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15話 美琴とデート

 デートとは?

 交際している二人がいちゃつくことだ。

 当然のことながら、私にはデートの経験なんてないし、誰かと遊んだ経験すら、美琴と知り合うまでなかった。


「うーん……」


 取り敢えず服装を決めよう。

 美琴からもオシャレをするように言われたし。

 私はクローゼットを開けて、服を取り出した。


「はぁ……」


 当然のことながら、私のクローゼットにはオシャレな服なんて存在しない。

 パーカー、Tシャツ、ズボン。

 全てシンプルなデザインだ。

 そもそも、デートて言ってたけど、コップ買いに行くだし、美琴がノリで言っただけだ。


「うん、いつも通りで……」


 ということで、デート当日。

 私は鏡の前で自分の姿を見ていた。

 クリーム色の大きめなパーカーに、チェック柄のミニスカート。黒いタイツを履いていた。


「……」


 なんというか、気がついたらネットでポチていた。

 に、似合うかな……?

 と、不安に思いながら鏡の前で何度も確認する。


「お義姉ちゃん、準備できた?」


 扉がノックされ、美琴の声が聞こえてきた。


「……できた」

「そう」


 美琴が扉を開けると、私を見つめてきた。

 やっぱり、変かな……?


「お義姉ちゃん、すごく可愛い……!」

「っ……」


 美琴は思いっきり私を抱きしめた。

 この柔らかさ、美琴の胸……! それに、いい匂いも……!


「あ、ごめんね。お義姉ちゃん大丈夫?」


 美琴は抱擁を解くけど、私はノックアウト寸前だった。


「……や、やばいかも」

「え?」

「な、なんでもない……!」


 私は頭を横に振り、正気を取り戻そうとした。


「……い、行こう」

「うん」


 私は美琴の横を通り、先に玄関に向かう。

 それにしても、美琴が可愛いて言ってくれた。


「っ……」


 ニヤケそうになる表情筋をどうにか押さえ込む。

 初っ端からこれじゃ……もたないかも。


***


 さて、デートが始まった。

 私達がやってきたのは、ショッピングモールの食器コーナーだ。

 まあ、新しいコップを買いに来たわけだし。


「ねえ、お義姉ちゃん! せっかくだからお揃いにしよう」

「お揃い……!」

「そう、これなんてどう?」


 美琴が手に持ったのはマグカップ。

 猫のイラストが描かれており、青色と赤色のものがあった。


「……」


 なんか、新婚みたいだ。


「新婚みたいだね」

「え?」


 もしかして、声に出てた……!?


「このハート型も、いいよね?」

「……」


 どうやら、私の勘違いのようだ。

 けど、新婚って美琴もそう思ってくれたんだよね……これって、チャンスがあるのでは……でも、美琴には里美が……!


「お義姉ちゃん!」

「っ……!?」


 いつの間にか、美琴の顔が目の前にあった。

 思わず、一歩後ずさる。


「人の話聞いてる?」

「……ごめん」

「もう、せっかくのデートなのに、聞いてないなんて酷いよ。あ、もしかして、好きな人のこと考えてた?」

「す、好きな人……!」


 顔が熱くなると、美琴が笑った。


「あ、その反応、お義姉ちゃん、好きな人いるでしょ! ほら、可愛い義妹に教えてよ!」

「……い、いない」

「そんなこと言わないの」

「……」


 美琴が私の頬を指で突いてくる。

 絶対に言ってやるものか……!


「もう、わかったよ。無理に聞かないから……あ、でもいつかは教えてね! その時はお義姉ちゃんのこと応援するから」

「……いつか、ね」


 その時が来たら、美琴はどんな反応をするかな。

 まあ、その時はこないけど。


「で、お義姉ちゃんはマグカップどれがいい?」

「私は……」


 並んだマグカップを眺める。

 目に留まったのは、ピンク色で、女の子のイラストが描かれたマグカップだった。

 片方は着物を着た女の子で、もう片方はドレスを着た女の子が描かれている。


「これ……」

「じゃあ、それにしよっか」


 ということで、あっさりとコップ選びは終わった。

 これにて、帰宅とはならなかった。


「お義姉ちゃん、エスコートお願いね」

「……」


 デート初心者の私がエスコートなんて、できるわけない。

 服でも見に行く? いや、服のことなんてさっぱりだ。普段はネットで適当に買ってる。

 映画館。

 チケットの買い方も知らないし、人が多そう。

 ホテル。

 私達はまだ高校生だ。健全な付き合いから……でも、誘われたら行くかも。

 脳内がぐるぐるとしていると、美琴が私の顔を覗き込んだ。


「お義姉ちゃん?」

「……ごめん、今考えてるから……」


 いいところ……ご飯が美味しくて……あ。


「いいとこあった」


 私が美琴をエスコートしてやって来たのは、以前京子さんとアップルパイを食べに来たお店だった。

 京子さんが美琴には内緒って言ってたけど、ごめんなさい。他にいい店知らない。


「いらっしゃい、あら、みかんちゃん」

「こ、こんにちは」

「そちらの子は……あ、京子の娘ね」

「え? お母さんの知り合いですか?」

「ええ、私は京子の友達の真希よ。よろしくね」

「よろしくお願いします。私は美琴です」

「美琴ちゃんね。京子の若い時にそっくりだから、すぐにわかったわ」

「そうですか。ありがとうございます!」


 美琴は笑顔を浮かべながら答えた。

 京子さんに似てると言われ、嬉しかったのかも。


「この前も京子とみかんちゃんが食べに来てくれて」

「へー」


 美琴が私を見ていた。


「お母さんと美味しいもの食べて、いいなぁ。私も誘ってくれたらいいのに」

「……美琴、出かけてたから」

「そうだけど……でも」


 と、頬を膨らませる美琴。

 子供っぽくて可愛いなぁ。

 それから、私達は席についた。


「ここ、アップルパイが美味しい……」

「じゃあ、それで」


 ご機嫌斜めな美琴。

 まあ、京子さんと二人で、美味しいものを食べてたら、狡いと思うのは仕方がないことだ。

 そう思いながら、私は真希さんにアップルパイを注文した。

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