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黄昏に鳴らぬ鐘、イシュタムの魂を宿すさえない俺  作者: 和泉發仙


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201/360

契街、第一契コントラクト——契は文、文は座

荷車から臨時の黒板をおろし、契台と捺台、じ棚がびっしり並ぶ契街の大路——風の上手に立てた。

あーさん(相沢千鶴)が白墨で三行に今日の二行を添える。


名は輪郭。

輪郭は境界。

境界は——蝶番。

契は文。

文は座。


胸骨の前で二拍。

とん・とん——B0.6。

静けさは扉。


「短く点呼」

「ユウキ」

「よっしーや」

「クリフさん」

「ニーヤですニャ」

「リンク」——「キュイ」

「あーさん、相沢千鶴にござります」

「……カァ(ブラック)」

《蒼角》ロウル/ツグリ、《炎狐》フェイ/チトセ。

後詰「ガロット」「セレス」。外縁「ジギー」「サジ」「カエナ」「ゴブリン若者隊**」。

特記:リリアーナ(台帳・呼び戻し札・受付筆リモート)。バーグ兵士長(捕虜札「非致死捕虜/雑炊済」)は相変わらず調子は良い、節度は訓練中。


セレスが氷地図に契印を落とす。

「契街。各契台の契口が契歌と直結、『署せ=押せ=縛られよ』で押印札を人と仕事に縫い止める。主宰——第一契コントラクト。契=文の押し付けで拍を奪う。契口蝶番と綴じ梁を座に戻せば、“命じる契”は“置く文(座文)へ」


よっしーの虚空庫アイテムボックスがぼん。

風幕(防文ブルーシート)/斜光帆(朱の照り返し落とし)/フェルト幕(厚)/消音布/読み返しタンポ(〈契〉〈文〉〈名〉)/返契鍵/返文鍵/割印止め楔/朱砂ふき/下敷き板/綴じ戻し櫛/縦抱え帆柱/枡枕/沈黙箱(細・中:条妖・印狐用)/角布・拭い布/鎖輪。

