薫さんは真紘社長のことが好きだと思います
「私から見た薫さんの話をしても?」
「今日、薫とは少し会っただけだろう?」
「だからこそ見えるものもありますし、女性視点という意味では参考になるんじゃないですか?」
私からの話を遮るように、薫の話を聞きたくなさそうにしている。何故なのかあわからないが、真紘と薫の間には、埋められない大きな溝が存在しているのかもしれない。
「杉崎さんから、薫の話を聞いたとしても、俺の杉崎さんへの気持ちは変わらないよ」
「だったら、いいじゃないですか? 私の雑談と思って、聞いてください」
「わかった」と真紘は言ってくれるので、今日会ったときの薫のことを思い出す。真紘の車の助手席に座る私に対して、明らかに敵意むき出しの余裕のない表情、真紘の前だけで見せる可愛い笑顔、話している間の心配そうな視線。それを隠そうとしているであろう微笑み。そのどれもこれもに身に覚えがある。
……真紘社長なら、そういう女性の機微にも、すぐに気が付きそうなんだけどな。見てみぬふりをしているのか、薫さんを妹と線を引いているからなのか。どのみち、二人の関係にはおせっかいなのかもしれないけど、真紘社長は、私のことを好きだと言ってくれているだもの。
真紘が私を好きだということをにわかには信じられないけど、ただ嬉しかった。
「私の見立てでは……やっぱり、薫さんは真紘社長のことが好きだと思います」
「その心は?」
「私に対する嫉妬や不安、真紘社長と会えた嬉しさとか話せた喜びが見て取れました」
「……嫉妬や不安か。好きな玩具を取られて悔しいみたいなものじゃないのか?」
「違いますよ。私にも身に覚えはありますから……そういうのってわかります」
「そういうのに、杉崎さんは身に覚えがあるんだ? 俺はそっちのほうが聞きたいけど?」
「今はそういう話じゃないです!」
私の話へと誘導されそうになるので、私は慌てて薫の話へ戻した。私が知っている薫は、今日あった数分だけだから、真紘に間違っていると言われればそこまでなのだが、少し考えてくれている。そういう姿を見ると、真紘がモテるというのに頷ける。イケメンはもちろん、優しいうえにきちんと相手のことも考えてくれる。それが、サラっとできるから男女問わず人気があるのだろう。肩書に寄ってくる輩もいるだろうが、私は人柄による人気者だと思う。そこにお調子者の社長を加えれば、絶妙なバランスなのだろう。
「たまに感じる違和感みたいなものは、本当に薫の恋心からだと杉崎さんは思うのか」
「そうです。私の感じたことですけどね。好きな人の前ではよく見せたいと思うのは当然だし、他に異性がいれば嫉妬することもあり得るでしょ?」
「言われてみれば、そうだな。俺もかなり透に当たったからなぁ……。杉崎さんを社長秘書に推したはいいけど、透と四六時中一緒にいるから。おかげで、変な虫はつかなかったみたいだけど」
「私のことはいいんです!」と怒ったものの、優しく微笑まれるとこちらが動揺してしまう。真紘が社長として成功している所以なのかもしれない。
笑顔で有無を言わせぬとは……。




