僕のパートナーだよ
……いつもと違うから、社長……が、遠い人みたい。
少しの寂しさを感じながら、私はそっと透の腕に手をやる。それを見た透は頷き、私に合わせて歩いてくれる。
「優香はそのままで大丈夫。秘書になったときに、俺はきちんと教育したからマナーも心配いらないし、ずっと側にいてくれればいい。今日の集まった連中が連中なだけに、嫌味なことも言われることがあるかもしれないけど、できるよね?」
「もちろんです! 私を誰だと思っているのですか?」
「俺の大事なパートナーだ」
ボーイが大きな扉を開けると、眩いくらいの会場、たくさんの人、明らかに上流階級のパーティーに迷い込んだと気おくれしそうになった私に「大丈夫」と優しい声をかけてくれる。私たちが会場へ入って行けば注目された。驚いた表情の人が多い中、嫉妬、憎悪のような背筋が凍るような視線も混ざる。
私はそれらの視線が怖くなり、透の方を見上げると優しく微笑んでいた。私もつられるように微笑めば、頷いていた。
「俺だけ見てればいい。他に目なんてやらなくてもいいんだ。俺が注意しないといけないヤツは、この会場に一人しかいないから」
その一人が気になったが、言われるがままに透に寄り添った。それが私の仕事だから。公私共に支えられていたのは私のほうだとこのとき気が付く。
「両親に挨拶へ行こう。真紘の親もいるけど……いいかな?」
「えぇ、大丈夫です」
真っすぐ進む透についていく。こんな世界で堂々としている姿を想像したこともなかったが、透は本当にこちら側の人なのだと、周りからの期待を集めているのを感じた。
「あら、透。来ていたのね?」
「えぇ、母さん。お久しぶりです。父さんも」
よそよそしい挨拶に違和感を感じながらも、終始にこやかに挨拶をしている。透の父がこちらを見れば、さすがの圧に後ろに下がりそうになったが、透にしっかり支えられているおかげで、それを許さなかった。
「そちらのお嬢さんは? 初めましてよね?」
「あぁ、そうだったね。こちらは、今、僕の秘書の杉崎優香さん。僕のパートナーだよ」
「……パートナー? そんな話、一度も」
「こんな場所でする話ではないからね、また次の機会に」
うまくかわしていく透の方を見上げれば、張り付けたような笑顔。いつも屈託なく笑うことを知っている私は、透の笑顔に違和感を感じた。
……こういう世界なんだ。隙を見せちゃいけないってことね。
「初めまして、藤堂社長。透さんの会社で秘書をさせていただいています杉崎優香と申します。透さんには公私共にお世話になっています」
「ふんっ、透のおこぼれに預かろうってことか?」
透の父親から投げかけられる言葉には棘があった。庇おうとしてくれる透に自分で対処できるとニコリと笑いかける。透が引いてくれたので、私は震えそうな足に力を入れた。信頼してくれた透の足かせになるわけにはいかない。
透の父の前で立っているだけで、その威圧感に負けそうだ。でも、ここで、私が折れるわけにはいかない。今まで、よくしてくれた透のためにもと奮起する。




