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黄昏に鳴らぬ鐘、イシュタムの魂を宿すさえない俺  作者: 和泉發仙


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202/369

紐街、第一紐ロープ——紐は縁、縁は座

荷車から臨時の黒板をおろし、結び台・縁札机・撚り盤がびっしり並ぶ紐街の大路——風の上手に立てた。

あーさん(相沢千鶴)が白墨で三行に今日の二行を添える。


名は輪郭。

輪郭は境界。

境界は——蝶番。

紐は縁。

縁は座。


胸骨の前で二拍。

とん・とん——B0.6。

静けさは扉。


「短く点呼」

「ユウキ」

「よっしーや」

「クリフさん」

「ニーヤですニャ」

「リンク」——「キュイ」

「あーさん、相沢千鶴にござります」

「……カァ(ブラック)」

《蒼角》ロウル/ツグリ、《炎狐》フェイ/チトセ。

後詰「ガロット」「セレス」。外縁「ジギー」「サジ」「カエナ」「ゴブリン若者隊**」。

特記:リリアーナ(台帳・呼び戻し札・受付筆リモート)。バーグ兵士長(捕虜札「非致死捕虜/雑炊済」)は本日も口は元気、節度は見習い。


セレスが氷地図に紐印を落とす。

「紐街。各結び台の紐口が紐歌と直結、『結べ=従え=離るな』で縁札を人と物に縫い付け、関係を結びっぱなしにする。主宰——第一紐ロープ。紐=縁の押し付けで拍を奪う。紐口蝶番と梁を座に戻せば、“命じる紐”は“置く縁(座縁)へ」


よっしーの虚空庫アイテムボックスがぼん。

風幕(防紐ブルーシート)/斜光帆(眩しさ落とし)/フェルト幕(厚)/消音布/撚り戻しタンポ(〈紐〉〈縁〉〈名〉)/結び解き櫛(ほつれ直し)/返紐鍵/返縁鍵/結び留め楔/面取り板(結び台角落とし)/縦抱え帆柱/枡枕/沈黙箱(細・中:縁鴉・結び鬼用)/角布・拭い布/鎖輪。

