表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黄昏に鳴らぬ鐘、イシュタムの魂を宿すさえない俺  作者: 和泉發仙


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

193/404

秤街、第一秤バランス——秤は器、重さは値

荷車から臨時の黒板をおろし、台秤が並ぶ秤街の大路——風の上手に立てる。

あーさん(相沢千鶴)が白墨で三行に今日の二行を添えた。


名は輪郭。

輪郭は境界。

境界は——蝶番。

秤は器。

重さは値。


胸骨の前で二拍。

とん・とん——B0.6。

静けさは扉。


「短く点呼」

「ユウキ」

「よっしーや」

「クリフさん」

「ニーヤですニャ」

「リンク」——「キュイ」

「あーさん、相沢千鶴にござります」

「……カァ(ブラック)」

《蒼角》ロウル/ツグリ、《炎狐》フェイ/チトセ。

後詰「ガロット」「セレス」。外縁「ジギー」「サジ」「カエナ」「ゴブリン若者隊**」。

特記:リリアーナ(台帳・呼び戻し札・受付筆リモート)。バーグ兵士長(捕虜札「非致死捕虜/雑炊済」)は今日も口は元気、膝は素直。


セレスが氷地図に秤印を落とす。

「秤街。各台秤の秤口が笛値と直結、『乗れ=量れ=値札貼れ』で人と品の値を上書き。主宰——第一秤バランス。重量/価の押し付けで拍を奪う。秤口蝶番と量り梁を座に戻せば、“命じる秤”は“量る器(座秤)へ」


よっしーの虚空庫アイテムボックスがぼん。

風幕(笛値吸いブルーシート)/遮音帆/フェルト幕(厚)/消音布/標石ひょういし(一合・一斤)/砂袋(微調整用)/返秤鍵/返値鍵/押し戻しタンポ(〈秤〉〈値〉〈名〉)/面取り板/縦抱え帆柱/枡枕/沈黙箱(細・中)/角布・拭い布/鎖輪/楔。