腹は——たまごサンド、菜の花のスープ、カステラ、ほうじ茶。

黒板の端にリナが小さく**「おやつは二個まで」。ルフィは三つ目のカステラに手を伸ばしかけてそっと戻した(今日もほんとうにえらい**)。


ガロットが槍尻でとん・とん。

「目的は三つ。

一、契の喉(契口蝶番・綴じ梁・契枠)を倒さず座らせる(舌凧×2+風幕重ね+縦抱え帆柱+枡枕)。

二、契歌鎖と押印札鎖の直結をほどほどに解き、“署せば従属”を“置いて結ぶ(座文)”へ戻す。

三、人は返す。非致死、ほどほど」


胸骨の前で二拍。

とん・とん。出立。



1)契約門——「無印・無署、通行不可」の札


通りの中央、契約門。

額の札には**「無印・無署、通行不可」。

荷車に羊皮紙の束を積んだ紙匠ししょう夫婦が列に入り、係が雛形書式を掲げる。

「定型第八号:一方的責任引受。空欄は不可、署名捺印をここで直ちに**」

隣で読み書きの苦手な若い職人が立ちすくむ。


その職人が一歩前へ。

「……アツシって呼んでください。『無署』じゃなくて名で」


「風幕一段」

よっしーの防文シートが門の風上にぱさ、斜光帆が朱のギラをやわらげ、フェルト幕が金具の甲高い音を毛布に落とす。

俺は扉縫合(Lv.2)で門頭の契口蝶番に角点。

カチ。

綴じ孔のぴと音が湯気に変わり、押し文の強制が半拍座った。


リリアーナが五鈴法・契版をひらく。

一——名(B0.6でちり)、

二——ロウルがとん・とん

三——契(あーさんが文図を掲げる)、

四——口(ブラックが契口を撫でる)、

五——返契(置きどころは後で)。


アツシの指先に落ちかけた責任引受札の影がきゅっと外へ抜け、返し棚の高さに逃げができた。



2)第一契コントラクト——契束の肩、契舌けいじた


中央の契台から文の人が現れる。

肩は契束、胸は条文盤、指は羽根筆、喉に小さな契舌。

第一契コントラクト。

声は条句で話す——先に但し書きが落ち、のちに語が従う。

「名は署名欄。文が主。

押して縫い、違反は罰——条は秩序」


あーさんが板を軽く立て、短く。

契は文。

文は座。

「座は置くもの。一方的に縫い付けるためではありません」


契舌がぴとと鳴る。

「礼法は成文式。条が法だ」



3)“契の喉”を座へ——舌凧×縦抱え×枡枕/読み合わせ台・返契棚・文見席


「揚げる」

俺とニーヤの舌凧が契口と契枠へふわ。

あーさんの似せ印を浅く、扉縫合で角に点。

ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。

カチ、カチ。

“縫い止め口”が“置き口”へ、押印の張りが座に落ちる。


ツグリの縦抱え帆柱が綴じ梁を抱え、よっしーの枡枕が紙鳴きを丸める。

フェイが割印止め楔で過度な割印をすっと止め、チトセが綴じ戻し櫛と下敷き板で角をさっと落とす。

白墨で白の口を三つ——読み合わせ台(二拍+名+要件→置く(押す前に読む))、返契棚(押印札・雛形の返却)、文見席(文=置きどころの席)。

「あわてず二拍。名→要件→置く」あーさん。



4)“定型第八号”の外し方——返文・返契、名呼び、覚え札


係がアツシへ責任引受札をぺたり。

よっしーが朱砂ふきで角を一撫で、俺が読み返しタンポで**〈契〉印を〈文〉へ差し替え。

カチ。

リリアーナが四鈴法・文版を重ねる。

一——名、二——拍、三——文口(文見席に“座”)、四——返文。

アツシは胸骨の前で二拍**、はっきり言う。

「……アツシ。今日は試しの仕事、失敗は直しで学ぶ。全部の罰は過ぎる。覚えとして条の要点三つだけ書き置き。定型第八号は返す」

合唱鍵がB0.6でちり。

責任札は返契棚へさらりと落ち、覚え札『要点三:納期/手直し回数/礼:二拍のあと』が掌にすっと。

——縫い付けはほどけ、文=座が置かれた。


第一契コントラクトの契舌がぴくと震える。

「返せば拘束力が崩れる」

「崩れるのは一方的。契は置くために」あーさん。



5)契守と条妖、印狐——非致死、“ほどほど”


台下から契守が四人、腰に印箱。

路地の陰から条妖(何でも細字にして罠を仕込む小妖)がかさかさ、屋根から印狐がコン。

サジとカエナが屋根から滑り、藁布ふわり→痺れ粉を“薄く”。

「効きすぎはナシ」

リンクが梁上から二段、契守の継手へちょん、ちょん。

俺の扉縫合が契口の角に点、ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。

カチ。

契守は倒れず、座って縄籠へ。

条妖はチトセの綴じ戻し櫛で余白を与えられ、罠字が注釈に変わる。

印狐はよっしーの沈黙箱(細)+斜光帆の切れ端でふわと包んで非致死捕縛/ほうじ茶済。

「……温いのは正義」

「節度や」よっしー。

ルフィが籠を覗き、「アタシがやっつけたって言ってよい?」

「非致死でほどほどに、ね」リナ。

ルフィはカステラ二つで止め、三つ目に手を伸ばしかけてそっと戻した(今日もほんとうにえらい)。



6)“契歌”——一括押印の節をほどく


第一契コントラクトが契舌をちりと鳴らし、契歌を落とす。

「署せ・押せ・縛られよ——条が主」

歌に呼応して通りの契台がずらりと起き、人の手首や品に押印影が勝手に押し付こうとする。


あーさんが板を立て、短く。

声は橋。

文は座。

「橋で合図、座に置く。歌は礼のあと」

リリアーナが耳鈴をB0.6でちり。

「五の鈴——返契」

俺は返契鍵を掌でとん、契口の角に点。

ブラックの羽衣が高域を熱へ、ニーヤの薄膜が喉に温。

カチ。

契歌の押しは湯気にほどけ、二拍+名+要件→読み合わせ→置く→礼の座文が通りに広がる。

人々は自分の拍で書くと押すを選びはじめた。



7)勇者(選ばれた側)の横顔——“コントラクト・ショー”“完全保証”“統一契約規格”“次は印”


