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黄昏に鳴らぬ鐘、イシュタムの魂を宿すさえない俺  作者: 和泉發仙


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200/360

鞘街、第一鞘シース——鞘は布、布は幕

荷車から臨時の黒板をおろし、鞘台と包み台、幕見棚がびっしり並ぶ鞘街の大路——風の上手に立てた。

あーさん(相沢千鶴)が白墨で三行に今日の二行を添える。


名は輪郭。

輪郭は境界。

境界は——蝶番。

鞘は布。

布は幕。


胸骨の前で二拍。

とん・とん——B0.6。

静けさは扉。


「短く点呼」

「ユウキ」

「よっしーや」

「クリフさん」

「ニーヤですニャ」

「リンク」——「キュイ」

「あーさん、相沢千鶴にござります」

「……カァ(ブラック)」

《蒼角》ロウル/ツグリ、《炎狐》フェイ/チトセ。

後詰「ガロット」「セレス」。外縁「ジギー」「サジ」「カエナ」「ゴブリン若者隊**」。

特記:リリアーナ(台帳・呼び戻し札・受付筆リモート)。バーグ兵士長(捕虜札「非致死捕虜/雑炊済」)は本日も口は元気、節度は見習い。


セレスが氷地図に鞘印を落とす。

「鞘街。各鞘台の鞘口が鞘歌と直結、『包め=隠せ=通すな』で包み札を人と物に縫い付け、覆いを常態にする。主宰——第一鞘シース。鞘=包むの押し付けで拍を奪う。鞘口蝶番と梁を座に戻せば、“命じる鞘”は“置く布(座幕)へ」


よっしーの虚空庫アイテムボックスがぼん。

風幕(防包ブルーシート)/斜光帆(布の照り落とし)/フェルト幕(厚)/消音布/包み返しタンポ(〈鞘〉〈布〉〈名〉)/返鞘鍵/返布鍵/結び留め楔/幕棒(縦抱え)/枡枕/結び解き櫛(ほつれ直し)/沈黙箱(細・中:布鴉・覆い鬼用)/角布・拭い布/鎖輪。

