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ジョージと伊丸岡

 ジョージは時間通りにレストランに来た。伊丸岡と妻は驚いた。ジョージは老女を連れている。伊丸岡夫婦は二人に握手した。ジョージは老女を紹介した。彼女はジョージの母親で名前はパメラ。パメラはニコニコと伊丸岡夫婦を見比べている。


 四人は席に座ると英語で話し出した。伊丸岡の日本語を妻が通訳する。ジョージとパメラはゆっくりと英語で話す。


「わざわざ来てくれてありがとうございます」

 伊丸岡夫婦が言うとジョージは、

「俺達が来たいと言ったから、気にしないで欲しい」

 パメラは目を輝かせながら、

「『思い出し』で私は認知症が治った。ありがとう」

 伊丸岡は苦笑いする。ジョージは心配そうに、

「せっかく『思い出し』を開発したのに君は自信がないし社会に不満を持っている。勿体ない」

 伊丸岡は、

「認知症が治っても、高齢者達は冷遇されている。特に老婦人への風当たりは強い」

 ジョージは通訳している伊丸岡の妻と暗い顔している伊丸岡を見比べて、

「世界は変わったばかりだ。早急に完璧を求めるのは良くない」

 伊丸岡は、

「貴方は一流企業の経営者だ。だから生産性の無い人を邪魔だと思っているだろう」

 妻は伊丸岡を睨んだ。ジョージとパメラが通訳を促すと、ジョージは困った顔をして、

「確かに経営者として厳しい人事を行うけれど、邪魔な人間なんかいないと俺は思っている」

 伊丸岡は妻の通訳を聴いても半信半疑の顔をしている。ジョージは、

「競合他社を排除して労働者達に無茶をさせて消費者に無闇に商品を買わせて生態系を壊す事業を皆、やっているわけじゃないよ。そんな事業は古い」

 パメラは心配そうに伊丸岡を見つめている。伊丸岡は無表情だ。ジョージは、

「俺達が宇宙開発をしている大きな理由の一つは、どんな人間でも生き延びる為だよ」

 伊丸岡は、

「僕はバカと無能と老人を排除した未来に価値は無いと思っている」

 ジョージはパメラに一度振り返り、

「俺は母が楽しく生きられる未来を考えていると言っているんだ。君は否定的な報道ばかり観ているからそんなに悲観しているんだ。寿命が縮むよ」

 伊丸岡は腕を組む。ジョージは、

「時には差別や迫害を笑い飛ばさなきゃ、本当に潰れる。開き直っても良い。『老いて何が悪い』『無能で何が悪い』。人生は楽しまなきゃいけない」

 伊丸岡は、

「貴方は鬱の恐ろしさを知らない。凡人の悲哀を分かってない」

 ジョージは不思議そうに、

「君は天才なのにどうしてそんなに悲観的なんだ。また画期的な治療法を編み出すべきだ」

 伊丸岡は、

「僕は精一杯の事をしたし、復帰した今の職場で本当に満足だ。それに僕は貴方みたいな天才じゃない」

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