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16話 美琴とデート2

 運ばれて来たアップルパイを見て美琴は目を輝かせた。


「美味しそう……」


 私がアップルパイにナイフを入れると、甘い匂いが溢れた。

 美琴の口元から涎が垂れる。すぐに気づいたのか、慌てて手で拭っていた。


「……どうぞ」


 切り分けて、小皿に移して、美琴に渡した。

 美琴はフォークで切り分けて一口食べる。


「っ……」


 気に入ったのか、美琴の頬が緩んだ。

 それからも、夢中になり、アップルパイを食べる。

 どうやら、機嫌は治ったみたいだ。


「あら、今日はあーんはしないの?」

「あーん……?」

「っ……」


 いけない……!

 咄嗟に話題を逸らそうと試みるけど、その前に真希さんが口を開いた。


「この前来た時は、京子とみかんちゃんがお互いにあーんしてて、見ていて微笑ましかったわ」

「へぇー……」


 さっきまでのほんわかした雰囲気は消えて、美琴が私をじーと見つめる。


「お義姉ちゃん」

「……な、なに……?」

「お母さんとずいぶん仲良くなったんだね」

「えーと……うん」

「じゃあ、私とも仲良くしてくれると嬉しいなぁ」


 美琴は一口台に切り分けたアップルパイにフォークを刺すと、私の口元に差し出して来た。


「……」


 断れる雰囲気ではない。

 それに、美琴にあーんされるのは初めてじゃないし。

 口を開こうとして、私は気づいてしまった。


「っ……」


 このフォーク、さっきまで美琴が使っていたものだ。

 要するに間接キス。

 自然と美琴の唇に目がいく。

 ピンク色で柔らかそうな唇。


「ほら、口開けて」


 美琴がアップルパイで私の唇を突く。

 私はゆっくり口を開くと、美琴が私の口の中へアップルパイを運んだ。

 か、間接キス……!

 私がゆっくりと口を閉じる。

 フォークのひんやりとした感覚が唇に当たる。

 フォーク、舐めてもいいかな……?

 そんな欲望が頭に浮かぶが、行動に移す前に、美琴が私の口からフォークを抜いた。


「どう? 美味しい?」

「……うん」


 私が頷くと、美琴はニコリと笑った。

 間接キスしちゃった……!


「次はお義姉ちゃんの番」

「え……?」

「あーん」


 美琴が口を開ける。

 ピンク色の舌が目に入った。


「う……」


 顔が熱くなる。

 美琴の舌を見て興奮するなんて……私は変態か……!

 お、落ち着け……!

 震える手でアップルパイを一口台に切り分ける。フォークで刺して、美琴の口元へ運ぶ。


「……」


 手が震えながらも、どうにか美琴の口へアップルパイを入れた。

 フォークを抜き、まじまじとフォークを見つめる。

 間接キスのフォーク……! 美琴の唾液が……!

 て、私は変態か……!


「お義姉ちゃん」

「な、なに……?」


 もしかして、変態な思考を読まれたかと、危惧していると、


「アップルパイ、美味しいね」

「そ、そうだね……」

「お義姉ちゃんがあーんしてくれたから、さらに美味しくなったね」


 私のあーんにはそんな力はないと思うけど。

 まあ、美琴が喜んでくれるなら、いいか。


「お義姉ちゃんは私にあーんされて嬉しかった?」

「え……えーと……」


 嬉しいというよりか、混乱するというか。


「もしかして、嫌だった?」


 美琴が悲しげに私に聞いて来た。

 そんな質問のされ方をしたら、嫌なんて言えない。


「……嬉しかった」

「そっか、よかった」


 美琴はニコリと笑った。

 そして、アップルパイを切り分けてフォークに刺すと、私の口元に差し出してこう言った。


「じゃあ、食べ切るまでしよっか」


 美琴がニコリと笑った。

 私の理性、持つかな……?


***


 アップルパイを食べ終えて、お店を出る。


「……」


 無事、私の理性は耐えることができた……!


「美味しかったね! またきたいね、お義姉ちゃん!」

「……うん、そうだね」


 楽しそうに笑う美琴を見て、連れて来てよかったと思った。

 まあ、また同じことをされたら、危ないかも。

 嬉しいやら、危機感を感じていると、美琴のスマホが鳴った。


「あ、ごめん、お義姉ちゃん。里美から電話」

「っ……わかった」


 美琴はスマホを操作して、里美と通話を始める。

 美琴が里美と電話をしている。恋人である里美とだ。

 ぎゅーと胸が締め付けられる。

 スマホを奪って、通話を切りたい。でも、そんなことしたら、美琴に嫌われるし、私の気持ちもバレちゃうかも……!


「うん? お義姉ちゃん?」

「……あ」


 気がついたら、私は美琴の服の裾を掴んでいた。


「な、なんでもない……!」


 私は手を離して、美琴から離れる。

 私のバカ……!


「大丈夫? もしかして、体調悪い?」

「だ、大丈夫……電話は?」

「終わったよ」

「そっか」


 電話は終わったのに、胸のモヤモヤは消えない。

 それに突き動かされ、私は口を開いていた。


「どんな……話、してたの?」


 美琴に変に思われたかも、と一瞬ヒヤリとしたが、美琴は特に疑問に思わず、私の質問に答えてくれた。


「今度、クラスメート誘って、遊びに行きたいて話だよ。もしかして、お義姉ちゃんも来る?」

「い、行かない……」


 美琴のクラスメートの集まりに、年上の私が一人。

 うん、絶対に浮くし「なに、コイツ?」みたいな目で見られる。

 でも、そっか。クラスメートの集まりか……デートじゃないなら問題なし。


「……」


 おかしい……! 美琴のこと、諦めるて決めたのに。

 これじゃ、未練たらたらだ……!

 ちゃんと、諦めないと。


「お義姉ちゃん……!」

「な、なに……?」


 美琴の顔が近くにあった。思わず動揺して、一歩後ずさる。


「大丈夫? もしかして、本当に体調悪い?」

「いや、そんなこと……」

「だって、お義姉ちゃん、泣いてるよ」

「え……?」


 目元を拭うと、指先が濡れていた。


「ど、どうして……」


 何度も拭うけど、収まる様子はない。


「……ごめん、体調悪いかも……」

「じゃあ、今日は帰ろう」

「うん」


 私達は帰路についた。

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