腹は——鮭むすび、白味噌の豆腐汁、わらび餅、そば茶。

黒板の端にリナが小さく**「おやつは二個まで」。ルフィは三つ目のわらび餅に手を伸ばしかけてそっと戻した(今日もほんとうにえらい**)。


ガロットが槍尻でとん・とん。

「目的は三つ。

一、鞘の喉(鞘口蝶番・梁・鞘枠)を倒さず座らせる(舌凧×2+風幕重ね+幕棒+枡枕)。

二、鞘歌鎖と包み札鎖の直結をほどほどに解き、“包めば隠せ”を“置いて掛ける(座幕)”へ戻す。

三、人は返す。非致死、ほどほど」


胸骨の前で二拍。

とん・とん。出立。



1)覆面門——「顔と名、布で覆え」の札


通りの中央、覆面門。

額の札には**「顔と名、布で覆え」。

座頭琵琶を背負った旅の歌い手が列の末尾で立ち止まる。そばで手話を使う母子**。係が包み札束を掲げて棒読み。

「顔布・名札封・声幕の三点を常時装着。未着者は通行不可」


母が一歩前へ。

「……ミオって呼んでください。『未着者』じゃなくて名で」


「風幕一段」

よっしーの防包シートが門の風上にぱさ、斜光帆が札の照りをやわらげ、フェルト幕が金具の甲高い音を毛布に落とす。

俺は扉縫合(Lv.2)で門頭の鞘口蝶番に角点。

カチ。

札孔のぴと音が湯気に変わり、包み押しが半拍座った。


リリアーナが五鈴法・鞘版をひらく。

一——名(B0.6でちり)、

二——ロウルがとん・とん

三——鞘(あーさんが布図を掲げる)、

四——口(ブラックが鞘口を撫でる)、

五——返鞘(置きどころは後で)。


ミオの頬へ落ちかけた声幕札の影がきゅっと外へ抜け、返し棚の高さに逃げができた。



2)第一鞘シース——鞘束の肩、鞘舌さやじた


中央の鞘台から布の人が現れる。

肩は鞘束、胸は包み盤、指は紐車、喉に小さな鞘舌。

第一鞘シース。

声は遮断句で話す——先に覆が落ち、のちに語が従う。

「名は封。布が主。

包んで隠し、静めよ——沈黙は秩序」


あーさんが板を軽く立て、短く。

鞘は布。

布は幕。

「幕は置くもの。ひとの声や名を消す蓋ではありません」


鞘舌がぴとと鳴る。

「礼法は覆面式。覆が法だ」



3)“鞘の喉”を座へ——舌凧×幕棒×枡枕/包み直し台・返鞘棚・幕見席


「揚げる」

俺とニーヤの舌凧が鞘口と鞘枠へふわ。

あーさんの似せ印を浅く、扉縫合で角に点。

ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。

カチ、カチ。

“塞ぎ口”が“置き口”へ、閉じ抜きの張りが座に落ちる。


ツグリの幕棒が梁を抱え、よっしーの枡枕が布鳴きを丸める。

フェイが結び解き櫛で縫い止めをすっと緩め、チトセが面取り板で台角をさっと落とす。

白墨で白の口を三つ——包み直し台(二拍+名+要件→置く(掛ける前に合わせる))、返鞘棚(包み札・声幕札の返却)、幕見席(幕=置きどころの席)。

「あわてず二拍。名→要件→置く」あーさん。



4)“常時覆い義務”の外し方——返布・返鞘、名呼び、見守り幕札


係が旅の歌い手へ声幕札をぺたり。

よっしーが拭い布で角を一撫で、俺が包み返しタンポで**〈鞘〉印を〈布〉へ差し替え。

カチ。

リリアーナが四鈴法・布版を重ねる。

一——名、二——拍、三——布口(幕見席に“座”)、四——返布。

ミオは胸骨の前で二拍**、はっきり言う。

「……ミオ。子の手話は声だ。道では顔を出し、宿では幕を半に。常時覆いは返す」

合唱鍵がB0.6でちり。

声幕札は返鞘棚へさらりと落ち、見守り幕札『道:開/宿:半/礼:二拍のあと』が掌にすっと。

——沈黙の押し付けはほどけ、幕=開閉できる置きものが座った。


第一鞘シースの鞘舌がぴくと震える。

「返せば秩序が崩れる」

「崩れるのは声の塞ぎ。布は幕として置くために」あーさん。



5)鞘守と覆い鬼、布鴉——非致死、“ほどほど”


台下から鞘守が四人、腰に遮断帯。

路地の陰から覆い鬼(何でも包んで見えなくする小鬼)がもそもそ、空から布鴉がカァ。

サジとカエナが屋根から滑り、藁布ふわり→痺れ粉を“薄く”。

「効きすぎはナシ」

リンクが梁上から二段、鞘守の継手へちょん、ちょん。

俺の扉縫合が鞘口の角に点、ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。

カチ。

鞘守は倒れず、座って縄籠へ。

覆い鬼はチトセの結び解き櫛で余白を与えられ、覆いが幕に変わる。

布鴉はよっしーの沈黙箱(細)+斜光帆切れ端でふわと包んで非致死捕縛/そば茶済。

「……温いのは正義」

「節度や」よっしー。

ルフィが籠を覗き、「アタシがやっつけたって言ってよい?」

「非致死でほどほどに、ね」リナ。

ルフィはわらび餅二つで止め、三つ目に手を伸ばしかけてそっと戻した(今日もほんとうにえらい)。



6)“鞘歌”——一括遮断の節をほどく


第一鞘シースが鞘舌をちりと鳴らし、鞘歌を落とす。

「包め・隠せ・通すな——覆が主」

歌に呼応して通りの鞘台がずらりと起き、人の顔や看板に包み影が勝手にかぶさろうとする。


あーさんが板を立て、短く。

声は橋。

布は幕。

「橋で合図、幕に置く。歌は礼のあと」

リリアーナが耳鈴をB0.6でちり。

「五の鈴——返鞘」

俺は返鞘鍵を掌でとん、鞘口の角に点。

ブラックの羽衣が高域を熱へ、ニーヤの薄膜が喉に温。

カチ。

鞘歌の押しは湯気にほどけ、二拍+名+要件→合わせ→掛ける/開ける→置く→礼の座幕が通りに広がる。

人々は自分の拍で開けると閉じるを選びはじめた。



7)勇者(選ばれた側)の横顔——“シース・ショー”“秘匿保証”“統一覆面規格”“次は契”


