6話 プールに来た
もうすぐ、夏休み。
家に引きこもり、アニメや漫画、ゲームを思う存分楽しむことがいつもの過ごし方だった。
「……ふふふ」
自室でノートを眺めて、笑みが溢れる。
ノートには夏休みにやるゲームやアニメ、漫画などのリストがあった。
「楽しみ……!」
「お義姉ちゃん!」
「っ……」
美琴が部屋に入ってきたので、慌ててノートを隠した。
「夏休みは予定ある?」
「……えーと」
引きこもる予定がある。けど、それって予定なのか……?
「……色々と、ね」
悩んだ末、ぼかした回答をする。
「そっか……空いてる日はある?」
しゅんとした顔で聞いてくる美琴。
グサリと胸が痛む。
「……ある」
「じゃあ、一緒に出掛けよう!」
夏休みの外出。
必然的にどこもかしこも混む。さらに、暑い。
「……いいよ」
「やったぁ!」
けど、嫌とは言えずに私は出掛けることになった。
ということで夏休み。
お父さんと京子さんは夏休みはないみたいで、今日も仕事だった。
そして、私と美琴と里美はプールに来ていた。
「……」
更衣室に入ると、人がたくさんいた。
人混み酔いしそうだ……!
「お義姉ちゃん、あそこ空いてる!」
と、美琴に手を引かれて、更衣室の中を進んでいく。
これでは、どっちが姉かわからないな。
三人並んで空いているロッカーを確保して着替え始める。
プールなんて最後に入ったのは中学校の授業以来だ。
だから、水着は持っていなく、美琴がネットで注文してくれた。代金はお父さん持ちである。
「これ、お義姉ちゃんの水着ね!」
「……ありがとう」
買った水着を見るのは初めてだ。美琴からは当日までの秘密て言われてたから。
手提げのバッグを開けて、水着を確認する。
「……」
水着を広げて、私は固まっていた。
「お義姉ちゃんに、絶対似合う!」
と、親指を立てる美琴。
私の水着は水色と白色を基調としていて、所々にリボンやフリルがあしらわれたロリータ系だった。
こんな可愛らしい水着を着る? 私が?
「みかん先輩、大丈夫?」
「……だ、っ……!?」
大丈夫、と答えようと里美に視線をやると、言葉を失った。
里美は黒のシンプルなビキニを着ていて、胸がデカく動いたら溢れるのでは……と私は戦慄した。
「ほら、お義姉ちゃんも早く着替えて!」
「あ、ごめん……」
美琴もいつの間にか着替え終わっていた。
美琴の水着は上は黒のビキニで、下がデニムのショートパンツだった。
私は覚悟を決めて、恐る恐る水着に着替えた。
***
「お義姉ちゃん! 可愛い!」
着替え終わり、プールエリアに行くと、美琴が私を抱きしめた。
「っ……」
私の今の格好は、ロリータの水着で、髪はリボンでツインテールにされている。
完全に子供っぽい姿だ。
「写真撮りたい! けど、撮れない……!」
ここのプールはスマホは持ち込み禁止だから、ロッカーに置いてきたのだ。
「……美琴、離して……」
「えー、もう少し……あ」
里美が私から美琴を離してくれた。
「美琴、はしゃぎすぎ」
「だって、お義姉ちゃんが……!」
「……」
私が一体、何をしたというのか……?
「みかん先輩も恥ずかしがってる」
「え? そうなの?」
美琴はキョトンとした顔で私を見る。私は頷いた。
「ごめんなさい」
美琴は里美から解放されると、私の耳元で囁いた。
「お義姉ちゃん、今度家で水着の撮影会やろうね」
「……」
うん、聞こえなかったことにしよう。
「さあ、行こう!」
美琴は私と里美の手を引き、プールに向かう。
流れるプールやウォータースライダー、飛び込み台など種類が豊富だ。
どこも混んでるけど。
最初に向かったのはウォータースライダー。
私は初体験で正直言うと怖い。
「私は、待ってるよ……」
「楽しいのに勿体無いよ!」
「でも……」
「大丈夫! お義姉ちゃんには私がついてるから!」
「そこまで言うなら……」
ということで、美琴に説得され、ウォータースライダーに乗ることに。
「さあ、一緒に行こう」
「……うん」
美琴の前に座り、一緒にウォータースライダーへ。
景色がすごい勢いで切り替わっていく。
「きゃあああっーーー!」
思わず悲鳴が上がる。
「お義姉ちゃんの大声、初めて聞いたかも!」
「……大声出したの、久しぶり」
怖かったけど、どこか清々しい気持ちになった。
プールから出ようとするが、私は違和感に気づいた。
「……美琴」
「うん?」
「その……身体に力入らない……」
慣れないことをしたせいか、身体に力が入らなかった。美琴はお腹を抱えて笑った後、私に近づいてきた。
「もう、しょうがないなぁ」
美琴は私の脚と背中に手を回すと、抱き上げた。
「っ……」
これはお姫様抱っこ……!
困惑して固まる私に美琴は囁いた。
「私の可愛いお姫様」
「っ……」
キザな美琴に、私の心臓は高鳴った。
「お義姉ちゃん、顔真っ赤。もしかして、ドキドキした?」
「……」
私は美琴から目を逸らした。
***
ウォータースライダー終えて、次にやってきたのは飛び込み台だ。
流石に美琴と一緒に飛び込むわけには行かないので、私は下で待っていることに。
飛び込み台を眺めていると、美琴の番がやってきた。美琴が挑戦するのは高さ五メートルだ。
他の人が飛んでいたのを見てたけど、やはり怖いのか最初に躊躇していた人が大半だ。
だけど、美琴は躊躇することなく、プールへ飛び込む。
「楽しかった……!」
美琴はプールから出ると、私の隣に座った。
「あ、里美だ」
「……どこ?」
「ほら、一番高いとこ」
美琴が指差した先は、高さ十メートルの飛び込み台。そこに里美がいた。
「だ、大丈夫なの?」
「うん? 里美なら余裕だよ!」
そう言うが、見ているこっちがハラハラする。
もし、私があそこに立ったら……泣くだろうね。
里美は勢い良く飛び出すと、空中でぐるぐる回りながら、プールに飛び込んだ。
「……すごい」
「里美は運動できるからね! あのくらいは余裕だよ!」