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黄昏に鳴らぬ鐘、イシュタムの魂を宿すさえない俺  作者: 和泉發仙


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187/404

北門、第一門ゲート——門は蝶番、蝶番は座

荷車から臨時の黒板をおろし、北門の関所前——風の上手に立てる。

あーさん(相沢千鶴)が白墨で三行に今日の二行を添えた。


名は輪郭。

輪郭は境界。

境界は——蝶番。

門は蝶番。

蝶番は座。


胸骨の前で二拍。

とん・とん——B0.6。

静けさは扉。


「短く点呼」

「ユウキ」

「よっしーや」

「クリフさん」

「ニーヤですニャ」

「リンク」——「キュイ」

「あーさん、相沢千鶴にございます」

「……カァ(ブラック)」

《蒼角》ロウル/ツグリ、《炎狐》フェイ/チトセ。

後詰「ガロット」「セレス」。外縁「ジギー」「サジ」「カエナ」「ゴブリン若者隊**」。

特記:リリアーナ(台帳・呼び戻し札・受付筆リモート)。バーグ兵士長(捕虜札「非致死捕虜/雑炊済」)は今日も口は元気、膝は素直。


セレスが氷地図に門印を落とす。

「北門関所。通行印が税台帳に直結、通るたびに押印=課税。印鎖は列鎖(長蛇列)と繋がり、人そのものを押し留める。主宰——第一門ゲート。**“押す門”を“座る蝶番”**へ戻せば、道は流れる」


よっしーが虚空庫アイテムボックスをぼん。

風幕ブルーシート/遮光帆/フェルト幕(厚)/消音布/舌袋/返門鍵/返路鍵/押し戻しタンポ(〈門〉〈路〉〈名〉)/面取り板/縦抱え帆柱/枡枕/沈黙箱(細・中・太)/角布・拭い布/楔/鎖輪。

今日の腹は——門前うどん、根菜の煮こみ、焼き餅、蕎麦茶。

黒板の端にリナが小さく**「おやつは二個まで」と書き、ルフィは三つ目の焼き餅に手を伸ばしかけてそっと戻した(今日もほんとうにえらい**)。


ガロットが槍尻でとん・とん。

「目的は三つ。

一、門の喉(門口蝶番・門梁・差し枠)を倒さず座らせる(舌凧×2+風幕重ね+縦抱え帆柱+枡枕)。

二、印鎖と列鎖の直結をほどほどに解き、“押す印”を“置く礼(通行礼)”へ戻す。

三、人は返す。非致死、ほどほど」


胸骨の前で二拍。

とん・とん。出立。



1)関所の列——「印」で呼ばれる人


門前の列は朝から蛇。

関札台で門吏が通行印を額や襟にぺたり、横の税板がぴこと光って数字が増える。

「赤印=市内短滞、青印=夜間制限、黒印=沈黙」

小さな少年の額に赤が押されかけた。母が袖を握る。

「……ハコって呼んでください。印じゃなくて名で」

門吏は冷たく肩をすくめる。「名札は内側。印は外側。外で通す」


「風幕一段」

よっしーのブルーシートが列の風上にぱさ、フェルト幕が金具の高域を毛布に落とす。

俺は扉縫合(Lv.2)で関札台の門口蝶番へ角点。

カチ。

列の軋みが半拍座り、赤印の押し手がわずかに鈍る。


リリアーナが五鈴法・門版をひらく。

一——名(B0.6でちり)、

二——ロウルがとん・とん

三——門(あーさんが蝶番図を掲げる)、

四——口(ブラックが門口を撫でる)、

五——返門(置きどころは後で)。


ハコの額に迫っていた赤がきゅっと浮き、返し棚に逃げ場ができた。



2)第一門ゲート——かんぬきの肩、刻印の舌


門の陰から門の人が歩み出る。

肩は閂、胸は門扉、指は刻印ピン、喉に小さな刻印舌。

第一門ゲート。

声は軋みで話す——先に閉じる音、のちに言葉。

「名は内、印は外。

押せば通る。押さねば戻れ。

——市場は列を愛す」


あーさんが板を立て、短く。

門は蝶番。

蝶番は座。

「座のない門は壁です」


刻印舌がちりと鳴る。

「礼法は但書。列が正義」



3)“門の喉”を座へ——舌凧×縦抱え×枡枕/白の口(二つ)


