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黄昏に鳴らぬ鐘、イシュタムの魂を宿すさえない俺  作者: 和泉發仙


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188/360

鍵街、第一鍵キーコード——鍵は歌、歌は合図

荷車から臨時の黒板をおろし、鍵盤台と信号灯が張りめぐる鍵街の大路——風の上手に立てた。

あーさん(相沢千鶴)が白墨で三行に今日の二行を添える。


名は輪郭。

輪郭は境界。

境界は——蝶番。

鍵は歌。

歌は合図。


胸骨の前で二拍。

とん・とん——B0.6。

静けさは扉。


「短く点呼」

「ユウキ」

「よっしーや」

「クリフさん」

「ニーヤですニャ」

「リンク」——「キュイ」

「あーさん、相沢千鶴にござります」

「……カァ(ブラック)」

《蒼角》ロウル/ツグリ、《炎狐》フェイ/チトセ。

後詰「ガロット」「セレス」。外縁「ジギー」「サジ」「カエナ」「ゴブリン若者隊**」。

特記:リリアーナ(台帳・呼び戻し札・受付筆リモート運用)。バーグ兵士長(捕虜札「非致死捕虜/雑炊済」)は今日も口は元気、膝は素直。


セレスが氷地図に鍵印を落とす。

「鍵街。各鍵盤台の鍵口が鍵歌と直結、『鳴らせ=開け=従え』で門も帳も人も合図一つでまとめて動員される。主宰——第一鍵キーコード。合図/開閉の押し付けで拍を奪う。鍵口蝶番と合図梁を座に戻せば、“命じる鍵”は“知らせの合図(座合図)へ」


よっしーの虚空庫アイテムボックスがぼん。

風幕(防鳴ブルーシート)/遮音帆/フェルト幕(厚)/消音布/調音砂袋(高域を食う)/音叉(B0.6固定)/耳栓(学童サイズ多め)/返鍵鍵/返合図鍵/押し戻しタンポ(〈鍵〉〈合図〉〈名〉)/面取り板(音孔の角落とし)/縦抱え帆柱/枡枕/沈黙箱(細・中:笛用)/角布・拭い布/楔/鎖輪。

