図見席を常設。非致死、ほどほど」


ツグリの帆柱が梁を抱え直し、よっしーが枡枕を角に置く。

俺は扉縫合で鐘口蝶番の角に点、ブラックの羽衣が最後のキンを熱へ、ニーヤの薄膜が喉を温め切る。

カチ、カチ、カチ。

鐘楼は倒れず、“二拍→名→用件→知らせ→置く→礼”の順で扱う打合せ台として座った。


バーグ兵士長はむくれながら麦茶をすすり、ぼそり。

「ワイの昼寝の鐘、三打→十五分で頼む」

「節度や」リナ。

バーグは素直に一打→十分に直し、くず餅は二皿で止めた(ルール順守)。



10)学園式の昼餉——“二拍→知らせ→いただきます”


「ほな、飯や」

よっしーの屋台が山菜おこわを配り、若布の澄ましをよそい、くず餅を並べる。

「甘いもんは二個まで! 麦茶はおかわり一回!」

「アタシここ一生いたい」

「出るために食べるのよ」あーさん。

ルフィは三皿目に手を伸ばしかけてそっと戻した(今日も最後までほんとうにえらい)。


リリアーナが受け札を張り替える。

「鐘街→打合せの街。鐘歌→座合。返鐘鍵/返合鍵常設、返口は常時一口」


ジギーは骨騎士に合図し、外縁に針入れを埋める。

「鐘材も拍子具も、まず座に仕舞え。返す時は一本、座の長さで」



11)小稽古——“呼ぶ→集まる→分かれる”


白が三口、学園広場へ。

「今日の名」が順に呼ばれ、子ども達は胸骨二拍——とん・とん、

呼び、集まり、分かれる。

ロウルの拍が座り、合唱鍵がB0.6でちり。

チトセが撥皮を見せ、きつい号令の角を落とす言い直しをゆっくり。

笑いが橋になった。


耳飾りがちり。

『王都学院評議より、鐘学/合図学の常設承認。返鐘鍵/返合鍵/打合せ台の規格化通過。

追記:北の鏡街に面相省の徴。第一鏡ミラー(鏡=評価の押し付け)の気配。鏡と面に注意、五鈴法・鏡版(名/拍/鏡/口/返鏡)と四鈴法・面版(名/拍/面口/返面)を準備』ミカエラ。

セレスが氷地図に鏡印を落とす。


よっしーがブルーシートを肩に担ぎ直す。

「毛布は正義、白も正義。湯屋は……」

「節度」全員。

「はい」



12)落し打の小騒動——“ほどほど”の実演


広場の端で、落し打(誰かの合図棒)がころり。

「ワイの昼飯合図棒どこいったんや!」バーグ。

「落し打札書いて、二拍や」よっしー。

バーグは渋々、胸骨の前でとん・とん。

「バーグ。合図は一回、おかわりは一度」

合唱鍵がB0.6でちり。

棒は屋台の幕からぴょいと顔を出す(※実際はゴブリン若者の気働き)。

バーグは礼に澄ましをよそい、くず餅は二皿で止めた(今日もルール順守)。



13)終礼——黒板の二行


夕刻の終礼。

あーさんが黒板に三行+二十行を書き連ね、今日の二行を添えた。

名は輪郭。

輪郭は境界。

境界は——蝶番。

道筋は地図。

重みは枡。

車輪は縁。

橋は手。

流れは拍。

舟は器。

港は掌。

門は蝶番。

鍵は歌。

歌は合図。

広場は皿。

交差は合拍。

刃は道具。

鞘は布。

重さは値。

秤は器。

街は器。

恐れは影。

塔は柱。

声は橋。

鏡は面。

面は器。

枠は型。

型は器。

箱は蔵。

蔵は座。

蓋は布。

印は紐。

紐は縁。

契は文。

文は座。

そして今日の二行。

鐘は合図。

合図は座。


子どもたちがB0.6でそれぞれの名を呼び、道具(返鐘鍵・返合鍵・撥皮・鳴り砂・面取り板・角布・拭い布・沈黙箱・風幕・枡枕)を撫でる。

黒板の「今日の名」に新しい丸が増え、リナが丁寧に色を変えて丸を付けた。

ガンツは「合図」の字を指でなぞり、木枡に麦茶を注ぎながら笑う。

ルフィはくず餅を二皿で止め、三皿目をそっと戻した(今日も最後までほんとにえらい)。



14)屋上の夜——次の扉、“鏡街、第一鏡ミラー——鏡は面、面は器”


星が近い。鏡街の鏡台で鏡歌が回り、評価札が人の顔とふるまいに点数を貼る気配。

クリフさんが弓弦をとんと鳴らす。

「鏡に押されると、矢名は的でなく点数になる」

セレスが氷地図に鏡印を重ねる。

「第一鏡ミラー。鏡=評価の押し付け。対処は——風幕で鏡歌を毛布に、舌凧で鏡口蝶番に点、縦抱えで梁を抱える。

五鈴法・鏡版(名/拍/鏡/口/返鏡)と四鈴法・面版(名/拍/面口/返面)の準備」


あーさんが板を抱え、静かに微笑む。

「講話は短く。

鏡は面。

面は器。

——明日の黒板に、きれいに書こう」


胸骨の前で二拍。

とん・とん。

静けさは扉。


稽古は続く。

開ける。置く。結ぶ。閉じる。そして、返す。


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