20話 恋人になって
美琴と恋仲になって、一ヶ月が経った。
私に恋人ができるなんて思っていなかったから、夢のような日々だった。
朝起きたらおはようのキスをしてエッチをして、学校でもキスをしてエッチをして、夜もキスしてエッチをする。
うん、高校生とは思えない不健全な日々だ。
でも、そんな日々も悪くないかも。
「お義姉ちゃん、おはよう」
「おはよう」
目が覚めると、隣には恋人である美琴がいた。
同じベッドで、お互いに生まれたままの姿だ。
「今日は土曜日だし、たくさんイチャイチャしようね」
美琴は私を抱き寄せながら、甘美な誘惑をしてくる。
「……う、うん」
視線を美琴に向けると、美琴が笑顔を浮かべて、優しいキスをしてきた。
もう、キスも数え切れないほど回数を重ねた。美琴の唇の感触が鮮明に思い出すことができる。
「今度はお義姉ちゃんから」
美琴が目を瞑る。私はゆっくりと美琴にキスをした。
「お義姉ちゃん、キス上手くなったね」
「……たくさんしたから」
「そうだね」
美琴はもう一度、私にキスをした。
「そろそろ、起きないと……」
「えー、いいじゃん。このままエッチなことしようよ」
「まだ、朝……」
「朝も昼も夜もしたい」
「……性欲お化け」
「そうだよ……でも、そんな私が好きなんでしょ?」
「……その聞き方はずるい」
私が唇を尖らせると、美琴は私の頬を撫でた。
美琴に頬を撫でられるのが好きだ。
気持ちよくてうとうとしてしまう。
当然、そのまま美琴が寝かせてくれるはずもなく、美琴の顔が近づいてきた。
昼過ぎまでベッドから出られないな。
***
学校の昼休み、私はとぼとぼと廊下を歩いていた。
「はぁ……」
身体が重い。もう、疲労困憊だ。
糖分を補給しないと。
カフェオレを自販機で買っていると、後ろから声をかけられた。
「みかん先輩」
学校で私を先輩と呼ぶのは一人しかいない。
「……里美」
里美はパチパチと手を叩きながら言った。
「おめでとうございます」
「……ありがとう」
「少し話しませんか?」
「うん」
私達は近くにあったベンチに座った。
「美琴とは上手くいってる見たいですね」
「……うん」
「美琴、みかん先輩とのこと自慢してましたよ」
「……え? ど、どんなこと言ってたの?」
美琴が私のことをどう話しているのか、すごく気になる。可愛らしい恋人とか、優しいとか言ってたら、もう最高かも。
里美は目を逸らして答えた。
「……ベッドで悶える表情が可愛いとか、脇が弱いとか」
「っ……」
み、美琴……! 何話しての……!
トップシークレット中のトップシークレット……!
顔が熱くなり、手で隠した。
「まあ、二人きりの時しかそういう話はしないので、周りにはバレてませんよ」
「二人きり……」
里美に視線を向けると、里美は首を横に振った。
「あ、もう美琴とはしてませんので」
「それは……信用してる」
美琴の真剣な眼差しを思い出す。
あの瞳には嘘がないと信じている。
それに、私が一日中相手してるし……!
「美琴の相手は大変じゃないですか? いつもエッチなことばかり考えてるので」
「……うん、大変」
最初の頃は緊張もしていた。
朝も昼も夜も、学校でさえもエッチなことをしてくる。そうなると、緊張感よりも疲労の方が勝る。
「お義姉ちゃん、みっけ! 浮気かな?」
美琴は後ろから私を抱きしめた。そして、里美を睨む。
「浮気じゃない。ただ、美琴の話をしてただけ」
「へー、私の話。どんな話か気になるなぁ」
言いにくい話だった。けど、里美は関係ないとばかりに口を開いた。
「美琴がエッチで困ってるって」
「え? お義姉ちゃん、そうなの?」
「えーと……エッチ自体は……いいけど、疲れるから回数を減らして欲しい」
「そっか……」
美琴がしゅんと落ち込む。
本当は言うつもりはなかったのに……!
「わかった……じゃあ、お義姉ちゃんが疲れないように工夫してみるから」
「えーと……回数を減らすのは」
「え? やだ」
「……」
マジか……!
「本当は学校休んで、一日中したいもん」
「一日中……」
そんなことしたら、私は干からびてしまう。
里美は私に手を合わせていた。
「里美、お義姉ちゃん、連れてくね」
「うん」
「さあ、行こ」
美琴に手を引かれて、私は立ち上がった。
「どこに?」
「二人きりになれるところに」
「え……流石に今は休みたいな……」
「大丈夫。お義姉ちゃんは何もしなくていいから! 私が頑張るから!」
断れないなぁ……と、重い足を引きづりながら、美琴に引っ張られていく。
里美に視線を向けると、里美は口パクで「頑張って」と言ってきた。
「はぁ……」
疲れるけど頑張るしかない。
少し前までは誰かと手を繋ぐなんて、想像してなかった。友達もいないし、一生アニメと漫画に捧げるつもりだった。
けど、父親の再婚で義妹ができて、恋人になって。
色々騒がしい日々だけど美琴となら楽しい日々を過ごせると思う。
「ここにしよう!」
「ここ……廊下……」
「うん、滅多に人がこないし、見られるかもて思うとドキドキするね」
「……」
訂正、楽しい日々よりも、スリルのある日々になりそうだ。
最終話です。
今までありがとうございました!