表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
何か大阪が丸ごと異世界転移したんやけど!?  作者: 田湖 矢喜
第一章 異世界転移した大阪
3/10

3. え?手合わせ?もう、疲れたんやけど。

5分間の休憩も終わり、2限目になったことを知らせるチャイムが鳴った。メルカ先生の生徒達が入ってきた。その内の一人、茜色の髪をした、少女と目がうた。しかし、それも一瞬のことや。すぐに、別の方を向いてしもた。


「では、最初の組み合わせを発表します。エリカさんと、ヴィルトさん。」


どうしても、ボーッとしてまうな……。自分の番は大体、直ぐ回ってくるんやけど…。分かった、昨日食べたクッキーの所為や!まぁ、ええわ。おっ!絵梨花ちゃん勝ったんや!凄っ!


暫く、何組かの試合を見てたら、ウチの名前が呼ばれた。


「ヒナタさんと、アグネスさん。」


ウチが歩み出ると、さっきの茜色の髪の少女が出てきた。暫く、互いを見つめ合う。アグネスは、髪の毛よりも赤く深い紅の瞳でこちらを見つめている。


その目は、今にも眠りそうなほど瞼が降りている。言うんやったら、ジト目。


「始め!」


教員のメルカの声が響く。今にも眠りそうだった、真紅の瞳が見開かれた。アグネスは、日向の方へ勢いよく走ってくる。日向は、咄嗟にトランプを数枚飛ばしたが、その全てが、アグネスによって切り裂かれる。


「『ダイヤガード』」


日向は、13枚のダイヤのカードを前方の展開した。アグネスは、まるで、そんなこと分かりきっていたかのように、自然体で方向転換をする。


やや、吊り上がった目。しなやかな身のこなし。おまけに、気怠げだった瞳は今は瞳孔まで開いている。そんな彼女は正に、猫のような者と言えるだろう。


アグネスは、美しく洗練された、無駄のない動きで、剣を操っている。その刃には、林檎のように赤く燃え盛る炎が纏わりついていた。


だが、日向に、見惚れている暇はない。完全に、アグネスのペースに引き込まれてしまっているのだから……。


「『ファイアクロウ』」


火の鴉が日向の頭上を旋回し、その鋭い嘴が日向に向けられる。が、水曜で作られた、つばめによって、攻撃は相殺された。


火と、水が交わり合う中、遂に、日向は別の曜も使い始めた。アグネスもそれに合わせて、使う曜の種類を増やして行く。


七曜が混ざり合い、入り乱れた。その様子はまるで、白紙のキャンパスに、星彩のような、色を載せていくようだった。


しかし、そのような状況下でも、隙のある場所を正確に狙ってくるアグネス。日向は確実に押されていた。激しい剣閃をギリギリで防いでいた日向がついに、蹌踉よろめいた。絶好のチャンスとばかり、アグネスの剣は、日向に向かって振り下ろされた。


刹那、視界が何かで覆われ、アグネスの剣の勢いが止まる。即座に、目の前の障害物を焼き払い、次の行動に移そうとしたが、アグネスは目を見開いた。何故なら、アグネスの首の至近距離にトランプが制止していたからだ。


オーバーヒートしていた頭がゆっくりと冷えていく。次に、アグネスは両手をあげ、こう呟いた。


「降参。」


*****


「対戦おおきにな、アグネスはん。」

「手応えがあって楽しかった。またやろう。」


二人の少女は、握手を交わす。その光景は、とても、微笑ましいものだったが、教員のメルカは、先程の攻防戦のことを考えていた。


不利な状況下で、トランプを目隠しのように使い、一瞬で、急所の前にトランプを生成したのだ。疲労していたにも関わらず。


アグネスはクラス屈指の強者つわものだったのだが、日向に負けてしまった。その出来事は、日向がどれだけ規格外なのかを物語っていた。


そして、次の組み合わせが発表された。


「アサノさんと、ケインさん」


「何で、苗字なんだよ……。」


お疲れ様ァッ!と、心の中で叫んでいたのは、恐らく日向だけではなく、大半の者はそう思っていただろう。


そして、始めの言葉を合図に戦いの火蓋は切られた。

浅野が、温度を下げ、自分のテリトリーに、相手を入れる。そして、相手の周りの水蒸気を急冷し、氷に変える。完全に、閉じ込めた。


しかし、氷の壁に亀裂が入り、氷の欠片が飛び散った。二人とも笑い、睨み合う。

ケインは、炎で剣を作り…合川は、氷の両刃斧を作った。


暫く、接近戦が続いていたが、魔術も使い始めた。


「『ファイアリング』」


火の輪が、合川を取り囲んだ。その火の輪はどんどん小さくなっていく。

しかし、火の輪を包み込むように、氷を生成したことで、浅野の危機は去った。


「『アイシクルストーム』」


氷柱の雨が降り注ぐ。が、ケインは、頭上に炎で屋根のようなものを作り、その全てを防いだ。そして、炎の屋根が無数のナイフに変化する。


「『アイスウォール』」


絶対零度の壁を作り、赤々と燃えるナイフを次々に消火していく。全てのナイフを消火すると同時に、氷の壁は完全に融解した。


「『業火、烈火、紅焔、それらが作り出すのは、氷さえも燃やす炎。燃やし、熱し、万物を焼き尽くせ───バーニングエクスプロージョンッ!!』」

「『六花、冠氷、銀雪。集え、今ここに、炎さえも凍てつかせる、銀世界の氷が顕現する。凍らし、冷やし、万物を凍結せよ───クライオジェニックグレイシアッ!!』」


浅野…明らかに、詠唱をパクッとるなぁ。パクリィ魔誕生ってか。厨二病が使うような、よう分からん、言葉も使ってるし。


もっかい、対戦したいなぁ……。そして今度は、りんごジュース漬けに………

いや、今は良いわ。目の前のことに集中せなあかん。


日向の眼前で、炎と氷がぶつかり合い、地面が激しく揺れ動く。若干、浅野の方が押されているが、ほぼ互角と言っても良いだろう。


しかし、次の瞬間、一気に火の勢いが弱まり、あっという間に消えた。そして、全てを氷が覆い尽くす。


突然の出来事にやや困惑しながらもケインは、


「…………負けました。」


と、言った。


*****


その日の帰り道に、浅野に聞いてみた。


「浅野。急に相手側の火を消したけど、何したん?」

「魔力を空間に混じらせて、その範囲の温度をちょっと弄っただけ。お前と手合わせした時の温度操作も同じ原理。」

「へー。なんや、結構、難しいこと考えとるやん。もうちょい簡単か思てたわ。」

「あ、そうや。もっかい手合わせやろ?」

「ええで。次はりんごジュース漬けや。」


対戦を始めること十数分後。

1人の少女が、りんごジュース漬けにされた男子など見えないかのように、軽やかな足取りで家へと向かっていった。

作品を読んでいただきありがとうございました。

続きが気になったり、面白いと思ってくれはりましたら、ブックマークや、評価をしてもらえると、筆者は叫ぶほど喜びます。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