「揚げる」

俺とニーヤの舌凧が門口と差し枠へふわ。

あーさんの似せ印を浅く、扉縫合で角に点。

ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。

カチ、カチ。

“押し門”が“座り蝶番”の角度に落ちていく。


ツグリの縦抱え帆柱が門梁を抱え、よっしーの枡枕が金鳴きを丸める。

チトセが面取り板で門扉の縁をさっと撫で、「逃げ」を作る。

白墨袋で白の口を二つ——通行礼台と返印棚。

「礼は置き、印は返して棚へ」あーさん。



4)“通行印”の外し方——返門・返路、名呼び


門吏がハコの額へ赤印をぺたり。

よっしーが拭い布で角を一撫で、俺が押し戻しタンポで**〈門〉印を〈礼〉へ差し替え。

カチ。

リリアーナが四鈴法・路版を重ねる。

一——名、二——拍、三——路口(往来口に“座”)、四——返路。

母が胸骨の前で二拍**、はっきり言う。

「行ってきます」

合唱鍵がB0.6でちり。

赤は札から口へ降り、通行礼の紐に変わる。

帰り際は子どもが二拍して「ただいま」。

門は橋になった。


第一門ゲートの舌がぴくと震える。

「返せば列が崩れる」

「崩れるのは壁。門は座れば通る」あーさん。



5)門守と回転鬼、鎖犬——非致死、“ほどほど”


門背の桟橋から門守が四人、腰の回転棒がギィ。

回転鬼(回転柵の鬼)がガコンと躍り出、鎖犬が列端を睨む。

サジとカエナが屋根から滑り、藁布ふわり→痺れ粉を“薄く”。

「効きすぎはナシ」

リンクが梁上から二段、門守の継手へちょん、ちょん。

俺の扉縫合が門口の角に点、ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。

カチ。

門守は倒れず、座って縄籠へ。

回転鬼はチトセの面取り板で角を落として回り過ぎを抑え、鎖犬はよっしーの沈黙箱(中)でふわと包んで非致死捕縛/蕎麦茶済。

「……温いのは正義」

「節度や」よっしー。

ルフィが籠を覗き、「アタシがやっつけたって言ってよい?」

「非致死でほどほどに、ね」リナ。

ルフィは焼き餅を二つで止め、三つ目に手を伸ばしかけてそっと戻した(今日もほんとうにえらい)。



6)“列封じ歌”——押し並べの節をほどく


第一門ゲートが刻印舌をちりと鳴らし、列封じ歌を落とす。

「列は整い、列外は黙す、速き者は課、遅き者は罰——」

歌に呼応して列が硬直し、蝶番が固着しかける。


あーさんが板を立て、短く。

声は橋。

門は蝶番。

「橋で合図、蝶番で座。歌は礼のあと」

リリアーナが耳鈴をB0.6でちり。

「五の鈴——返門」

俺は返門鍵を掌でとん、門口の角に点。

ブラックの羽衣が高域を熱へ、ニーヤの薄膜が喉に温。

カチ。

歌の押しは湯気にほどけ、列は間を得る。

人々は二拍のあと、「お願いします」「行ってきます」と声を置いて通った。



7)勇者(選ばれた側)の横顔——“ゲートショー”“通行保証”“統一ゲート規約”“次は鍵”


白天幕の上、勇者レンは自動記録器に笑顔。

「“レン、ゲートショーを演出! 押すだけでスイスイ通過!”」

——関所は往来所へ。映えは座に溶ける。


仮設窓口の勇者サリアは金の細紐を指に絡め、柔らかに囁く。

「通行保証契約に入れば、赤印でも夜間でも優先に。特典も——」

人々が二拍ののち声で礼を置き、印を返し始めると、紐は縁へ戻り、サリアは微笑みながら舌打ち。


見晴台の勇者シュウは規律眼鏡で門を見下ろし、図面に赤×。

「非効率。統一ゲート規約で順路を一本化」

図面の角にあーさんの一筆——秩序は座。

眼鏡は曇ったまま。


砂走りの狭間で勇者トウマは黒い栞を押さえ、短く記す。

「“門が座にされた……次は鍵だ”」

(——第一鍵キー、来る)



8)門庫の奥——“最初の通り”と古い名の借り


関所裏の門庫。

壁一面に古い門札が段々に並び、それぞれに人の最初の通りが薄く刻まれている。

第一門ゲートの刻印舌が俺を指した。

「君の古い名を借りよう。万門の基準に」

——胸骨の裏でとん。イシュタム。

(貸さない。返すために置く)

あーさんの指が袖で二拍。とん・とん。


リリアーナが静かに合図。

「五鈴法・門版、四——口/五——返門。四鈴法・路版、四——返路」

俺は返門鍵と返路鍵を門棚の口の角に点、ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。

カチ、カチ。

封じられていた最初の通りは押しを失い、往来の礼へ戻る。

チトセが面取り板で扉縁をさっと撫で、「逃げ」を作る。

ツグリが縦抱えで梁を抱え直す。

ロウルの拍が座に落ち、合唱鍵がB0.6でちり。

門庫の硬冷が湯気に変わった。


第一門ゲートは閂の肩を少し下げ、一礼。

「退屈な門だ。だから安定する」

列のざわめきに薄れた。



9)落としどころ——関所は“往来所”、門扉は“礼の蝶番”


