印街、第一印スタンプ——印は紐、紐は縁
荷車から臨時の黒板をおろし、印台と朱肉鉢と紐札置きが果てまで続く印街の大路——風の上手に立てた。
あーさん（相沢千鶴）が白墨で三行に今日の二行を添える。
名は輪郭。
輪郭は境界。
境界は——蝶番。
印は紐。
紐は縁。
胸骨の前で二拍。
とん・とん——B0.6。
静けさは扉。
「短く点呼」
「ユウキ」
「よっしーや」
「クリフさん」
「ニーヤですニャ」
「リンク」——「キュイ」
「あーさん、相沢千鶴にござります」
「……カァ（ブラック）」
《蒼角》ロウル／ツグリ、《炎狐》フェイ／チトセ。
後詰「ガロット」「セレス」。外縁「ジギー」「サジ」「カエナ」「ゴブリン若者隊**」。
特記：リリアーナ（台帳・呼び戻し札・受付筆リモート）、バーグ兵士長（捕虜札「非致死捕虜／雑炊済」）。
セレスが氷地図に印印を落とす。
「印街。各印台の印口が印歌と直結、『押せ＝結べ＝従え』で紐と札を人に縫い付け、所有や所属を固定する。主宰——第一印スタンプ。印＝紐の押し付けで拍を奪う。印口蝶番と結び梁を座に戻せば、“命じる印”は“置く縁（座縁）へ」
よっしーの虚空庫がぼん。
風幕（防朱ブルーシート）／遮光帆／フェルト幕（厚）／消音布／朱肉吸い紙／判取り石（押し直し用の平石）／紐通し棒／端結び布（ほどけ結び用の柔布）／封緘縄の解き札／返印鍵／返紐鍵／押し戻しタンポ（〈印〉〈紐〉〈名〉）／面取り板（印台角落とし）／縦抱え帆柱／枡枕／沈黙箱（細・中：朱鴉・手印用）／角布・拭い布／楔／鎖輪。
腹は——梅紫蘇おにぎり、菜の花の白味噌汁、甘納豆、玄米ほうじ茶。
黒板の端にリナが小さく**「おやつは二個まで」。ルフィは三袋目の甘納豆に手を伸ばしかけてそっと戻した（今日もほんとうにえらい**）。
ガロットが槍尻でとん・とん。
「目的は三つ。
一、印の喉（印口蝶番・結び梁・台枠）を倒さず座らせる（舌凧×2＋風幕重ね＋縦抱え帆柱＋枡枕）。
二、印歌鎖と紐札鎖の直結をほどほどに解き、“縫い止め”を“置く縁（座縁）”へ戻す。
三、人は返す。非致死、ほどほど」
胸骨の前で二拍。
とん・とん。出立。
⸻
１）連結門——「無印者は通行不可」の札
通りの中央、連結門。
額の札には**「無印者は通行不可」。
旅の編み籠職人が荷背で列に入り、麻の紐が肩を切っている。小さな娘がその背を押す。
番人が長柄の押印棒を掲げた。「家長印と家紐を腕に。外紐は切断**」
娘が一歩出る。
「……ミトって呼んでください。『家紐』じゃなくて名で」
「風幕一段」
よっしーの防朱シートが連結門の風上にぱさ、フェルト幕が木台の甲高い鳴きを毛布に落とす。
俺は扉縫合（Lv.2）で門頭の印口蝶番に角点。
カチ。
朱のぴと音が湯気に変わり、押印棒の押しが半拍座った。
リリアーナが五鈴法・印版をひらく。
一——名（B0.6でちり）、
二——拍、
三——印（あーさんが紐図を掲げる）、
四——口（ブラックが印口を撫でる）、
五——返印（置きどころは後で）。
腕に落ちかけた朱影がきゅっと外へ抜け、返し棚の高さに逃げができた。
⸻
２）第一印スタンプ——印束の肩、印舌
中央の印台から印の人が現れる。
肩は印束、胸は印盤、指は日付輪、喉に小さな印舌。
第一印スタンプ。
声は定型句で話す——先に押句が落ち、のちに語が縫い付く。
「名は仮。印が本。
印に紐、紐に従。
——街は印影を愛す」
