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9話 美琴のお泊まり

 爛々と暑い日差しの中、家の前に私達はいた。


「お義姉ちゃん、本当に大丈夫?」

「うん、大丈夫」

「寂しくなったりしない?」

「大丈夫」

「ご飯自分で作れる? 歯磨きは?」

「大丈夫だから……全部できる」


 目の前であたふたしている美琴。

 今日は友達で集まってお泊まり会をするらしく家に一人残る私を心配していた。

 ちなみに、お父さんと京子さんは仕事で二人とも会社に泊まるとのこと。社会人は恐ろしいなぁ。


「やっぱり、やめようかな」

「……ダメ。友達との約束でしょ」

「でも……はっ、お義姉ちゃんも一緒にくれば……!」

「絶対に行かない」


 知らない人がたくさんいるとこにお泊まり。翌朝には私の死体が出来上がってるだろう。死因は人成分過剰摂取。

 いつまでも行こうとしない美琴に痺れを切らした里美は、美琴の首根っこを掴んだ。


「行くよ」

「待って、里美」


 そのまま美琴はズルズルと引きずられていく。私は手を振って見送った。


「さてと」


 私は家に戻ると、リビングのソファーにダイブした。


「久しぶりの一人……」


 ふと横を見ると、大きなモニターがある。


「やるか」


 私はコーラとお菓子を準備して、ゲームを起動させる。


「……と」


 いかん、お菓子用の割り箸を忘れた。ゲームをするときの必須アイテムだ。

 ゲームをしていると、部屋が暗くなってきた。


「ご飯……美琴、何が……」


 そうだ。今日は美琴はいないんだった。

 冷蔵庫を開ける。

 チャーハンは作れそうだけど、なんかめんどくさくなってきた。

 夕飯はカップ麺でいいや。

 ポットでお湯を沸かして、カップ麺に注ぐ。

 三分間待っている間、何気なくスマホを見る。


「……」


 美琴、何してるんだろう。

 今頃、枕投げとかしてんのかな。いや、それは修学旅行か。じゃあ、恋バナとか……?


「ダメだ……想像がつかない」


 そもそも、友達とお泊まりなんてしたことないし。


「……連絡、しようかな……ん?」


 連絡?

 まるで寂しがってるみたいじゃないか。

 バカバカしい。


「あ、麺伸びた……」


 とっくに三分を過ぎていたカップ麺はスープがなくて、麺だけが存在していた。

 夕食を食べ終えて、アニメを観る。


「……」


 あれ? こんなに静かだったけ。

 普段なら美琴が一緒にいて、アニメを観たりゲームをしたりしていた。


「はぁ……」


 いつの間にか美琴と一緒に過ごすことが当たり前になっていた。この前までは一人の方が気楽でよかったのになぁ。

 スマホが鳴った。画面を見ると、美琴からの電話だった。


「もしもし」

『あ、お義姉ちゃん! 元気?』

「……元気」

『ちゃんとご飯食べた? お風呂入った?』

「……ご飯は食べた。お風呂はまだ」

『ちゃんとお風呂入るんだよ! 後は』

「……もう、なんで電話したの?」

『なんでって、寂しいと思って』


 そうか、美琴も同じ気持ちだった。


『お義姉ちゃんが』

「私か……!」


 まあ、寂しいと思っていたのは事実だけど、それを肯定するのはなんか癪である。


「……一人で楽しんでる」

『そっか。それなら、よかった』

「美琴はどう?」

『こっちも楽しんでるよ! 今はお菓子食べながら、みんなで話してる! お菓子パーティーだね!』

「……太りそう」

『だ、大丈夫! ほら、私よく動くし!』


 慌てた美琴の声。スマホ越しに美琴の友達の声が聞こえた。


『あ、呼ばれたから、もう切るね』

「え……」

『うん? どうしたの?』

「その……なんでもない。おやすみ」

『うん、おやすみ』


 通話が切れる。私はスマホを放り投げると、ソファーに寝っ転がった。


「ん……」


 スマホが鳴った。美琴からのメールだった。


『お義姉ちゃんが一人で楽しめるように』


 と、メッセージと画像が添えられていた。

 画像は里美のパジャマ姿で、胸がパジャマから溢れそうだった。


「……あ」


 一人で楽しめるように、て……私は思春期の男子高校生か……!

 取り敢えず保存しとこう。


***


 お風呂に入り、寝る時間。

 私はベッドで横になる。


「はぁ……」


 中途半端に電話が終わったからか、美琴に会いたくなってきた。


「トイレ」


 ベッドから起き上がり、トイレを向かう。

 トイレを済ませて、部屋に戻ろうとした時、


「……」


 自室に戻らず、美琴の部屋に入った。

 そのままベッドにダイブする。


「ん……」


 美琴の匂いがする。

 もう完全に変態だな。

 と、安心したせいか眠くなってきた。


「少しだけ……」


 私は布団を被り目を閉じた。


「おはよう、お義姉ちゃん」

「……美琴? おはよう……」


 寝ぼけながら時計を確認すると、朝の六時だった。


「あれ? 帰ってくるの、早い?」

「うん、お義姉ちゃんに早く会いたくて!」


 美琴は私に抱きつく。正直言うと暑い。


「ねえ、お義姉ちゃん」

「ん?」

「どうして、私の部屋で寝てるの?」

「……」


 私の顔がみるみる熱くなる。

 昨日、温もりを求めて美琴の部屋で寝た……なんて、言えない……!


「……寝ぼけて、間違った……から」

「そっか。それなら仕方ないね!」


 美琴はベッドにダイブし、私の隣に寝転がる。


「実は早起きしたから、眠くて……一緒に寝よ」

「……いいよ」


 ちょうど私も二度寝がしたい気分になった。

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