腹は——鶏飯、澄ましあおさ、黒糖羊羹、番茶。

黒板の端にリナが小さく**「おやつは二個まで」。ルフィは三切れ目の羊羹に手を伸ばしかけてそっと戻した(今日もほんとうにえらい**)。


ガロットが槍尻でとん・とん。

「目的は三つ。

一、鍵の喉(鍵口蝶番・合図梁・鍵盤枠)を倒さず座らせる(舌凧×2+風幕重ね+縦抱え帆柱+枡枕)。

二、鍵歌鎖と合図札の直結をほどほどに解き、“命令合図”を“知らせ合図(座合図)”へ戻す。

三、人は返す。非致死、ほどほど」


胸骨の前で二拍。

とん・とん。出立。



1)信号門——「合図なき者は通行不可」の札


通りの中央、信号門。

額の札——「合図なき者は通行不可」。

幼い女の子が家の帰り戸に向かおうとして、門の前で立ち尽くす。両手に鈴飾り。

番人が笛でぴっ・ぴーと二音。門ががしゃり。

「住戸コードなし。外泊扱い。通行不可」

母が一歩進み、低く言う。

「……ユイって呼んでください。『外泊扱い』じゃなくて名で」


「風幕一段」

よっしーの防鳴シートが信号門の風上にぱさ、フェルト幕で笛の高域を毛布に落とす。

俺は扉縫合(Lv.2)で門頭の鍵口蝶番に角点。

カチ。

鍵盤枠の甲高い金鳴きが湯気になり、門の噛みが半拍座った。


リリアーナが五鈴法・鍵版をひらく。

一——名(B0.6でちり)、

二——ロウルがとん・とん

三——鍵(あーさんが鍵図を掲げる)、

四——口(ブラックが鍵口を撫でる)、

五——返鍵(置きどころは後で)。


ユイの鈴の影がきゅっと外へ抜け、返し棚の高さに逃げができた。



2)第一鍵キーコード——鍵束の肩、鍵舌かぎじた


中央の鍵盤台から鍵の人が現れる。

肩は鍵束、胸は楽譜盤、指は鍵匙、喉に小さな鍵舌。

第一鍵キーコード。

声は合図で話す——先に音が鳴り、のちに語が落ちる。

「名は雑音。鍵が整音。

一音で万戸開く。一斉が正義。

——街は従わせる合図を愛す」


あーさんが板を軽く立て、短く。

鍵は歌。

歌は合図。

「合図は知らせ。鞭ではありません」


鍵舌がぴとと鳴る。

「礼法は合図順。符が法だ」



3)“鍵の喉”を座へ——舌凧×縦抱え×枡枕/知らせ台・返鍵棚・合図見席


「揚げる」

俺とニーヤの舌凧が鍵口と鍵盤枠へふわ。

あーさんの似せ印を浅く、扉縫合で角に点。

ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。

カチ、カチ。

“命じる口”が“聞く口”へ、合図の張りが座に落ちる。


ツグリの縦抱え帆柱が合図梁を抱え、よっしーの枡枕が金鳴きを丸める。

フェイが調音砂袋を音孔にすっと置き、チトセが面取り板で鍵盤角をさっと落とす。

白墨袋で白の口を三つ——知らせ台(二拍+名+用途→合図を選んで鳴らす)、返鍵棚(鍵札・合図札の返却)、合図見席(合図の意味を示す席)。

「先に二拍。名→用途→合図」あーさん。



4)“住戸コード”の外し方——返合図・返鍵、名呼び、知らせ札


番人がユイの鈴に**『住戸コード:外泊』をぺたり**。

よっしーが拭い布で角を一撫で、俺が押し戻しタンポで**〈鍵〉印を〈合図〉へ差し替え。

カチ。

リリアーナが四鈴法・合図版を重ねる。

一——名、二——拍、三——合図口(合図見席に“座”)、四——返合図。

母は胸骨の前で二拍**、はっきり言う。

「……ユイ。帰り戸は家の者が待つ音で開く。朝の出は小鈴二つ。夜の帰りは一つ止めて」

合唱鍵がB0.6でちり。

外泊の札は返鍵棚へ降り、知らせ札『朝=小鈴×2/夜=小鈴×1止』が掌にすっと。

門はぱさりと布のように軽く開いた。

——命じる合図は知らせへ変わった。


第一鍵キーコードの鍵舌がぴくと震える。

「返せば統率が崩れる」

「崩れるのは一括強要。合図は置く」あーさん。



5)鍵守と連打鬼、笛鴉——非致死、“ほどほど”


鍵盤台の下から鍵守が四人、腰に拍木。

路地の角から連打鬼(太鼓を無限に叩いて急がせる小鬼)がどどん、空から笛鴉がカァ。

サジとカエナが屋根から滑り、藁布ふわり→痺れ粉を“薄く”。

「効きすぎはナシ」

リンクが梁上から二段、鍵守の継手へちょん、ちょん。

俺の扉縫合が鍵口の角に点、ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。

カチ。

鍵守は倒れず、座って縄籠へ。

連打鬼はチトセの面取り板でバチの角を落としてどんがとんに変わる。

笛鴉はよっしーの沈黙箱(細)+調音砂袋でふわと包んで非致死捕縛/番茶済。

「……温いのは正義」

「節度や」よっしー。

ルフィが籠を覗き、「アタシがやっつけたって言ってよい?」

「非致死でほどほどに、ね」リナ。

ルフィは黒糖羊羹二切れで止め、三切れ目に手を伸ばしかけてそっと戻した(今日もほんとうにえらい)。



6)“鍵歌”——一斉開閉の節をほどく


第一鍵キーコードが鍵舌をちりと鳴らし、鍵歌を落とす。

「開・閉・整列・進め・止まれ——二音で街路を一斉に動かせ」

歌に呼応して通りの格子戸ががらり、吊り橋がばさり、人の足が勝手に歩幅を揃え始める。


あーさんが板を立て、短く。

声は橋。

歌は合図。

「橋で合図、人は自分の足で決める。歌は礼のあと」

リリアーナが耳鈴をB0.6でちり。

「五の鈴——返鍵」

俺は返鍵鍵を掌でとん、鍵口の角に点。

ブラックの羽衣が高域を熱へ、ニーヤの薄膜が喉に温。

カチ。

鍵歌の押しは湯気にほどけ、二拍+名+用途→知らせ→合わせるの座合図が通りに広がる。

人々は小さな鈴や手拍子で知らせ合図を交わし、橋は人の合意で上げ下げされた。



7)勇者(選ばれた側)の横顔——“キーコード・ショー”“アクセス保証”“統一信号規格”“次は鏡”