あーさんが板を軽く立て、短く。
印は紐。
紐は縁。
「縁は置くもの。縫い止めではありません」
印舌がぴとと鳴る。
「礼法は押順。上印が法だ」
⸻
３）“印の喉”を座へ——舌凧×縦抱え×枡枕／縁結び台・返印棚・紐見席
「揚げる」
俺とニーヤの舌凧が印口と台枠へふわ。
あーさんの似せ印を浅く、扉縫合で角に点。
ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。
カチ、カチ。
“縫い止め口”が“置き口”へ、押しの張りが座に落ちる。
ツグリの縦抱え帆柱が結び梁を抱え、よっしーの枡枕が印盤鳴きを丸める。
フェイが朱肉吸い紙をすっと置き、チトセが面取り板で台角をさっと落とす。
白墨袋で白の口を三つ——縁結び台（二拍＋名＋結び→置く／ほどく）、返印棚（印札・家紐の返却）、紐見席（結び＝繋がりの示し）。
「先に二拍。名→結び→置く」あーさん。
⸻
４）“家長印と家紐”の外し方——返紐・返印、名呼び、端結び札
番人が父の腕に家長印を押し、家紐を巻こうとする。
よっしーが拭い布で角を一撫で、俺が押し戻しタンポで**〈印〉印を〈紐〉へ差し替え。
カチ。
リリアーナが四鈴法・紐版を重ねる。
一——名、二——拍、三——紐口（紐見席に“座”）、四——返紐。
ミトは胸骨の前で二拍**、はっきり言う。
「……ミト。わたしとパパの紐は端結び。ほどけば別々、結べば一緒。家紐は返す」
合唱鍵がB0.6でちり。
家紐は返印棚にさらりと落ち、端結び札『結ぶ：訪ねる／ほどく：出る』が掌にすっと。
——縫い止めはほどけ、縁が座った。
第一印スタンプの印舌がぴくと震える。
「返せば統制が崩れる」
「崩れるのは縛り。紐は縁に置く」あーさん。
⸻
５）印守とこより鬼、朱鴉——非致死、“ほどほど”
台下から印守が四人、腰に糊付け刷毛。
帳場の隙間からこより鬼（何でも撚って縛る小鬼）がくるくる、空から朱鴉がカァ。
サジとカエナが屋根から滑り、藁布ふわり→痺れ粉を“薄く”。
「効きすぎはナシ」
リンクが梁上から二段、印守の継手へちょん、ちょん。
俺の扉縫合が印口の角に点、ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。
カチ。
印守は倒れず、座って縄籠へ。
こより鬼はチトセの端結び布で蝶々結びを教えられ、締め付けが飾りへ変わる。
朱鴉はよっしーの沈黙箱（細）＋朱肉吸い紙でふわと包んで非致死捕縛／ほうじ茶済。
「……温いのは正義」
「節度や」よっしー。
ルフィが籠を覗き、「アタシがやっつけたって言ってよい？」
「非致死でほどほどに、ね」リナ。
ルフィは甘納豆二袋で止め、三袋目に手を伸ばしかけてそっと戻した（今日もほんとうにえらい）。
⸻
６）“印歌”——一括押印の節をほどく
第一印スタンプが印舌をちりと鳴らし、印歌を落とす。
「押せ・結べ・紐で引け——朱が令」
歌に呼応して通りの印台がずらりと起き、人の肩や荷に朱影と紐札が勝手に飛び始める。
あーさんが板を立て、短く。
声は橋。
紐は縁。
「橋で合図、縁に置く。歌は礼のあと」
リリアーナが耳鈴をB0.6でちり。
「五の鈴——返印」
俺は返印鍵を掌でとん、印口の角に点。
ブラックの羽衣が高域を熱へ、ニーヤの薄膜が喉に温。
カチ。
印歌の押しは湯気にほどけ、二拍＋名＋結び→置く→礼の座縁が通りに広がる。
人々は自分の紐を選び、自分の手で解き／結び、札を返した。