白天幕の上、勇者レンは自動記録器に笑顔。

「“レン、コントラクト・ショーを演出! ワンクリックで街まるごと合意!”」

——契街は読み合わせの街へ。映えは座に溶ける。


仮設窓口の勇者サリアは金の細紐を指に絡め、柔らかに囁く。

「完全保証契約に入れば、あらゆる事故は当社負担。条項は自動更新、特典も——」

人々が返契棚に押印札を返し、読み合わせ台で覚え札を選び始めると、紐は縁へ戻り、サリアは微笑みながら舌打ち。


見晴台の勇者シュウは規律眼鏡で契街を見下ろし、図面に赤×。

「非効率。統一契約規格で条数・字間・署名位置を一本化」

図面の角にあーさんの一筆——秩序は座。

眼鏡は曇ったまま。


砂走りの狭間で勇者トウマは黒い栞を押さえ、短く記す。

「“契が座にされた……次は印だ”」

(——第一印スタンプ、来る)



8)契蔵の奥——“最初の文(口約束・印板・札)”と古い名の借り


契台の裏、契蔵。

段棚に口約束の木札、古い印板、小さな朱の盤が並ぶ。

それぞれに人の最初の約束が薄く刻まれている。

第一契コントラクトの契舌が俺を指した。

「君の古い名を借りよう。万契の基準に」

——胸骨の裏でとん。イシュタム。

(貸さない。返すために置く)

あーさんの指が袖で二拍。とん・とん。


リリアーナが静かに合図。

「五鈴法・契版、四——口/五——返契。四鈴法・文版、四——返文」

俺は返契鍵と返文鍵を印板の口の角に点、ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。

カチ、カチ。

封じられていた“押せば従属”は押しを失い、置けば読み合わせ/押す前に名へ戻る。

チトセが綴じ戻し櫛で逃げを作り、ツグリが縦抱えで梁を抱え直す。

ロウルの拍が座に落ち、合唱鍵がB0.6でちり。

契蔵の硬響が湯気に変わった。


第一契コントラクトは契束の肩を少し下げ、一礼。

「退屈な文だ。だから続けられる」

余韻に薄れた。



9)落としどころ——契街は“読み合わせの街”、契台は“礼の読み合わせ台”


セレスの声が低く速い。

「白を三口。市口・学童前・祠。契街→読み合わせの街、中央契台→礼の読み合わせ台。返契鍵/返文鍵/読み合わせ台/返契棚/文見席を常設。非致死、ほどほど」


ツグリの帆柱が梁を抱え直し、よっしーが枡枕を角に置く。

俺は扉縫合で契口蝶番の角に点、ブラックの羽衣が最後のキンを熱へ、ニーヤの薄膜が喉を温め切る。

カチ、カチ、カチ。

契台は倒れず、“二拍→名→要件→読み合わせ→置く→礼”の順で扱う読み合わせ台として座った。


バーグ兵士長はむくれながらほうじ茶をすすり、ぼそり。

「ワイの恋愛契約書、モテ条項足してええか?」

「節度や」リナ。

バーグは素直に挨拶条項へ書き換え、カステラは二つで止めた(ルール順守)。



10)学園式の昼餉——“二拍→読み合わせ→いただきます”


「ほな、飯や」

よっしーの屋台がたまごサンドを配り、菜の花のスープをよそい、カステラを並べる。

「甘いもんは二個まで! ほうじ茶はおかわり一回!」

「アタシここ一生いたい」

「出るために食べるのよ」あーさん。

ルフィは三つ目に手を伸ばしかけてそっと戻した(今日も最後までほんとうにえらい)。


リリアーナが受け札を張り替える。

「契街→読み合わせの街。契歌→座文。返契鍵/返文鍵常設、返口は常時一口」


ジギーは骨騎士に合図し、外縁に針入れを埋める。

「貸本屋の延滞条、行商の手形、工房の手直し条、まず座に仕舞え。返す時は一本、座の長さで」



11)小稽古——“言う→書く→読む→押す→戻す”


