12話 ダイエット
私達はお風呂に入っていた。
美琴に背中を預けて、美琴が後ろから私を抱きしめる。
最近は、たまに美琴と一緒にお風呂に入っている。
私が誘うわけではなくて、美琴が突入してくるのだ。
最初は恥ずかしくて緊張したけど今では……今でも緊張はする。
「ねえ、お義姉ちゃん」
「……なに?」
「太った?」
「……」
その言葉に私は固まった。美琴は私のお腹を触る。
実は里美の豊かな胸の秘密はたくさん食べることにあると仮説を立てた私は、たくさん食べるようになったのだ。
その結果、栄養がいったのは胸ではなくてお腹だった。どうやら、私の胸には栄養をためる機能がないみたいだ。外付けで追加できないかな……?
「まあ、少しふっくらしたお義姉ちゃんも可愛いと思うけど」
美琴は私の頬に自分の頬をスリスリする。
「そ、そうかな……?」
「うん! このまま大きくなったら雪だるまみたい!」
「……」
それは私の手足が短いてこと……!
絶対に……痩せる!
「美琴」
「うん?」
「私、明日から……ダイエットする」
「ダイエット? ランニングするの?」
「……ランニングもする、筋トレもする……」
そして、私はナイスバディを取り戻す……!
いや、痩せても、ナイスバディじゃないけど。
ということで、翌日の早朝。
私は外に出ていた。
「……美琴はどうしたの?」
「うん? 私も一緒に走ろうと思って」
「……」
美琴には無駄なお肉はない。それは、昨日のお風呂で確認している。
「……私のペースについてこれないなら……置いてく」
今の覚醒した私なら十キロくらい余裕だ。
そんな謎の自信が湧いてくる。
「今日のお義姉ちゃん……かっこいい!」
美琴は私に抱きついた。
「……走れない」
「あ、ごめんね……じゃあ、レッツゴー!」
私の足は軽やかに動き出す。
まるで、風のようだ。
そして、五分後。
「ぜぇ、ぜぇ」
もう、ふらふらだった。
身体が左右に揺れている。視界が歪んでくる。
「お義姉ちゃん! 少し休もう!」
心配してくれている美琴は、汗はかいているがまだまだ元気そうだ。
「……休……む」
私は倒れそうになるが、美琴が慌てて支えてくれた。
それと同時に私の意識は途切れた。
***
ん? 冷たい……?
「ん……美琴?」
「あ、おはよう」
ゆっくりと身体を起こす。
冷たいと感じたのは、美琴が私のおでこにスポドリを当ててたみたいだ。
「大丈夫? ふらふらしない?」
「……大丈夫……ここは?」
辺りを見回す。
私はベンチに座っていて、近くには木があり、影になっていた。
周りに鉄棒や滑り台があり、どこかの公園だろう。
「近くにあった公園。お義姉ちゃんが倒れたから、運んできたの」
「……そっか」
どうやら、無理をしすぎたみたいだ。
普段運動しない人間が、真夏の日に外でランニング。
うん、自殺行為。
「飲めそう?」
「……うん」
美琴からスポドリを受け取り、ゴクゴク飲む。
「ふぅ……生き返った」
「よかった」
「……家に帰ろう」
「うん」
家に帰り、私は筋トレをすることにした。
まずは腕立てだ。
「……」
う、腕を曲げられない……!
曲げた瞬間、間違いなく崩れ落ちる。
フォームを取っているだけで腕が震えてきた。
「っ……」
どうやら、腕立ては初心者には厳しかったみたいだ。
次は腹筋だ。
仰向けに寝転がり、膝を曲げる。上体を起こそうとするが。
「ぐっ……」
無理だった。
一回もできなかった。
「お、お義姉ちゃん! ファイト!」
「美琴……」
美琴が応援してくれるが、その応援に応えることはできない。
「うぅ……私は痩せることができない……」
このまま太っていって雪だるまになるんだ……!
自分のポンコツぶりが嫌になり、頭を抱える。
「そんなことはない!」
「美琴……」
「お義姉ちゃんはやればできる子! 頑張って!」
「っ……」
美琴から励まされ、やる気が出てくる。
私は腕立て伏せのフォームを取った。
「ふぬ……」
「無理しないで! 最初は膝突きながらやろう!」
「……うん」
膝を突くと、腕の震えが止まった。
ゆっくりと腕を曲げる。
「っ……」
そして、一気に上体を上げる。
「で、できた……!」
「お義姉ちゃん、ナイスファイト!」
「ありがとう」
ここまで頑張れたのも、美琴のおかげだ。
「……もっと、頑張る」
「ファイト!」
と、筋トレを頑張りまくった翌日。
「いてて……」
私は筋肉痛になっていた。
この前のプールを思い出す。
「お義姉ちゃん。今日は私が看病するから!」
「……うん、お願い」
ちなみに、お腹の贅肉は無理して食べることをやめたら元に戻ったのであった。