9. 猫と幽霊猫
隕石の圧力と熱により、ミルメコレオが灰塵と化した。魔石は回収しないとな……。
しばらく経ったが、どの灰の山を探しても見つからない。さては、戦闘中に割れたか……
その直後、灰が粒子分解し、空に散っていった。
倒してしばらくすると、魔物は消えるんだな。魔石は消えてないだろうな……
俺の直ぐ目の前に、直径18cm程の魔石が出てきた。思ってたよりデカい。魔石について調べてから、何かに使おう。
インターネットに繋いで調べると、なんか満足感ないな…。自分で調べようっと。
確か、自然石が出る最低限ランクは、Dだったかな。Dランクの魔物……
カラカルトサーバルって奴がDランクだったような…
ちょっと調べるか。
魔石の中でも価値は低く、あまり重宝されることはない。
野良猫に餌を与える感覚で食べ物を与え続ければ、いずれ懐く(飼える)
最初のうちは普通の猫のように撫でたりして、安心させてから懐かせるのが良い
一様、世間的にはペットして認められている
しかし、最近では不法投棄が多発している
おぉ……飼えるのか。って、え!飼えるんですかぁっ!?
てか、何だよ、不法投棄って。酷すぎだろ。
今すぐ探そう。
生息区域は……日の光が十分に届いている森など。
あれ、猫って地球でも、森に住んでたっけ? まあ、いいや。
しばらく歩き回っていたら、カラカルトサーバルを見つけた。え、めっちゃ可愛い……たしか、どっかしら撫でたらいいんだよな。定番の頭が妥当か。
ちょっとずつ近づいて、頭に触る。ふわふわだぁ。半分溶けそうになっていると、
──人間如きが気安く触るな──
そう聞こえた瞬間、大型の魔法が近距離で飛んでくる。咄嗟に避けたが、当たり判定も大きいようで左手を掠った。
しかも、今、頭の中に声が響いたような……。
カラカルトサーバルがこっちを睨みつけてくる。その背後に……エジプト神話に出てきそうな黒猫がいた。半透明だけど。
これ、カラカルトサーバルじゃ、ないな。特に後ろにいる奴。威圧感が半端ない。
「『回転式変換器、月曜』『メテオ』」
元々のカラカルトサーバルの跳躍力でいとも簡単に避けられた。上からの攻撃を諸に受け、少しずつ焦燥感が芽生える。
何か輪っかがガチンガチン言いながら、俺に迫ってくるぅぅ!!!やばいなぁ…いつまで経っても埒が開かねぇ。
攻防戦……っていうより、一方的に攻撃されてる状況。
フェイントでも仕掛ければ……。別々の魔法を同時展開する。
少し魔力を貯めて、銃口の先に一つの球体を作る。
「『爆ぜろ、眼前の敵を吹き飛ばせ───刄兎蘇都九武露嵐』」
もう一度さっきと同じように魔力で球体を作ったが最も簡単に避けられた。掛かったな。今の魔力の球体は本命じゃない。刄兎蘇都九武露嵐は、風を銃床で起こし、相手を吹き飛ばすもの。
相手は宙に浮いている。強風に煽られれば吹き飛ぶのは、当然。
──にゃ゛にっ!──
場違いな、間抜けな声が頭に響く。
ごめんよ。痛いだろうけど、危害を加えたのはそっちだ。──何としてでも飼ってやる。
銃口を額に当てて反応を待つ。
──はぁ、我も腕が鈍ったな。人間如きに負ける日が来るとは。で、何が用件だ──
「猫を飼いたいから、お前を飼おうと思っている。」
──は?え、なんと言った──
「お前を飼おうと思う。」
──人間が?我を?………ふはははは!面白いジョークが世の中には転がっているものだな。あのな、我は、猫の神だ。人間と馴れ合うなど──
「でも、明らかにもう死んでるよな。」
──う、五月蠅い!パラサイトとして、蘇ったのじゃ!ま、まぁ、良い。今一度、関わってやろうではないか──
そういうなり、パラサイトを名乗る黒猫が、カラカルトサーベルから離れた。カラカルトサーベルは、さっきよりも活発に動き出した。
カラカルトサーベルの頭を撫でる。ふわふわぁ………あっ、コレ、猫だ。ただの猫だ。
「それで?我はどうしたらいいんだ?」
「Dランクの魔石が欲しいから、手伝って欲しい。」
「ほう、面白そうだ。」
あれ、カラカルトサーベルと、パラサイト分離してる気が…
俺が撫で回した所為で喉をゴロゴロ鳴らしてるカラカルトサーベル。その状況を目を細めてみるパラサイト。……むむむむむ、さっきまで一体化してる感じがあったのにな。
「……、此奴が好みそうな鳥でも狩ってきてやろう。」
「ありがとう」
パラサイトがどっか行ってから、数分後。少し離れたところで何かのカァー!!という断末魔が聞こえた。
カラカルトサーベルがでろんでろんになるまで撫でた頃、パラサイトが戻ってきた。
「ほれ。これを食わせろ。」
なんか……頭の中で黒い姿が過ぎったような……
あげてみよう。うわ、目がキラキラどころかギラギラ輝いてる。一口齧りつくと、目をしいたけにしてバクバク食べた。
何度も俺に擦り寄ってくる。可愛い……名前は、何にしよう。
カラカル……カラカ…
「よし、カラ。これからよろしくな!」
「ナオーゥ」
カラを撫でていると、猫神様から、物欲しそうな視線が送られてきた。気の所為か……?
「我にも……。」
あら、意外とこの子かわいい。ちょっと慎重に手を伸ばす。手はパラサイトの体をすり抜けてしまった。いや、まぁ、霊体だもんな。そりゃ、触れねぇわ。
「違う、そうじゃない。名前。」
そっちか。なるほど。
いや、地球のピラミッドがある国の猫の神様に酷似してるなんて、そんなこと思ってないよ?
ましてや、その神様の名前になんてしようと思ってないからな?そ、そもそもで忘れたし。
とりあえず、速攻懐いた、カラとパラサイトを抱えて家に入った。
パソコンの前に座る。猫 神様 名前 と、入れる。
「バステトか……悪くないな。気に入ったぞ、これがいい。」
「じゃ、じゃあ、バステト。よ、よろしく?」
そういや、良くあるパターンだと、神獣とか、魔物とか、契約だったり、テイムって奴をすることが多い気がするんだがな。
バステトの体をちょっと触ってみる。
「冷たッ!」
「そりゃそうじゃ。だって我、霊体じゃもん。」
温度操作で上げてやれ。
「な、なんか暖かくなったぞ。あぁ、あったかいにゃあ……」
腑抜け顔で寝転ぶ猫を横目に、ちょっと温度操作をする。みんなが覚えてるか知らないが、能力は使えば使うほど強力なものになるって、転移してきてすぐに言われたからな。これを毎日続けているから、ちょっと日向に追いついてるのかもしれない。
でも、日向は、どう考えても碌に努力なんかせず、ゴリ押し戦法使ってるだけだ。それなのに勝てない事実がより一層悔しい気持ちを増幅させる。
そういや、さっきはあんまりバステトの温度を感じれなかったのに……。おかしいな。
「我、実体がほしい。」
「えー。そんなこと言われても…。」
にしても、猫が2匹だぜ?日向も猫好きだからきっと羨ましがるな。
しかし、問題は夜寝る時。耳元でずっと、ナオナオ鳴いてる奴がいる。カラは寝たのになぁ。
「実体…欲しい。」
とりあえず、バステトを抱えて寝る、浅野であった。
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