腹は——稲荷いなり寿司、鶏塩の澄まし、水ようかん、麦茶。

黒板の端にリナが小さく**「おやつは二個まで」。ルフィは三つ目の水ようかんに手を伸ばしかけてそっと戻した(今日もほんとうにえらい**)。


ガロットが槍尻でとん・とん。

「目的は三つ。

一、紐の喉(紐口蝶番・梁・結び枠)を倒さず座らせる(舌凧×2+風幕重ね+縦抱え帆柱+枡枕)。

二、紐歌鎖と縁札鎖の直結をほどほどに解き、“結べば従縁”を“置いて結ぶ(座縁)”へ戻す。

三、人は返す。非致死、ほどほど」


胸骨の前で二拍。

とん・とん。出立。



1)結び門——「縁札なき者、通行不可」の札


通りの中央、結び門。

額の札には**「縁札なき者、通行不可」。

荷鞍を背負った飛脚の娘が列の末尾に立つ。片足に古い裂き紐**。係が縁札束を持って棒読み。

「血縁札・雇用札・主従札の三種から選択。未選択は通行不可」

娘は顎を上げ、しかし視線は揺れる。


娘が一歩前へ。

「……ユラって呼んでください。『未選択』じゃなくて名で」


「風幕一段」

よっしーの防紐シートが門の風上にぱさ、斜光帆が札の照りをやわらげ、フェルト幕が金具の甲高い音を毛布に落とす。

俺は扉縫合(Lv.2)で門頭の紐口蝶番に角点。

カチ。

札孔のぴと音が湯気に変わり、縁札の押しが半拍座った。


リリアーナが五鈴法・紐版をひらく。

一——名(B0.6でちり)、

二——ロウルがとん・とん

三——紐(あーさんが縁図を掲げる)、

四——口(ブラックが紐口を撫でる)、

五——返紐(置きどころは後で)。


ユラの腕に落ちかけた主従札の影がきゅっと外へ抜け、返し棚の高さに逃げができた。



2)第一紐ロープ——紐束の肩、紐舌ひもじた


中央の結び台から紐の人が現れる。

肩は紐束、胸は縁盤、指は結び輪、喉に小さな紐舌。

第一紐ロープ。

声は縁句で話す——先に結が落ち、のちに語が従う。

「名は札番号。縁は結び目。

結んで離すな、縁は常時——切るは不義」


あーさんが板を軽く立て、短く。

紐は縁。

縁は座。

「座は置くもの。縛りっぱなしの鎖じゃありません」


紐舌がぴとと鳴る。

「礼法は縁式。式が法だ」



3)“紐の喉”を座へ——舌凧×縦抱え×枡枕/結び直し台・返紐棚・縁見席


「揚げる」

俺とニーヤの舌凧が紐口と結び枠へふわ。

あーさんの似せ印を浅く、扉縫合で角に点。

ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。

カチ、カチ。

“縛り口”が“置き口”へ、引き絞りの張りが座に落ちる。


ツグリの縦抱え帆柱が梁を抱え、よっしーの枡枕が木鳴きを丸める。

フェイが結び解き櫛で固結びをすっとほどき、チトセが面取り板で台角をさっと落とす。

白墨で白の口を三つ——結び直し台(二拍+名+要件→置く(結ぶ前に合わせる))、返紐棚(縁札・主従札の返却)、縁見席(縁=置きどころの席)。

「あわてず二拍。名→要件→置く」あーさん。



4)“三種の縁札”の外し方——返縁・返紐、名呼び、差し縁札


係がユラへ主従札をぺたり。

よっしーが拭い布で角を一撫で、俺が撚り戻しタンポで**〈紐〉印を〈縁〉へ差し替え。

カチ。

リリアーナが四鈴法・縁版を重ねる。

一——名、二——拍、三——縁口(縁見席に“座”)、四——返縁。

ユラは胸骨の前で二拍**、はっきり言う。

「……ユラ。今日は荷を渡して走るだけ、親の名も主も要らない。道で会う人とは道の縁、宿では宿の縁。主従札は返す」

合唱鍵がB0.6でちり。

主従札は返紐棚へさらりと落ち、差し縁札『道:今だけ/宿:一夜/礼:二拍のあと』が掌にすっと。

——縛りはほどけ、縁=置くが座った。


第一紐ロープの紐舌がぴくと震える。

「返せば忠義が崩れる」

「崩れるのは縛り。縁は置くために」あーさん。



5)紐守と結び鬼、縁鴉——非致死、“ほどほど”


台下から紐守が四人、腰に締め縄。

路地の陰から結び鬼(何でも絡めて団子にする小鬼)がきしきし、空から縁鴉がカァ。

サジとカエナが屋根から滑り、藁布ふわり→痺れ粉を“薄く”。

「効きすぎはナシ」

リンクが梁上から二段、紐守の継手へちょん、ちょん。

俺の扉縫合が紐口の角に点、ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。

カチ。

紐守は倒れず、座って縄籠へ。

結び鬼はチトセの結び解き櫛で余白を与えられ、団子が結び目に変わる。

縁鴉はよっしーの沈黙箱(細)+斜光帆の切れ端でふわと包んで非致死捕縛/麦茶済。

「……温いのは正義」

「節度や」よっしー。

ルフィが籠を覗き、「アタシがやっつけたって言ってよい?」

「非致死でほどほどに、ね」リナ。

ルフィは水ようかん二つで止め、三つ目に手を伸ばしかけてそっと戻した(今日もほんとうにえらい)。



6)“紐歌”——一括縛りの節をほどく


第一紐ロープが紐舌をちりと鳴らし、紐歌を落とす。

「結べ・縫い付けよ・離るな——式が主」

歌に呼応して通りの結び台がずらりと起き、人の腕や荷に縁札影が勝手に絡みつきはじめる。


あーさんが板を立て、短く。

声は橋。

縁は座。

「橋で合図、座に置く。歌は礼のあと」

リリアーナが耳鈴をB0.6でちり。

「五の鈴——返紐」

俺は返紐鍵を掌でとん、紐口の角に点。

ブラックの羽衣が高域を熱へ、ニーヤの薄膜が喉に温。

カチ。

紐歌の押しは湯気にほどけ、二拍+名+要件→合わせ→結ぶ/ほどく→置く→礼の座縁が通りに広がる。

人々は自分の拍で結ぶとほどくを選びはじめた。



7)勇者(選ばれた側)の横顔——“ロープ・ショー”“縁結保証”“統一関係規格”“次は刃”