白天幕の上、勇者レンは自動記録器に笑顔。

「“レン、キーコード・ショーを演出! ワンフレーズで全部開く!”」

——鍵街は知らせの街へ。映えは座に溶ける。


仮設窓口の勇者サリアは金の細紐を指に絡め、柔らかに囁く。

「アクセス保証契約に入れば、合図不要で全門解錠。特典も——」

人々が返鍵棚に合図札を返し、知らせ台で知らせ札を選び始めると、紐は縁へ戻り、サリアは微笑みながら舌打ち。


見晴台の勇者シュウは規律眼鏡で鍵街を見下ろし、図面に赤×。

「非効率。統一信号規格で二音に一本化」

図面の角にあーさんの一筆——秩序は座。

眼鏡は曇ったまま。


砂走りの狭間で勇者トウマは黒い栞を押さえ、短く記す。

「“鍵が座にされた……次は鏡だ”」

(——第一鏡ミラー、来る)



8)鍵蔵の奥——“最初の鍵(風鈴と子守歌)”と古い名の借り


鍵盤台の裏、鍵蔵。

段棚に古鍵と音孔板、そして小さな風鈴——子守歌と一緒に鳴った家の合図が並ぶ。

それぞれに人の最初の鍵が薄く刻まれている。

第一鍵キーコードの鍵舌が俺を指した。

「君の古い名を借りよう。万鍵の基準に」

——胸骨の裏でとん。イシュタム。

(貸さない。返すために置く)

あーさんの指が袖で二拍。とん・とん。


リリアーナが静かに合図。

「五鈴法・鍵版、四——口/五——返鍵。四鈴法・合図版、四——返合図」

俺は返鍵鍵と返合図鍵を風鈴棚の口の角に点、ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。

カチ、カチ。

封じられていた“呼べば従う音”は押しを失い、知らせて迎える音に戻る。

チトセが面取り板で風鈴枠の角をさっと撫で、逃げを作る。

ツグリが縦抱えで梁を抱え直す。

ロウルの拍が座に落ち、合唱鍵がB0.6でちり。

鍵蔵の硬響が湯気に変わった。


第一鍵キーコードは鍵束の肩を少し下げ、一礼。

「退屈な鍵だ。だから安定する」

合図の余韻に薄れた。



9)落としどころ——鍵街は“知らせの街”、鍵盤台は“礼の知らせ台”


セレスの声が低く速い。

「白を三口。市口・学童前・祠。鍵街→知らせの街、中央鍵盤台→礼の知らせ台。返鍵鍵/返合図鍵/知らせ台/返鍵棚/合図見席を常設。非致死、ほどほど」


ツグリの帆柱が梁を抱え直し、よっしーが枡枕を角に置く。

俺は扉縫合で鍵口蝶番の角に点、ブラックの羽衣が最後のキンを熱へ、ニーヤの薄膜が喉を温め切る。

カチ、カチ、カチ。

鍵盤台は倒れず、“二拍→名→用途→知らせ→礼”の順で扱う知らせ台として座った。


バーグ兵士長はむくれながら番茶をすすり、ぼそり。

「ワイの開食合図は三鈴にしてくれ」

「節度や」リナ。

バーグは素直に鶏飯を一杯で止め、黒糖羊羹は二切れまでにした(ルール順守)。



10)学園式の昼餉——“二拍→知らせ→いただきます”


「ほな、飯や」

よっしーの屋台が鶏飯を配り、澄まし汁をよそい、黒糖羊羹を並べる。

「甘いもんは二個まで! 番茶はおかわり一回!」

「アタシここ一生いたい」

「出るために食べるのよ」あーさん。

ルフィは三切れ目に手を伸ばしかけてそっと戻した(今日も最後までほんとうにえらい)。


リリアーナが受け札を張り替える。

「鍵街→知らせの街。鍵歌→座合図。返鍵鍵/返合図鍵常設、返口は常時一口」


ジギーは骨騎士に合図し、外縁に針入れを埋める。

「鈴も笛も、まず座に仕舞え。返す時は一本、座の長さで」



11)小稽古——“止まる→進む→呼ぶ→待つ”