⸻
７）勇者（選ばれた側）の横顔——“スタンプ・ショー”“所属保証”“統一印章規格”“次は枠”
白天幕の上、勇者レンは自動記録器に笑顔。
「“レン、スタンプ・ショーを演出！ 一押しで家も店もつながる！”」
——印街は縁結びの街へ。映えは座に溶ける。
仮設窓口の勇者サリアは金の細紐を指に絡め、柔らかに囁く。
「所属保証契約に入れば、紐は切れません。印影は一生更新。特典も——」
人々が返印棚に家紐を返し、縁結び台で端結び札を選び始めると、紐は縁へ戻り、サリアは微笑みながら舌打ち。
見晴台の勇者シュウは規律眼鏡で印街を見下ろし、図面に赤×。
「非効率。統一印章規格で寸・朱・紐色を一本化」
図面の角にあーさんの一筆——秩序は座。
眼鏡は曇ったまま。
砂走りの狭間で勇者トウマは黒い栞を押さえ、短く記す。
「“印が座にされた……次は枠だ”」
（——第一枠フレーム、来る）
⸻
８）印蔵の奥——“最初の印（のしの水引）”と古い名の借り
印台の裏、印蔵。
段棚に古印、落款、蔵人印、そして小さな水引——のしに添える結びが並ぶ。
それぞれに人の最初の縁が薄く刻まれている。
第一印スタンプの印舌が俺を指した。
「君の古い名を借りよう。万印の基準に」
——胸骨の裏でとん。イシュタム。
（貸さない。返すために置く）
あーさんの指が袖で二拍。とん・とん。
リリアーナが静かに合図。
「五鈴法・印版、四——口／五——返印。四鈴法・紐版、四——返紐」
俺は返印鍵と返紐鍵を水引の口の角に点、ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。
カチ、カチ。
封じられていた“結べば従う”は押しを失い、結べば祝う（縁を置く）に戻る。
チトセが端結び布で蝶結びの逃げを作り、ツグリが縦抱えで梁を抱え直す。
ロウルの拍が座に落ち、合唱鍵がB0.6でちり。
印蔵の硬響が湯気に変わった。
第一印スタンプは印束の肩を少し下げ、一礼。
「退屈な印だ。だから安定する」
朱の余韻に薄れた。
⸻
９）落としどころ——印街は“縁結びの街”、印台は“礼の縁結び台”
セレスの声が低く速い。
「白を三口。市口・学童前・祠。印街→縁結びの街、中央印台→礼の縁結び台。返印鍵／返紐鍵／縁結び台／返印棚／紐見席を常設。非致死、ほどほど」
ツグリの帆柱が梁を抱え直し、よっしーが枡枕を角に置く。
俺は扉縫合で印口蝶番の角に点、ブラックの羽衣が最後のキンを熱へ、ニーヤの薄膜が喉を温め切る。
カチ、カチ、カチ。
印台は倒れず、“二拍→名→結び→置く→礼”の順で扱う縁結び台として座った。
バーグ兵士長はむくれながらほうじ茶をすすり、ぼそり。
「ワイの湯屋札の紐、金の房付きにしてくれ」
「節度や」リナ。
バーグは素直に房をちいさめにし、甘納豆は二袋で止めた（ルール順守）。
⸻
10）学園式の昼餉——“二拍→結び→いただきます”
「ほな、飯や」
よっしーの屋台が梅紫蘇おにぎりを配り、菜の花の白味噌汁をよそい、甘納豆を並べる。
「甘いもんは二個まで！ ほうじ茶はおかわり一回！」
「アタシここ一生いたい」
「出るために食べるのよ」あーさん。
ルフィは三袋目に手を伸ばしかけてそっと戻した（今日も最後までほんとうにえらい）。
リリアーナが受け札を張り替える。
「印街→縁結びの街。印歌→座縁。返印鍵／返紐鍵常設、返口は常時一口」