白天幕の上、勇者レンは自動記録器に笑顔。

「“レン、ロープ・ショーを演出! 一括結びで街ぜんぶを家族に!”」

——紐街は結び合いの街へ。映えは座に溶ける。


仮設窓口の勇者サリアは金の細紐を指に絡め、柔らかに囁く。

「縁結保証契約に入れば、孤立はゼロ。縁札は自動更新、特典も——」

人々が返紐棚に主従札を返し、結び直し台で差し縁札を選び始めると、紐は縁へ戻り、サリアは微笑みながら舌打ち。


見晴台の勇者シュウは規律眼鏡で紐街を見下ろし、図面に赤×。

「非効率。統一関係規格で親疎距離・挨拶回数・同席時間を一本化」

図面の角にあーさんの一筆——秩序は座。

眼鏡は曇ったまま。


砂走りの狭間で勇者トウマは黒い栞を押さえ、短く記す。

「“紐が座にされた……次は刃だ”」

(——第一刃ブレード、来る)



8)紐蔵の奥——“最初の縁(指切り・握手帯・赤い糸)”と古い名の借り


結び台の裏、紐蔵。

段棚に縄、より糸、布帯、そして小さな赤糸の輪と握手帯が並ぶ。

それぞれに人の最初の縁が薄く刻まれている。

第一紐ロープの紐舌が俺を指した。

「君の古い名を借りよう。万縁の基準に」

——胸骨の裏でとん。イシュタム。

(貸さない。返すために置く)

あーさんの指が袖で二拍。とん・とん。


リリアーナが静かに合図。

「五鈴法・紐版、四——口/五——返紐。四鈴法・縁版、四——返縁」

俺は返紐鍵と返縁鍵を握手帯の口の角に点、ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。

カチ、カチ。

封じられていた“結べば離すな”は押しを失い、結べば置く/ほどけば戻るへ戻る。

チトセが結び解き櫛で逃げを作り、ツグリが縦抱えで梁を抱え直す。

ロウルの拍が座に落ち、合唱鍵がB0.6でちり。

紐蔵の硬響が湯気に変わった。


第一紐ロープは紐束の肩を少し下げ、一礼。

「退屈な縁だ。だから安定する」

余韻に薄れた。



9)落としどころ——紐街は“結び合いの街”、結び台は“礼の結び直し台”


セレスの声が低く速い。

「白を三口。市口・学童前・祠。紐街→結び合いの街、中央結び台→礼の結び直し台。返紐鍵/返縁鍵/結び直し台/返紐棚/縁見席を常設。非致死、ほどほど」


ツグリの帆柱が梁を抱え直し、よっしーが枡枕を角に置く。

俺は扉縫合で紐口蝶番の角に点、ブラックの羽衣が最後のキンを熱へ、ニーヤの薄膜が喉を温め切る。

カチ、カチ、カチ。

結び台は倒れず、“二拍→名→要件→合わせ→結ぶ/ほどく→置く→礼”の順で扱う結び直し台として座った。


バーグ兵士長はむくれながら麦茶をすすり、ぼそり。

「ワイの縁結び札、モテ札に換えといてくれ」

「節度や」リナ。

バーグは素直に挨拶札へ書き換え、水ようかんは二つで止めた(ルール順守)。



10)学園式の昼餉——“二拍→合わせ→いただきます”


「ほな、飯や」

よっしーの屋台が稲荷寿司を配り、鶏塩の澄ましをよそい、水ようかんを並べる。

「甘いもんは二個まで! 麦茶はおかわり一回!」

「アタシここ一生いたい」

「出るために食べるのよ」あーさん。

ルフィは三つ目に手を伸ばしかけてそっと戻した(今日も最後までほんとうにえらい)。


リリアーナが受け札を張り替える。

「紐街→結び合いの街。紐歌→座縁。返紐鍵/返縁鍵常設、返口は常時一口」


ジギーは骨騎士に合図し、外縁に針入れを埋める。

「祝い帯も縄も、まず座に仕舞え。返す時は一本、座の長さで」



11)小稽古——“結ぶ→ほどく→渡す→戻す”