白が三口、学園広場へ。

「今日の名」が順に呼ばれ、子ども達は胸骨二拍——とん・とん、

手拍子で「止」「進」を分け、小鈴で「呼」、掌で「待」を作る。

ロウルの拍が座り、合唱鍵がB0.6でちり。

チトセが面取り板を見せ、大声の角を布で落として静けさをつくる。

笑いが橋になった。


耳飾りがちり。

『王都学院評議より、鍵学/合図学の常設承認。返鍵鍵/返合図鍵/知らせ台の規格化通過。

追記:北の鏡街に鏡面省の徴。第一鏡ミラー(映し返しの押し付け)の気配。鏡と面に注意、五鈴法・鏡版(名/拍/鏡/口/返鏡)と四鈴法・面版(名/拍/面口/返面)を準備』ミカエラ。

セレスが氷地図に鏡印を落とす。


よっしーがブルーシートを肩に担ぎ直す。

「毛布は正義、白も正義。湯屋は……」

「節度」全員。

「はい」



12)落し合図の小騒動——“ほどほど”の実演


広場の端で、落し合図(誰かの合図札)がひらひら。

「ワイの昼寝合図どこいったんや!」バーグ。

「落し合図札書いて、二拍や」よっしー。

バーグは渋々、胸骨の前でとん・とん。

「バーグ。昼寝は半刻、鼾は節度」

合唱鍵がB0.6でちり。

札は柱の影からぴょいと顔を出す(※実際はゴブリン若者の気働き)。

バーグは礼に汁をよそい、羊羹は二切れで止めた(今日もルール順守)。



13)終礼——黒板の二行


夕刻の終礼。

あーさんが黒板に三行+二十行を書き連ね、今日の二行を添えた。

名は輪郭。

輪郭は境界。

境界は——蝶番。

道筋は地図。

重みは枡。

車輪は縁。

橋は手。

流れは拍。

舟は器。

港は掌。

門は蝶番。

鍵は歌。

歌は合図。

広場は皿。

交差は合拍。

刃は道具。

鞘は布。

重さは値。

秤は器。

街は器。

恐れは影。

塔は柱。

声は橋。

鏡は面。

面は器。

枠は型。

型は器。

箱は蔵。

蓋は布。

車は軸。

輪は縁。

櫂は手。

舵は蝶番。

港は掌。

舷は縁。

灰は跡。

跡は縁。

時は拍。

鐘は合図。

印は紐。

紐は縁。

冠は飾。

飾は礼。

契は文。

文は座。

そして今日の二行。

鍵は歌。

歌は合図。


子どもたちがB0.6でそれぞれの名を呼び、道具(返鍵鍵・返合図鍵・調音砂袋・面取り板・音叉・角布・拭い布・沈黙箱・風幕・枡枕)を撫でる。

黒板の「今日の名」に新しい丸が増え、リナが丁寧に色を変えて丸を付けた。

ガンツは「合図」の字を指でなぞり、木枡に番茶を注ぎながら笑う。

ルフィは黒糖羊羹を二切れで止め、三切れ目をそっと戻した(今日も最後までほんとにえらい)。



14)屋上の夜——次の扉、“鏡街、第一鏡ミラー——鏡は面、面は器”


星が近い。鏡街の鏡台で鏡歌が回り、反射札が人を像に貼り付ける気配。

クリフさんが弓弦をとんと鳴らす。

「鏡に押されると、矢名は像で決めつけられる」

セレスが氷地図に鏡印を重ねる。

「第一鏡ミラー。映し返しの押し付け。対処は——風幕で鏡歌を毛布に、舌凧で鏡口蝶番に点、縦抱えで梁を抱える。

五鈴法・鏡版(名/拍/鏡/口/返鏡)と、四鈴法・面版(名/拍/面口/返面)の準備」


あーさんが板を抱え、静かに微笑む。

「講話は短く。

鏡は面。

面は器。

——明日の黒板に、きれいに書こう」


胸骨の前で二拍。

とん・とん。

静けさは扉。


稽古は続く。

開ける。置く。結ぶ。閉じる。そして、返す。


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