白が三口、学園広場へ。

「今日の名」が順に呼ばれ、子ども達は胸骨二拍——とん・とん、

言って、書き、読み、押し、戻す。

ロウルの拍が座り、合唱鍵がB0.6でちり。

チトセが下敷き板を見せ、刺さる言い回しの角を落とす言い直しをゆっくり。

笑いが橋になった。


耳飾りがちり。

『王都学院評議より、契学/文学の常設承認。返契鍵/返文鍵/読み合わせ台の規格化通過。

追記:北の印街に印務省の徴。第一印スタンプ(印=合図の押し付け)の気配。印と合図に注意、五鈴法・印版(名/拍/印/口/返印)と四鈴法・合図版(名/拍/合口/返合)を準備』ミカエラ。

セレスが氷地図に印印を落とす。


よっしーがブルーシートを肩に担ぎ直す。

「毛布は正義、白も正義。湯屋は……」

「節度」全員。

「はい」



12)落し判の小騒動——“ほどほど”の実演


広場の端で、落し判(誰かの私印)がころり。

「ワイのモテ印どこいったんや!」バーグ。

「落し判札書いて、二拍や」よっしー。

バーグは渋々、胸骨の前でとん・とん。

「バーグ。まず名前、次に挨拶、押すのは最後」

合唱鍵がB0.6でちり。

印は屋台の幕からぴょいと顔を出す(※実際はゴブリン若者の気働き)。

バーグは礼にスープをよそい、カステラは二つで止めた(今日もルール順守)。



13)外縁連絡——貸本屋の延滞条・行商の手形・工房の手直し条


外縁でジギーが骨騎士の肩をとん。

「貸本屋は延滞条を覚え札に直し、行商は手形を読み合わせ台で扱うように教えてきた。工房は手直し条を回数明記の小札へ。

 ほな、次は印や」


紙匠の夫婦が覚え札を二拍で掲げる。

「字が苦手でも、読める形なら守れる」

胸骨の内側が、静かにとんと鳴った。



14)終礼——黒板の二行


夕刻の終礼。

あーさんが黒板に三行+二十行を書き連ね、今日の二行を添えた。

名は輪郭。

輪郭は境界。

境界は——蝶番。

道筋は地図。

重みは枡。

車輪は縁。

橋は手。

流れは拍。

舟は器。

港は掌。

門は蝶番。

鍵は歌。

歌は合図。

広場は皿。

交差は合拍。

刃は道具。

鞘は布。

重さは値。

秤は器。

街は器。

恐れは影。

塔は柱。

声は橋。

鏡は面。

面は器。

箱は蔵。

蔵は座。

蓋は布。

印は紐。

紐は縁。

契は文。

文は座。

そして今日の二行。

契は文。

文は座。


子どもたちがB0.6でそれぞれの名を呼び、道具(返契鍵・返文鍵・割印止め楔・綴じ戻し櫛・角布・拭い布・沈黙箱・風幕・枡枕)を撫でる。

黒板の「今日の名」に新しい丸が増え、リナが丁寧に色を変えて丸を付けた。

ガンツは「文」の字を指でなぞり、木枡にほうじ茶を注ぎながら笑う。

ルフィはカステラを二つで止め、三つ目をそっと戻した(今日も最後までほんとにえらい)。



15)屋上の夜——次の扉、“印街、第一印スタンプ——印は合図、合図は座”


星が近い。印街の印台で印歌が回り、号令札が人と場に止まった合図を縫い付ける気配。

クリフさんが弓弦をとんと鳴らす。

「印に押されると、矢名は飛ぶより止まる」

セレスが氷地図に印印を重ねる。

「第一印スタンプ。印=合図の押し付け。対処は——風幕で印歌を毛布に、舌凧で印口蝶番に点、縦抱えで梁を抱える。

五鈴法・印版(名/拍/印/口/返印)と四鈴法・合図版(名/拍/合口/返合)の準備」


あーさんが板を抱え、静かに微笑む。

「講話は短く。

印は合図。

合図は座。

——明日の黒板に、きれいに書こう」


胸骨の前で二拍。

とん・とん。

静けさは扉。


稽古は続く。

開ける。置く。結ぶ。閉じる。そして、返す。


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