1. 異世界転移って、人だけやなくて、場所もやったけ!?
おはようさん。ウチは、たこ焼き好きな大阪人の、井上 日向 やで。
今日の朝にな、学校へ行く途中に、すごい地震が起きてん。でも、もう校門は潜ってたから、教室に行ったんや。
そしたら案の定、みーんな来とった。ウチはよう遅刻しとるからな。それでもやっぱり、教室中大騒ぎや。そしたら、先生が入ってきた。
「皆さん、おはよう。突然の質問だが、ファンタジー小説とか、漫画とか、読んだりするか?」
いきなりなんやねん!今、そういう状況ちゃうやろと、ツッコミとうなるけど、我慢や。んー。まぁ、結構、読む方ちゃうかなぁ。
「頻度高めで読む人挙手。」
すると、クラスの殆どが手をあげた。あっ、もちろんそんなかにウチも入っとるで?
「頻度は低いけど読む人挙手。」
今度は、手を挙げてなかった人らも、全員挙げた。
「よし、説明はいらないかな…」
挙手をするのをやめると、何かぶつぶつ呟いている。
「連呼取るぞ〜。浅野」
「はい」
「井上」
「はい」
……暫くして、連呼が終わった。
「この教室にいる皆さん全員に、言わなきゃならないことがある。私達の慣れ親しんできた大阪が、異世界転移した。」
教室が一気に騒々しくなる。彼方此方で沢山の言葉が飛び交った。
「落ち着いて。この世界の、国々に連絡を取ってみた。そしたら、日本語は通じたし、貨幣や紙幣も、使えるそうだ。」
すると佐々木が手を挙げた。
「なんだ?佐々木」
「質問でして………異世界定番の魔法ってあるんすか?」
佐々木の質問に思わず吹き出しそうになる。
「あるにはあるが、能力って言って分かるか?」
クラスの大体が頷く。
「急遽、この世界の神に相談して、授けてもらえるそうだ。良し悪しはあるだろうが、使えば使うほど、強くなるらしい。まぁ、異世界って言うより、パラレルワールドに近いだろう。皆、ステータスと言ってご覧。」
今度は教室のそこら中で、ステータスと呟く声が聞こえた。てか、神様おるんやな。
「『ステータス』」
半信半疑でそう言うと、スマホみたいに目に悪くはなさそうな画面が出てきた。
ヒナタ・イノウエ Lv.1
能力 / トランプ
属性 / 略曜
魔法攻撃力 / 700
物理攻撃力 / 400
防御力 /500
体力 / 400
そしたら、先生が覗き込んで来た。
「……魔法よりのバランス型だな。にしても…トランプか。面白い能力を引き当てたな、井上。」
先生に言われた言葉の意味が分からへんから、とりあえず、頭の片隅に置いとく。
そして、他にも色々話されて、今日は家に帰された。
トランプて、なんに使うんやろ。家の方眺めとったら、浅野が話しかけてきた。
「お前は、どんな能力やったん?」
「トランプやで。」
「……。弱そう」
「おい、今なんて…てか、弱い言うんやったら、お前は何やねん。」
「温度。」
「ふうん。結構、強そうやないか。」
何か負けた気がしてムカつく。
浅野は、幼稚園からの幼馴染や。ほんで、小学1年生の時に、転校して、4年生で戻ってきた。そっからは今の中学2年生まで一緒っていう、転校してた奴。
「そんなに自慢できるんやったら、勝負してみる?」
「いいよ。」
浅野に喧嘩を売ったら、予想に反して、買ってしもた。勝てるかなぁ。
合図は特にない。どっちかが、仕掛ければ、始まる。
「『アブソリュードゼロ』」
先手は浅野やった。中学校の制服では、よう、長居できへん寒さや。でも、動きは鈍るけど、状況を打開することならできる。
浅野も初めてや。集中せんと、この状況を保っていられへんはず。
……でも、技みたいなもんなんて考えとらんな。ポーカーの役でえっか。
「『フルハウス』」
3枚のエースと、2枚のキングが浅野に向かって飛んでいく。
当たる寸前、空気中にあった水蒸気の温度を下げて氷の壁を作りおった。でも、寒さはマシになった。
暫く、緩やかな攻防戦が続いたけど、その内に激しくなってきた。やってるうちに気づいたんやけど、トランプの切れ味、速さ、向きを変えれるらしい。
「『フォーオブアカインド』」
ウチは、浅野の四方を、エースで取り囲む。そして、キッカーを意識の外へ持っていく。
「この技名考えるのに、3分間もかかったんだぜ?『エクストロメリーホットサマー』」
状況は180度回転した。氷点下から、炎天下へ……浅野を倒そうと向かっていた四つのトランプは、焦げて折れ曲がり、地面に落ちた。
日向は完全に遊ばれていた。その様子はまるで、真夏の太陽の下にいる、氷のようだった。
「…そんな言葉が3分だけで思いつくなんて、お前は厨二病なんか?カップラーメンにぶち込んで、3分間待ったろかいッッ!『ロイヤルストレートフラッシュ』」
A K Q J Tのスートの揃ったカードが、目で追うのもやっとな速さで飛んでいく。かなり不利な状況から、カードを5つも生み出したのは、まさに神業と言えるだろう。
きっと、日向は勝利を確信していたはずだ。しかし、対する浅野が自分の周りの温度を急激に上げて、カードを全て焼いた。それと同時に、水蒸気を凍らせた、槍のようなもの作って、ニヤリと笑う。日向は慌てふためいた様子で対策を考える。
その時、一枚のカードが、浅野の首筋に当たっていた。形勢は逆転。互いの表情は入れ替わる。
「……。降参」
浅野はこの状況を打開できる術を持っていなかった。
勝ったことが嬉しいのか、テンションの高い声で日向は、浅野に喋り掛けた。
「お前の敗因は、ウチがフォーオブアカインド使た時に、キッカーまで排除せんかったことやな。」
「チッ、トランプに負けるとか……。」
「合川。ちょっとこっち来て。」
「ん?分かった。」
浅野を待っていたのは……ドデカいカップラーメンだった。
「え……?これ、くれるん?」
「あげるわけないやろ。約束通り、カップラーメンにぶち込んで3分間待ったるわ。」
「は?え、いや、ちょっと待て。あれ本当やったん?え、あ、えと、その、弱そうとか言ってすみませんでした!!!ぎぃぃやあああああああああッッ!!」
そうして、日向は浅野をカップラーメン漬けにしたまま、家に向かったのだった。
作品を読んでいただきありがとうございました。
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(ちゃっかりしててすみません。)