パメラ
食事が運ばれてきた。ジョージは腑に落ちない様子で食べ始めた。伊丸岡夫婦もパメラも食べ始める。
ジョージもパメラも美味しそうに食べている。レストランの店長も店員も胸を撫で下ろした。
パメラはハーブ茶を飲むと、
「教会の集まりを思い出した」
三人は振り返る。パメラは説明した。
その日、色んな女性活動家達が集まっていた。フェミニスト・反人種差別活動家・貧困層向けの慈善事業家・大企業の経営者・性差別に反対するトランスジェンダー女性・平和主義の音楽家・児童の権利を主張する小説家。皆、いかに自分達が社会に貢献し、人権について考えているかを熱心に語っていた。
しかし、仕事と言えば教会の掃除だけのパメラには何もなかった。若い頃にはジョージを含む三人の子どもを育てながら家事をこなしていた。パメラは人権よりも毎日の食事の献立を考えるので精一杯だった。
それを皆に恥を忍んで打ち明けたら、皆は嘲笑するどころか同調した。日々の自分の生活を守れない者が他人を救う資格が果たして有るのか。むしろ人権を語るならば、そんな生活者を置いてけぼりにしないようにすべきではないのか。
「⋯⋯伊丸岡さんの言っている事は何となく私にも理解できる。ジョージ、期待するのは分かるけれど無理強いは良くない」
パメラが言った。ジョージは苦笑いして、
「やっぱり母さんには敵わないね」
伊丸岡が微笑み、
「パメラさん、ありがとうございます」
四人は完食し、和やかに会話が終わった。
パメラとジョージはまた伊丸岡夫婦に握手をするとレストランを後にした。この後、日本の観光名所を何ヶ所か周る予定だ。