白天幕の上、勇者レンは自動記録器に笑顔。

「“レン、シース・ショーを演出! 一括覆面で街ぜんぶ静寂!”」

——鞘街は幕の街へ。映えは座に溶ける。


仮設窓口の勇者サリアは金の細紐を指に絡め、柔らかに囁く。

「秘匿保証契約に入れば、漏洩はゼロ。包み札は自動更新、特典も——」

人々が返鞘棚に声幕札を返し、包み直し台で見守り幕札を選び始めると、紐は縁へ戻り、サリアは微笑みながら舌打ち。


見晴台の勇者シュウは規律眼鏡で鞘街を見下ろし、図面に赤×。

「非効率。統一覆面規格で覆い面積・着脱時間・視野角を一本化」

図面の角にあーさんの一筆——秩序は座。

眼鏡は曇ったまま。


砂走りの狭間で勇者トウマは黒い栞を押さえ、短く記す。

「“鞘が座にされた……次は契だ”」

(——第一契コントラクト、来る)



8)鞘蔵の奥——“最初の布(産着・風呂敷・暖簾・手拭)”と古い名の借り


鞘台の裏、鞘蔵。

段棚に産着、風呂敷、暖簾、そして小さな手拭が並ぶ。

それぞれに人の最初の包む/遮るが薄く刻まれている。

第一鞘シースの鞘舌が俺を指した。

「君の古い名を借りよう。万布の基準に」

——胸骨の裏でとん。イシュタム。

(貸さない。返すために置く)

あーさんの指が袖で二拍。とん・とん。


リリアーナが静かに合図。

「五鈴法・鞘版、四——口/五——返鞘。四鈴法・布版、四——返布」

俺は返鞘鍵と返布鍵を暖簾の口の角に点、ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。

カチ、カチ。

封じられていた“包めば消す”は押しを失い、掛ければ合図/開ければ礼へ戻る。

チトセが結び解き櫛で逃げを作り、ツグリが幕棒で梁を抱え直す。

ロウルの拍が座に落ち、合唱鍵がB0.6でちり。

鞘蔵の硬響が湯気に変わった。


第一鞘シースは鞘束の肩を少し下げ、一礼。

「退屈な布だ。だから落ち着く」

余韻に薄れた。



9)落としどころ——鞘街は“幕の街”、鞘台は“礼の包み直し台”


セレスの声が低く速い。

「白を三口。市口・学童前・祠。鞘街→幕の街、中央鞘台→礼の包み直し台。返鞘鍵/返布鍵/包み直し台/返鞘棚/幕見席を常設。非致死、ほどほど」


ツグリの幕棒が梁を抱え直し、よっしーが枡枕を角に置く。

俺は扉縫合で鞘口蝶番の角に点、ブラックの羽衣が最後のキンを熱へ、ニーヤの薄膜が喉を温め切る。

カチ、カチ、カチ。

鞘台は倒れず、“二拍→名→要件→合わせ→掛ける/開ける→置く→礼”の順で扱う包み直し台として座った。


バーグ兵士長はむくれながらそば茶をすすり、ぼそり。

「ワイの隠れ蓑、常時着といてええか?」

「節度や」リナ。

バーグは素直に挨拶のあと半幕に直し、わらび餅は二つで止めた(ルール順守)。



10)学園式の昼餉——“二拍→合わせ→いただきます”


「ほな、飯や」

よっしーの屋台が鮭むすびを配り、白味噌の豆腐汁をよそい、わらび餅を並べる。

「甘いもんは二個まで! そば茶はおかわり一回!」

「アタシここ一生いたい」

「出るために食べるのよ」あーさん。

ルフィは三つ目に手を伸ばしかけてそっと戻した(今日も最後までほんとうにえらい)。


リリアーナが受け札を張り替える。

「鞘街→幕の街。鞘歌→座幕。返鞘鍵/返布鍵常設、返口は常時一口」


ジギーは骨騎士に合図し、外縁に針入れを埋める。

「産院の仕切り、法廷の証言席、湯屋の暖簾、まず座に仕舞え。返す時は一本、座の長さで」



11)小稽古——“声かけ→二拍→そっと掛ける→戻す”