セレスの声が低く速い。

「白を三口。市口・学童前・祠。関所→往来所、中央門扉→礼の蝶番。返門鍵/返路鍵常設。非致死、ほどほど」

ツグリの帆柱が梁を抱え直し、よっしーが枡枕を角に置く。

俺は扉縫合で門口蝶番の角に点、ブラックの羽衣が最後のキンを熱へ、ニーヤの薄膜が喉を温め切る。

カチ、カチ、カチ。

門は倒れず、“置く→声→通る”の順で使う往来所として座った。


バーグ兵士長はむくれながら列を眺め、蕎麦茶をすすりつつぼそり。

「通行印がないと偉い感じが出ん」

「節度や」リナ。

バーグは素直に焼き餅を二つで止め、三つ目に伸びかけた手を引っ込めた(ルール順守)。



10)学園式の昼餉——“二拍のあとにいただきます”


「ほな、飯や」

よっしーの屋台が門前うどんをよそい、根菜の煮こみを配り、焼き餅を並べる。

「焼き餅は二個まで! 蕎麦茶はおかわり一回!」

「アタシここ一生いたい」

「出るために食べるのよ」あーさん。

ルフィは三つ目の餅に手を伸ばしかけてそっと戻した(今日も最後までほんとうにえらい)。


リリアーナが受け札を張り替える。

「関所→往来所。通行印→通行礼。返門鍵/返路鍵常設、返口は常時一口」


ジギーは骨騎士に合図し、外縁に針入れを埋める。

「印針も紐も、まず座に仕舞え。返す時は糸を一本、座の長さで」



11)小稽古——“行ってきます/ただいま”の二拍


白が三口、学園広場へ。

「今日の名」が順に呼ばれ、子ども達は胸骨の前で二拍——とん・とん、

「行ってきます」で出、

「ただいま」で返。

ロウルの拍が座り、合唱鍵がB0.6でちり。

チトセが蝶番模型を配り、油差しと面取りの手順を見せる。

笑いが橋になった。


耳飾りがちり。

『王都学院評議より、門学/路学の常設承認。返門鍵/返路鍵・通行礼台の規格化通過。

追記:北鍛冶街で炉都の徴。第四炉ファーネス(熱狂と動員の押し付け)の気配。炉と火に注意、五鈴法・炉版(名/拍/炉/口/返炉)と四鈴法・火版(名/拍/火口/返火)の準備』ミカエラ。

セレスが氷地図に炉印を落とす。


よっしーがブルーシートを肩に担ぎ直す。

「毛布は正義、白も正義。湯屋は……」

「節度」全員。

「はい」



12)終礼——黒板の二行


夕刻の終礼。

あーさんが黒板に三行+二十行を書き連ね、今日の二行を添えた。

名は輪郭。

輪郭は境界。

境界は——蝶番。

道筋は地図。

重みは枡。

車輪は縁。

橋は手。

流れは拍。

舟は器。

港は掌。

門は蝶番。

鍵は歌。

広場は皿。

交差は合拍。

刃は道具。

鞘は布。

重さは値。

秤は器。

街は器。

恐れは影。

塔は柱。

声は橋。

鏡は面。

面は器。

枠は型。

型は器。

箱は蔵。

蓋は布。

車は軸。

輪は縁。

櫂は手。

舵は蝶番。

港は掌。

舷は縁。

灰は跡。

跡は縁。

時は拍。

鐘は合図。

印は紐。

紐は縁。

冠は飾。

飾は礼。

契は文。

文は座。

そして今日の二行。

門は蝶番。

蝶番は座。


子どもたちがB0.6で自分の名を呼び、道具(返門鍵・返路鍵・面取り板・角布・拭い布・沈黙箱・舌袋・風幕・枡枕)の名を撫でる。

黒板の「今日の名」に新しい丸が増え、リナが丁寧に色を変えて丸を付けた。

ガンツは「門」の字を指でなぞり、木枡に蕎麦茶を注ぎながら笑う。

ルフィは焼き餅を二つで止め、三つ目をそっと戻した(今日も最後までほんとにえらい)。



13)屋上の夜——次の扉、“炉都、第四炉ファーネス——炉は器、火は拍”


星が近い。北鍛冶街の煙突群が赤く脈打ち、歌が熱になって人を煽る気配。

クリフさんが弓弦をとんと鳴らす。

「火に押されると、矢名は熱で歪む」

セレスが氷地図に炉印を重ねる。

「第四炉ファーネス。熱狂/動員の押し付け。対処は——風幕で熱風を毛布に、舌凧で炉口蝶番に点、縦抱えで梁を抱える。

五鈴法・炉版(名/拍/炉/口/返炉)と、四鈴法・火版(名/拍/火口/返火)の準備」


あーさんが板を抱え、静かに微笑む。

「講話は短く。

炉は器。

火は拍。

——明日の黒板に、きれいに書こう」


胸骨の前で二拍。

とん・とん。

静けさは扉。


稽古は続く。

開ける。閉める。そして、返す。


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