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2話 ベストフレンド

 美琴は近付いてきた私に気がつくと立ち上がった。


「みかんちゃん! もしかして、新しいお義姉ちゃんてみかんちゃんのこと!?」

「え、えーと……」

「こら、美琴。落ち着きなさい。みかんちゃんが驚いてるでしょ」

「ごめんなさい」

「さて……初めましてみかんちゃん。私は美琴の母親で加藤京子です。よろしくね」


 おっとりと微笑む京子さん。

 この人がお父さんの再婚相手……。


「は、初めまして……娘の木村みかんです。よ、よろしくお願いします」

「はいはい、私は娘の加藤美琴です。そして、みかんちゃんのベストフレンドです!」

「え……」


 ベストフレンド……!

 いつの間に友達に……!


「そうか、みかんに友達が……!」


 お父さんは目頭を押さえて、涙を流していた。

 え? 何その反応。

 もしかして、友達いないと思われてた?

 まあ、合ってるけど……複雑な心境。


「みかんちゃんがお義姉ちゃんか……て、私よりも年上だったの?」

「……たぶん」


 私は背も低く、身体の凹凸も少ない。

 なので買い物とかしていると「一人でお買い物。偉いね」と小学生だと勘違いされる事がある。

 対して美琴は私よりも背が高く、高校生ながら大人っぽい魅力がある。肩まで伸びた髪は明るい茶髪だし、身体の凹凸もある。


「それに、同じ高校だ!」

「……本当」


 今気づいたが、美琴は私が通う高校の制服を着ていた。

 同じ学校だったのか……見たことないかも。

 そもそも、クラスメイトの名前すら覚えてないし。


「もう、これは運命! ディスティニーだね!」

「……」


 何だろう。美琴のテンションについていけない。


「あ、そうだ。これからはみかん先輩かお義姉ちゃんて呼ばないとダメだよね。うーん……どっちが良いだろう?」

「……好きな、方で……」

「わかった。じゃあ、お義姉ちゃんで。私のことは美琴で」

「……うん、美琴」


 誰かの名前を言ったのは久しぶりだ。


「あら、もうこんなに打ち解けて」


 京子さんはおっとりとした笑顔を私に向ける。恥ずかしくなり、お父さんに視線を向ける。


「みかんが……みかんが……」


 まだ、泣いていた。

 どんだけ嬉しいんだよ!

 と、内心ツッコミを入れる。


「とりあえず、ご飯を食べながら親睦を深めましょう」


 京子さんがそう言った。私は席についた。


***


 京子さんと美琴は来週の土曜日にうちに引っ越してくることになった。

 私とお父さんが住んでいるとこは二階建ての一軒家で、余っている部屋がいくつかあったので、そこを使う予定だ。

 ということで、会食の翌日。

 私達は部屋の掃除をすることになった。


「む……」


 空き部屋は普段は軽く掃除はしているけど、やはり埃が溜まっていた。


「さて、頑張りますか!」

「うふふ、腕がなるわ」

「よし、お父さんも頑張るぞ」


 掃除のメンバーは私とお父さんと美琴と京子さんだ。ということで掃除を開始したけど。


「こ、腰が……」


 普段の運動不足のせいか、お父さんは重いものを持ち腰をやってリタイヤ。


「うーん、なかなか難しいわね……」


 京子さんはバケツをこぼしたりなど、仕事を増やすのでリタイヤしてもらった。


「お母さんは仕事忙しくて、家事担当は私だったから! お母さんの家事能力はゼロだよ!」

「なるほど……」


 どうやら、美琴は私と同じ境遇だったみたいだ。

 ちなみに、お父さんも家事能力はゼロである。

 お父さんと京子さんには、リビングでまったりとしてもらい私と美琴で部屋を掃除するのであった。

 月曜日、楽しい楽しい休日が終わり、学校の日。

 私は学校に向かって歩いていた。


「はぁ……」


 気分は天気と同じく曇り模様。

 どうして、月曜日はこんなにも憂鬱なのか。


「わっ」

「っ……!?」


 曲がり角から美琴が現れた。

 思わず尻餅をつきそうになるが、その前に美琴に抱き抱えられる。


「ごめんね、大丈夫?」

「……大丈夫」

「……」

「……?」


 美琴が私を抱きしめたまま、私の顔をジーと見てくる。私に手が伸びてきて、前髪に触れられる。


「うん、可愛い!」

「っ……」


 美琴と目が合い、顔が熱くなる。

 頭を振り、前髪で顔を隠すと、美琴の抱擁を解いた。


「からかわないで……」

「えー、からかってないよ。お義姉ちゃんは可愛いよ!」

「……」


 可愛いなんて言われたことがないから、対応に困る。


「……どうして、ここに?」

「お義姉ちゃんと一緒に学校に行きたいと思って、待ってた」

「……そうなんだ」


 正直、断りたい。

 美琴はどうみても陽キャだ。

 見た目は可愛いし、性格も明るい。

 そうなると、人気者になるのは必然である。そして、そんな人気者と一緒に行動すれば必然的にその輪に巻き込まれることになるのだ。

 そう人見知りの私がだ。もう、地獄だ。

 でも、断る勇気がない私はこう答えた。


「……行こう」

「うん!」


 美琴と並んで歩く。


「この前、猫の動画見てて、鍋の中で寝る動画だったんだけど、可愛くてさ」

「……」

「これ見て、この前ホットケーキのタワー作ってみたの! 上からハチミツたっぷりかけて、もう生きてて幸せ的な……その分カロリーもマシマシだったけど」

「……」


 美琴は私と違ってよく話す。

 私とは身体の構造が違うのだろうか。きっと、話せる臓器があるんだろう。うん、人類の神秘だね。


「美琴、おはよう」

「おはよう」

「美琴ちゃん、おはよー」

「おはよう」

「加藤、チース」

「チース」


 おそらく美琴の友達だろう。学校に近づくにつれて挨拶を交わす人が増えていく。

 私にも視線を向けてくるが、目を合わせないように前髪で隠した。

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