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8話 筋肉痛

 プールで遊んだ翌日。

 私はベッドから起き上がれなかった。


「っ……」


 少しでも動こうとすると、身体中に激痛が走る。

 筋肉痛だった。


「お義姉ちゃん、朝ごはん……え? どうしたの?」

「……き、筋肉痛……」

「あー、起きれる?」

「……無理」


 あまりの痛さに涙が出てきた。


「わかった。今日は一日、お義姉ちゃんを看病してあげる! ということで、朝ごはん持ってくるね!」

「……うん、ありがとう……」


 美琴は部屋を出ていく。

 頼もしい義妹だ。

 今日の朝食はトーストにジャム、目玉焼きとコーヒーだった。


「いただきます」


 トーストに手を伸ばそうとしたが、身体が痛い。

 美琴はトーストを手に取ると、ジャムをつけて私の口元に差し出してきた。


「あーん」

「……」


 どうやら、食べさせてくれるようだ。

 でも、恥ずかしいし……けど、身体が動かせない以上仕方がない。

 私はトーストにかぶりついた。


「よしよし!」


 美琴が私の頭を撫でる。

 絶対に子供扱いされてる……!

 美琴のあーんで、朝食を食べ終える。

 今日はベッドでダラダラしよう。


「っ……」


 寝返りをうとうとしただけで、身体が痛む。


「お義姉ちゃん、ご飯食べたら歯磨きしないとね!」

「……そうだね」


 美琴は私のことをお姫様抱っこした。


「……じ、自分で歩くから……」

「ダメ! 私に任せて!」


 美琴は私を洗面台まで運んだ。洗面台の前には椅子があり、美琴が用意してくれたものだろう。

 私は椅子に座った。

 美琴はコップに水を入れ、歯ブラシに歯磨き粉をつける。


「はい、あーんして」

「……」


 木村みかん。高校二年生。

 高校生にもなって、義妹に歯磨きをしてもらう。

 うん、さすがにない。

 もし、受け入れたら色々とアウトな気がする。


「……じ、自分でする」

「遠慮しなくていいよ」

「……じ、自分でする」

「遠慮」

「自分でする」

「……わかった」


 美琴から歯ブラシを受け取る。

 どうにか、自分の尊厳を守り切った。

 筋肉痛と戦いながら歯磨きを終えた。

 美琴にお姫様抱っこされ、部屋に戻ろうとした時だった。


「……トイレ」

「了解」


 美琴は私をトイレに連れていく。


「手伝う?」

「自分でする……!」

「冗談だよ」


 美琴は笑ってトイレの扉を閉めた。

 トイレを終えて、ベッドに戻った私はスマホでアニメや漫画を見ることにした。


「……」


 これだよ。私が夏休みにしたかったことは。

 感動を噛み締めながら、アニメを観ていると、美琴が部屋に入ってきた。


「お義姉ちゃん、調子どう?」

「……安静にしてれば治ると思う」


 私はアニメを停止する。

 部屋にアニメグッズなどがあるから、美琴にはアニメ好きとはバレているが、今観ていたアニメはちょっとエッチな作品だから、知られたら恥ずかしい。


「よかった。筋肉痛にはマッサージとお風呂が効くみたいだから、後でマッサージしてあげるね!」

「……ありがとう」


 なんて義姉思いの義妹なんだろう。


「じゃあ、今日はアニメでも観て一緒に過ごそう!」

「……」


 美琴はベッドの横に座った。

 できれば、一人で観たいんだけど。

 と思っているが、言えない小心者の私である。


「お義姉ちゃんが観てるのは、私も観てみたいな」

「え? あっ……」


 アニメを停止はしていたが、スマホにアニメを写したままだった。


「これは、その……」


 どうにか観ない方向に持って行きたいと思っていたが、私のコミュニケーション能力では無理だった。


「……一話から観る?」

「もちろん!」


 諦めた私はアニメを再生させるのであった。

 アニメの内容は、ラッキースケベをよく起こす主人公が、ヒロイン達とちょっとエッチな日常を送る青年向けアニメである。


「おー」

「……」


 美琴と一緒にエロアニメを観ている気分だ。

 どんな羞恥プレイ……!


「お義姉ちゃんは大きい胸、好きなの?」

「え、えーと……どうして?」

「ほら、このアニメ大きな胸の子多いし、後はプールで里美の胸、見てたから」


 目を逸らすが、美琴の圧に負けて答えた。


「好きでもあるし……妬ましくもある」

「妬ましい……?」

「ほら、私には……無いから」


 自分の胸には膨らみがない。それがどれだけ虚しいことか……!


「お義姉ちゃん! 私は小さいおっぱいが好きだよ!」

「……美琴」

「なんというかこう……手に収まる感じがいい!」

「……なにそれ……っ」


 必死に考えたであろう、美琴の言葉に私は思わず笑ってしまった。


「もう、笑わないでよ……」

「ごめん……っ」


 笑いすぎで、お腹が痛くなってきた。さらに筋肉痛で追加ダメージ。


「大丈夫?」

「……ダメかも」

「マッサージする?」

「お願い」

「じゃあ、うつ伏せになって」


 私はうつ伏せになると、美琴が優しく揉んできた。


「力加減どう?」

「……ちょうどいい」


 人にマッサージしてもらうなんて、いつ以来かな。


「お義姉ちゃん」

「……ん?」

「さっきの言葉を証明するために、お義姉ちゃんのおっぱい揉んでいい?」

「……ダメ」


 全く、美琴は何を言い出すんだ。

 胸は絶対に阻止しないと。


「ふぁ……」


 気持ちよくて、瞼が重くなってきた。

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