ジギーは骨騎士に合図し、外縁に針入れを埋める。
「紐も糸も、まず座に仕舞え。返す時は一本、座の長さで」
⸻
11）小稽古——“蝶結び→本結び→ほどけ結び”
白が三口、学園広場へ。
「今日の名」が順に呼ばれ、子ども達は胸骨二拍——とん・とん、
蝶結びをむすび、本結びを置き、ほどけ結びで返す。
ロウルの拍が座り、合唱鍵がB0.6でちり。
チトセが端結び布を見せ、結び目に逃げを作る手元をゆっくり。
笑いが橋になった。
耳飾りがちり。
『王都学院評議より、印学／紐学の常設承認。返印鍵／返紐鍵／縁結び台の規格化通過。
追記：北の枠街に型枠省の徴。第一枠フレーム（枠＝型の押し付け）の気配。枠と型に注意、五鈴法・枠版（名／拍／枠／口／返枠）と四鈴法・型版（名／拍／型口／返型）を準備』ミカエラ。
セレスが氷地図に枠印を落とす。
よっしーがブルーシートを肩に担ぎ直す。
「毛布は正義、白も正義。湯屋は……」
「節度」全員。
「はい」
⸻
12）落し紐の小騒動——“ほどほど”の実演
広場の端で、落し紐（誰かが落とした湯屋札の紐）がひらひら。
「ワイの湯屋紐どこいったんや！」バーグ。
「落し紐札書いて、二拍や」よっしー。
バーグは渋々、胸骨の前でとん・とん。
「バーグ。湯屋は半刻、のぼせは節度」
合唱鍵がB0.6でちり。
紐は屋台の梁からぴょいと顔を出す（※実際はゴブリン若者の気働き）。
バーグは礼に味噌汁をよそい、甘納豆は二袋で止めた（今日もルール順守）。
⸻
13）終礼——黒板の二行
夕刻の終礼。
あーさんが黒板に三行＋二十行を書き連ね、今日の二行を添えた。
名は輪郭。
輪郭は境界。
境界は——蝶番。
道筋は地図。
重みは枡。
車輪は縁。
橋は手。
流れは拍。
舟は器。
港は掌。
門は蝶番。
鍵は歌。
歌は合図。
広場は皿。
交差は合拍。
刃は道具。
鞘は布。
重さは値。
秤は器。
街は器。
恐れは影。
塔は柱。
声は橋。
鏡は面。
面は器。
枠は型。
型は器。
箱は蔵。
蓋は布。
車は軸。
輪は縁。
櫂は手。
舵は蝶番。
港は掌。
舷は縁。
灰は跡。
跡は縁。
時は拍。
鐘は合図。
印は紐。
紐は縁。
契は文。
文は座。
そして今日の二行。
印は紐。
紐は縁。
子どもたちがB0.6でそれぞれの名を呼び、道具（返印鍵・返紐鍵・朱肉吸い紙・端結び布・面取り板・角布・拭い布・沈黙箱・風幕・枡枕）を撫でる。
黒板の「今日の名」に新しい丸が増え、リナが丁寧に色を変えて丸を付けた。
ガンツは「縁」の字を指でなぞり、木枡にほうじ茶を注ぎながら笑う。
ルフィは甘納豆を二袋で止め、三袋目をそっと戻した（今日も最後までほんとにえらい）。
⸻
14）屋上の夜——次の扉、“枠街、第一枠フレーム——枠は型、型は器”
星が近い。枠街の型台で枠歌が回り、型札が人と物の扱い方を固定する気配。
クリフさんが弓弦をとんと鳴らす。
「枠に押されると、矢名は型で窮屈になる」
セレスが氷地図に枠印を重ねる。
「第一枠フレーム。枠＝型の押し付け。対処は——風幕で枠歌を毛布に、舌凧で枠口蝶番に点、縦抱えで梁を抱える。
五鈴法・枠版（名／拍／枠／口／返枠）と四鈴法・型版（名／拍／型口／返型）の準備」
あーさんが板を抱え、静かに微笑む。
「講話は短く。
枠は型。
型は器。
——明日の黒板に、きれいに書こう」
胸骨の前で二拍。
とん・とん。
静けさは扉。
稽古は続く。
開ける。置く。結ぶ。閉じる。そして、返す。