白が三口、学園広場へ。

「今日の名」が順に呼ばれ、子ども達は胸骨二拍——とん・とん、

声かけ(「今よろしいですか」)→二拍→そっと掛け→戻す。

ロウルの拍が座り、合唱鍵がB0.6でちり。

チトセが結び解き櫛を見せ、刺さる言い方の角を落とす言い直しをゆっくり。

笑いが橋になった。


耳飾りがちり。

『王都学院評議より、鞘学/布学の常設承認。返鞘鍵/返布鍵/包み直し台の規格化通過。

追記:北の契街に文契省の徴。第一契コントラクト(契=文の押し付け)の気配。契と文に注意、五鈴法・契版(名/拍/契/口/返契)と四鈴法・文版(名/拍/文口/返文)を準備』ミカエラ。

セレスが氷地図に契印を落とす。


よっしーがブルーシートを肩に担ぎ直す。

「毛布は正義、白も正義。湯屋は……」

「節度」全員。

「はい」



12)落し布の小騒動——“ほどほど”の実演


広場の端で、落し布(誰かの顔覆い)がころり。

「ワイのモテ布どこいったんや!」バーグ。

「落し布札書いて、二拍や」よっしー。

バーグは渋々、胸骨の前でとん・とん。

「バーグ。まず挨拶、次に目を合わせ、幕は半」

合唱鍵がB0.6でちり。

布は屋台の幕からぴょいと顔を出す(※実際はゴブリン若者の気働き)。

バーグは礼に豆腐汁をよそい、わらび餅は二つで止めた(今日もルール順守)。



13)外縁連絡——産院の幕・証言席の半幕・読み書き処の衝立


外縁でジギーが骨騎士の肩をとん。

「産院には音の幕、証言席には半幕、読み書き処には衝立。塞ぎやなく置きで教えた。

 ほな、次は契や」


ミオが戻って来て、見守り幕札を二拍で掲げる。

「子の手が見えると、声が届く」

胸骨の内側が、静かにとんと鳴った。



14)終礼——黒板の二行


夕刻の終礼。

あーさんが黒板に三行+二十行を書き連ね、今日の二行を添えた。

名は輪郭。

輪郭は境界。

境界は——蝶番。

道筋は地図。

重みは枡。

車輪は縁。

橋は手。

流れは拍。

舟は器。

港は掌。

門は蝶番。

鍵は歌。

歌は合図。

広場は皿。

交差は合拍。

刃は道具。

鞘は布。

重さは値。

秤は器。

街は器。

恐れは影。

塔は柱。

声は橋。

鏡は面。

面は器。

箱は蔵。

蔵は座。

蓋は布。

印は紐。

紐は縁。

契は文。

文は座。

そして今日の二行。

鞘は布。

布は幕。


子どもたちがB0.6でそれぞれの名を呼び、道具(返鞘鍵・返布鍵・結び解き櫛・幕棒・角布・拭い布・沈黙箱・風幕・枡枕)を撫でる。

黒板の「今日の名」に新しい丸が増え、リナが丁寧に色を変えて丸を付けた。

ガンツは「幕」の字を指でなぞり、木枡にそば茶を注ぎながら笑う。

ルフィはわらび餅を二つで止め、三つ目をそっと戻した(今日も最後までほんとにえらい)。



15)屋上の夜——次の扉、“契街、第一契コントラクト——契は文、文は座”


星が近い。契街の契台で契歌が回り、押印札が人と仕事に一方的な文言を縫い付ける気配。

クリフさんが弓弦をとんと鳴らす。

「契に押されると、矢名は狙いでなく条になる」

セレスが氷地図に契印を重ねる。

「第一契コントラクト。契=文の押し付け。対処は——風幕で契歌を毛布に、舌凧で契口蝶番に点、縦抱えで梁を抱える。

五鈴法・契版(名/拍/契/口/返契)と四鈴法・文版(名/拍/文口/返文)の準備」


あーさんが板を抱え、静かに微笑む。

「講話は短く。

契は文。

文は座。

——明日の黒板に、きれいに書こう」


胸骨の前で二拍。

とん・とん。

静けさは扉。


稽古は続く。

開ける。置く。結ぶ。閉じる。そして、返す。


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