さすがにストーカーっぽいよなぁ
「……腹減ってない?」
「そういえば、豪華な料理を食べてないです。朝から、慌ただしくしてたので、お料理を楽しみにしてたんですけど」
「それは悪かったね。ラーメンでもどう?」
「この格好でですか?」
「いいじゃん! その恰好で」
車がラーメン屋の駐車場へと入って行く。うん十万とするドレスや何十万もする宝飾品を身に纏って脂ぎった床のラーメン屋に行くとは思ってもみなかった。
……ドレスが汚れるわ。
「あっ、ドレスね? いいよ、そんなの。汚れたってかまわないから」
手を取り車から降ろされる。肩を出したドレスだったので、透は着ていたジャケットを着せてくれた。
「さすがに、優香の露出が気になるよね。あぁいう場所では、見せてなんぼでもさ、こういうところでは場違いだし」
「それなら、着替えてからでもよくないですか?」
聞いたそばから、私のお腹が鳴る。ラーメンの匂いに屈したのだ。そんな私を透は笑っているので、睨んでやる。
「まぁ、いいじゃん。ラーメンで腹を満たせば」
手を繋がれたまま、ラーメン屋に入って行く。ちょうど席に空きがあったので、似つかわしくない服装の私たちは、すでにラーメン屋の中にいた人たちの注目を浴びながら、席にむかった。
メニューを見て、透が適当に注文をしていくが、どれもこれも私の好きなものばかりである。料理はすぐに運ばれてくる。店員に「ごゆっくり」と言われながら、着飾っている私を見て去っていった。
「……悪目立ちしすぎ」
透は笑いながら、箸と取り皿を渡してくれ、ラーメンをすすり始めた。私たちは、ラーメンをすすり、唐揚げと餃子の取り合いを始める。着ているものは上等なものでも、いつものやり取りに笑いがこみ上げてくる。
「社長って……私のこと好きなんですか?」
「真紘から聞いたけど、直球だな」
「真紘社長、何か言っていたんですか?」
「告白した報告をされたくらい。それで、気が付いたって感じかなぁ。真紘が探してたのが優香だって知ってたから、内定出したんだけど……あいつ全然気が付かないのな。俺の方が、いつの間にか気になるようになったし。今日は何しているんだろう? とか、叱られてないかとか……、頻繁に優香の部署を見に行ってたわ」
「……何それ、知らない」
「言ってないから。恥ずかしくて言えるか!」
「確かに……」と私が真顔で言うと、「さすがにストーカーっぽいよなぁ」と透は呟いている。話を聞きながら、ストーカーだったことが表に出なくてよかったね? なんて思っていると、あのコーヒー事件が起こったらしい。
「たまたまだよ。あの事件が起こったのは。真紘に優香を社長秘書にって推薦されたけど、それより前から秘書にしようとしてたのは、秘書課にいる連中ならみんな知ってる。気になりすぎて仕事しないから側に置けって言われたんだよ」
透の意外な一面に驚きを隠せない。仕事の鬼ではないかと思うほどの人が、私に気を取られて仕事をしないなんてあるのかと。
真紘とのことをどう思っていたのだろうと気になった。
「真紘社長とのことは、どう思っていたんですか?」
「あぁ、ね。真紘が振られろって思っていたかな。あれから数ヶ月経つけど、いい返事がもらえないんだって言ってたから、心の中ではほくそ笑んでたし、今回の強行策も考えたわけだけど……さて……」
ラーメン屋のテーブル席で向かい合う私たち。私の手を取って、真剣な表情をする透の視線から逃れようとしたが無理そうだ。