腹は——いも餅の胡麻だれ、焼き麦の薄スープ、落花生飴、番麦茶。

黒板の端にリナが小さく**「おやつは二個まで」。ルフィは三つ目の飴に手を伸ばしかけてそっと戻した(今日もほんとうにえらい**)。


ガロットが槍尻でとん・とん。

「目的は三つ。

一、秤の喉(秤口蝶番・量り梁・皿枠)を倒さず座らせる(舌凧×2+風幕重ね+縦抱え帆柱+枡枕)。

二、笛値鎖と値札鎖の直結をほどほどに解き、“上書き値”を“相談値(座値)”へ戻す。

三、人は返す。非致死、ほどほど」


胸骨の前で二拍。

とん・とん。出立。



1)鈴と笛の市——「軽い者は軽んじよ」の札


広場の真ん中、鈴笛台。

一鈴=量り始め、二鈴=上書き値、三笛=降格値。

薄手の外套の少年が台秤に立つ。笛がひゅいと鳴き、脇の男が黄の値札『軽』をぺたり。

貼り札——「軽札=側道/重札=正道」。

母が静かに言う。

「……サトって呼んでください。『軽』じゃなくて名で」


「風幕一段」

よっしーが笛台の風上にぱさ、フェルト幕で笛値の高域を毛布に落とす。

俺は扉縫合(Lv.2)で秤口蝶番の角に点。

カチ。

梁のきしみが湯気になり、二鈴の押しが半拍遅れた。


リリアーナが五鈴法・秤版をひらく。

一——名(B0.6でちり)、

二——ロウルがとん・とん

三——秤(あーさんが秤図を掲げる)、

四——口(ブラックが秤口を撫でる)、

五——返秤(置きどころは後で)。


サトの襟元に貼られた黄札の影がきゅっと外へ抜け、返し棚の高さに逃げができた。



2)第一秤バランス——分銅の肩、量舌はかりじた


中央の大秤から秤の人が現れる。

肩は分銅束、胸は目盛盤、指は皿鉤、喉に小さな量舌。

第一秤バランス。

声は目盛で話す——先に針が振れ、のちに語が刻まれる。

「名は誤差。重が真。

軽は軽んじ、重は顕彰。

——街は針を愛す」


あーさんが板を軽く立て、短く。

秤は器。

重さは値。

「器は置く。値は相談で決める」


量舌がぴとと鳴る。

「礼法は定価。針が法だ」



3)“秤の喉”を座へ——舌凧×縦抱え×枡枕/相談台・返値棚・標石枡


「揚げる」

俺とニーヤの舌凧が秤口と皿枠へふわ。

あーさんの似せ印を浅く、扉縫合で角に点。

ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。

カチ、カチ。

“命じる口”が“聞く口”へ、針の跳ねが座に落ちる。


ツグリの縦抱え帆柱が量り梁を抱え、よっしーの枡枕が金鳴きを丸める。

フェイが砂袋で左右差をやわらげ、チトセが標石を枡に落とす。

白墨袋で白の口を三つ——相談台(二拍+名+用途を言う)、返値棚(値札の返却)、標石枡(その場の“ものさし”を共有)。

「先に二拍。名→用途→量」あーさん。



4)“値札”の外し方——返値・返秤、名呼び、用途札


男がサトの胸に黄札『軽』をぺたり。

よっしーが拭い布で角を一撫で、俺が押し戻しタンポで**〈秤〉印を〈値〉へ差し替え。

カチ。

リリアーナが四鈴法・値版を重ねる。

一——名、二——拍、三——値口(相談台に“座”)、四——返値。

サトは胸骨の前で二拍**、はっきり言う。

「……サト。薪を運ぶので、肩で持てる重さ」

合唱鍵がB0.6でちり。

黄札は返値棚へ降り、用途札『運ぶ』が掌にすっと。

標石枡に一斤石と薪一本を置き、相談値が座った。

——軽んじられることはなかった。


第一秤バランスの量舌がぴくと震える。

「返せば序列が崩れる」

「崩れるのは押し付け値。値は座に置く」あーさん。



5)秤守と重鬼、錘鴉——非致死、“ほどほど”


台下から重鬼がずるり、肩に小錘をぶら下げた秤守が四人、空から錘鴉がカァ。

サジとカエナが屋根から滑り、藁布ふわり→痺れ粉を“薄く”。

「効きすぎはナシ」

リンクが梁上から二段、秤守の継手へちょん、ちょん。

俺の扉縫合が秤口の角に点、ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。

カチ。

秤守は倒れず、座って縄籠へ。

重鬼はチトセの面取り板で角を落とし、うなりがため息に変わる。

錘鴉はよっしーの沈黙箱(細)+砂袋でふわと包んで非致死捕縛/番麦茶済。

「……温いのは正義」

「節度や」よっしー。

ルフィが籠を覗き、「アタシがやっつけたって言ってよい?」

「非致死でほどほどに、ね」リナ。

ルフィは落花生飴二つで止め、三つ目に手を伸ばしかけてそっと戻した(今日もほんとうにえらい)。



6)“笛値”——上書きの節をほどく


第一秤バランスが量舌をちりと鳴らし、笛値を落とす。

「軽は黄、重は金、寄れ軽、進め重——」

通りの針が一斉に金へ傾き、黄は側道に押し出されかける。


あーさんが板を立て、短く。

声は橋。

重さは値。

「橋で合図、値は相談。笛は礼のあと」

リリアーナが耳鈴をB0.6でちり。

「五の鈴——返秤」

俺は返秤鍵を掌でとん、秤口の角に点。

ブラックの羽衣が高域を熱へ、ニーヤの薄膜が喉に温。

カチ。

笛値の押しは湯気にほどけ、二拍+名+用途→標石で合わせるの座値が広がる。

針は人の仕事に合い、道幅は同じになった。



7)勇者(選ばれた側)の横顔——“バリューショー”“価値保証”“統一価規格”“次は印”


白天幕の上、勇者レンは自動記録器に笑顔。

「“レン、バリューショーを演出! 一瞬で金値!”」

——秤街は相談市へ。映えは座に溶ける。


仮設窓口の勇者サリアは金の細紐を指に絡め、柔らかに囁く。

「価値保証契約に入れば、今日の金値が一生保証。特典も——」

人々が返値棚に値札を返し、相談台で用途札を選び始めると、紐は縁へ戻り、サリアは微笑みながら舌打ち。


見晴台の勇者シュウは規律眼鏡で秤街を見下ろし、図面に赤×。

「非効率。統一価規格で一物一価に」

図面の角にあーさんの一筆——秩序は座。

眼鏡は曇ったまま。


砂走りの狭間で勇者トウマは黒い栞を押さえ、短く記す。

「“秤が座にされた……次は印だ”」

(——第一印シグネット、来る)



8)秤蔵の奥——“最初の重さ(抱き上げ)”と古い名の借り


大秤の裏、秤蔵。

段棚に古い分銅と揺れる揺り籠、小さな産着が並ぶ。

それぞれに人の最初に感じた重さ——抱き上げた赤子が薄く刻まれている。

第一秤バランスの量舌が俺を指した。

「君の古い名を借りたい。万秤の基準に」

——胸骨の裏でとん。イシュタム。

(貸さない。返すために置く)

あーさんの指が袖で二拍。とん・とん。


リリアーナが静かに合図。

「五鈴法・秤版、四——口/五——返秤。四鈴法・値版、四——返値」

俺は返秤鍵と返値鍵を分銅棚の口の角に点、ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。

カチ、カチ。

封じられていた“抱き上げ”は押しを失い、器と礼に戻る。

チトセが面取り板で分銅角をさっと落とし、逃げを作る。

ツグリが縦抱えで梁を抱え直す。

ロウルの拍が座に落ち、合唱鍵がB0.6でちり。

秤蔵の硬響が湯気に変わった。


第一秤バランスは分銅の肩を少し下げ、一礼。

「退屈な秤だ。だから安定する」

針の余韻に薄れた。



9)落としどころ——秤街は“相談市”、中央台は“礼の分銅台”