白が三口、学園広場へ。

「今日の名」が順に呼ばれ、子ども達は胸骨二拍——とん・とん、

結び、ほどき、渡し、戻す。

ロウルの拍が座り、合唱鍵がB0.6でちり。

チトセが結び解き櫛を見せ、きつい言い方の角を落とす言い直しをゆっくり。

笑いが橋になった。


耳飾りがちり。

『王都学院評議より、紐学/縁学の常設承認。返紐鍵/返縁鍵/結び直し台の規格化通過。

追記:北の刃街に工装省の徴。第一刃ブレード(刃=命令の押し付けではなく道具だが、現状は威嚇と優劣)の気配。刃と鞘に注意、五鈴法・刃版(名/拍/刃/口/返刃)と四鈴法・道具版(名/拍/具口/返具)を準備』ミカエラ。

セレスが氷地図に刃印を落とす。


よっしーがブルーシートを肩に担ぎ直す。

「毛布は正義、白も正義。湯屋は……」

「節度」全員。

「はい」



12)落し結びの小騒動——“ほどほど”の実演


広場の端で、落し結び(誰かの飾り結び)がころり。

「ワイの恋愛成就の結びどこいったんや!」バーグ。

「落し結び札書いて、二拍や」よっしー。

バーグは渋々、胸骨の前でとん・とん。

「バーグ。まず挨拶、次に礼、そのあと縁」

合唱鍵がB0.6でちり。

結びは屋台の幕からぴょいと顔を出す(※実際はゴブリン若者の気働き)。

バーグは礼に澄ましをよそい、水ようかんは二つで止めた(今日もルール順守)。



13)外縁連絡——裁ち場の悪紐と祝言の帯


外縁でジギーが骨騎士の肩をとん。

「裁ち場の悪紐、雇用札を袖に縫うやつ——座縁へ直し済み。

 ついでに祝言の帯は結び直し台でふっくら結べるよう教えておいた。ほな、次は刃の街や」


ユラが戻って来て、差し縁札を二拍で掲げる。

「道の縁、助かりました」

胸骨の内側が、静かにとんと鳴った。



14)終礼——黒板の二行


夕刻の終礼。

あーさんが黒板に三行+二十行を書き連ね、今日の二行を添えた。

名は輪郭。

輪郭は境界。

境界は——蝶番。

道筋は地図。

重みは枡。

車輪は縁。

橋は手。

流れは拍。

舟は器。

港は掌。

門は蝶番。

鍵は歌。

歌は合図。

広場は皿。

交差は合拍。

刃は道具。

鞘は布。

重さは値。

秤は器。

街は器。

恐れは影。

塔は柱。

声は橋。

鏡は面。

面は器。

箱は蔵。

蔵は座。

蓋は布。

印は紐。

紐は縁。

契は文。

文は座。

そして今日の二行。

紐は縁。

縁は座。


子どもたちがB0.6でそれぞれの名を呼び、道具(返紐鍵・返縁鍵・結び解き櫛・面取り板・角布・拭い布・沈黙箱・風幕・枡枕)を撫でる。

黒板の「今日の名」に新しい丸が増え、リナが丁寧に色を変えて丸を付けた。

ガンツは「縁」の字を指でなぞり、木枡に麦茶を注ぎながら笑う。

ルフィは水ようかんを二つで止め、三つ目をそっと戻した(今日も最後までほんとにえらい)。



15)屋上の夜——次の扉、“刃街、第一刃ブレード——刃は道具、道具は座”


星が近い。刃街の鍛台で刃歌が回り、脅し札が人と仕事に切先を向け続ける気配。

クリフさんが弓弦をとんと鳴らす。

「刃に押されると、矢名は狙いじゃなく威嚇になる」

セレスが氷地図に刃印を重ねる。

「第一刃ブレード。刃=威圧の押し付け。対処は——風幕で刃歌を毛布に、舌凧で刃口蝶番に点、縦抱えで梁を抱える。

五鈴法・刃版(名/拍/刃/口/返刃)と四鈴法・道具版(名/拍/具口/返具)の準備」


あーさんが板を抱え、静かに微笑む。

「講話は短く。

刃は道具。

道具は座。

——明日の黒板に、きれいに書こう」


胸骨の前で二拍。

とん・とん。

静けさは扉。


稽古は続く。

開ける。置く。結ぶ。閉じる。そして、返す。


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