セレスの声が低く速い。

「白を三口。市口・学童前・祠。秤街→相談市、中央台秤→礼の分銅台。返秤鍵/返値鍵/相談台/返値棚/標石枡を常設。非致死、ほどほど」


ツグリの帆柱が梁を抱え直し、よっしーが枡枕を角に置く。

俺は扉縫合で秤口蝶番の角に点、ブラックの羽衣が最後のキンを熱へ、ニーヤの薄膜が喉を温め切る。

カチ、カチ、カチ。

台秤は倒れず、“二拍→名→用途→標石→礼”の順で扱う分銅台として座った。


バーグ兵士長はむくれながら番麦茶をすすり、ぼそり。

「大盛りは正義や。重いほど偉いやろ?」

「節度や」リナ。

バーグは素直にいも餅を二枚で止め、三枚目に伸びかけた手を引っ込めた(ルール順守)。



10)学園式の昼餉——“二拍→用途→いただきます”


「ほな、飯や」

よっしーの屋台がいも餅の胡麻だれを配り、焼き麦の薄スープをよそい、落花生飴を並べる。

「甘いもんは二個まで! 番麦茶はおかわり一回!」

「アタシここ一生いたい」

「出るために食べるのよ」あーさん。

ルフィは三つ目に手を伸ばしかけてそっと戻した(今日も最後までほんとうにえらい)。


リリアーナが受け札を張り替える。

「秤街→相談市。笛値→座値。返秤鍵/返値鍵常設、返口は常時一口」


ジギーは骨騎士に合図し、外縁に針入れを埋める。

「分銅紐も糸も、まず座に仕舞え。返す時は一本、座の長さで」



11)小稽古——“用途→標石→分け合い”


白が三口、学園広場へ。

「今日の名」が順に呼ばれ、子ども達は胸骨二拍——とん・とん、

用途を言い(運ぶ・配る・遊ぶ)、標石で量を合わせ、分け合いの順を決める。

ロウルの拍が座り、合唱鍵がB0.6でちり。

チトセが標石枡の使い方を見せ、子らは一合を二人で半合ずつに分けた。

笑いが橋になった。


耳飾りがちり。

『王都学院評議より、秤学/値学の常設承認。返秤鍵/返値鍵/相談台の規格化通過。

追記:北の印街に刻印省の徴。第一印シグネット(印と紐づけの押し付け)の気配。印と縁に注意、五鈴法・印版(名/拍/印/口/返印)と四鈴法・紐版(名/拍/紐口/返紐)を準備』ミカエラ。

セレスが氷地図に印印を落とす。


よっしーがブルーシートを肩に担ぎ直す。

「毛布は正義、白も正義。湯屋は……」

「節度」全員。

「はい」



12)終礼——黒板の二行


夕刻の終礼。

あーさんが黒板に三行+二十行を書き連ね、今日の二行を添えた。

名は輪郭。

輪郭は境界。

境界は——蝶番。

道筋は地図。

重みは枡。

車輪は縁。

橋は手。

流れは拍。

舟は器。

港は掌。

門は蝶番。

鍵は歌。

広場は皿。

交差は合拍。

刃は道具。

鞘は布。

重さは値。

秤は器。

街は器。

恐れは影。

塔は柱。

声は橋。

鏡は面。

面は器。

枠は型。

型は器。

箱は蔵。

蓋は布。

車は軸。

輪は縁。

櫂は手。

舵は蝶番。

港は掌。

舷は縁。

灰は跡。

跡は縁。

時は拍。

鐘は合図。

印は紐。

紐は縁。

冠は飾。

飾は礼。

契は文。

文は座。

そして今日の二行。

秤は器。

重さは値。


子どもたちがB0.6でそれぞれの名を呼び、道具(返秤鍵・返値鍵・標石・砂袋・面取り板・角布・拭い布・沈黙箱・風幕・枡枕)を撫でる。

黒板の「今日の名」に新しい丸が増え、リナが丁寧に色を変えて丸を付けた。

ガンツは「値」の字を指でなぞり、木枡に番麦茶を注ぎながら笑う。

ルフィは落花生飴を二つで止め、三つ目をそっと戻した(今日も最後までほんとにえらい)。



13)屋上の夜——次の扉、“印街、第一印シグネット——印は紐、紐は縁”


星が近い。印街の押印台で紐歌が回り、印が人と物を一斉に結び直す気配。

クリフさんが弓弦をとんと鳴らす。

「印で縫われると、矢名は紐へ絡む」

セレスが氷地図に印印を重ねる。

「第一印シグネット。印/紐づけの押し付け。対処は——風幕で紐歌を毛布に、舌凧で印口蝶番に点、縦抱えで梁を抱える。

五鈴法・印版(名/拍/印/口/返印)と、四鈴法・紐版(名/拍/紐口/返紐)の準備」


あーさんが板を抱え、静かに微笑む。

「講話は短く。

印は紐。

紐は縁。

——明日の黒板に、きれいに書こう」


胸骨の前で二拍。

とん・とん。

静けさは扉。


稽古は続く。

開ける。閉める。そして、返す。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