【プロローグ】
ある暗黒の場所にて、漆黒の紳士服で身を包んだ、赤い瞳と立派な角を持った、高身長の悪魔が洗面台のような場所の鏡で自分の顔を見つめていた。——フード・ディートだ。斬られた手足はしっかり修復されている。
フード・ディートが見つめている鏡はひびが入り、所々欠けている鏡だ。
なぜ、フード・ディートが鏡を見つめているかはただ単に彼がナルシストが入っているわけではない、確かにフード・ディートは自分の顔を気に入っている節はある。しかし、それと同じぐらいに憎み、恨んでもいた。そう、この顔はあいつにそっくりだからだ。
(忌まわしい......。姉上か私だったのだ。あの時選ばれるはずだった者は.......。なぜ、お前なんだ! 姉上や私より身体能力も魔力量も全て、私より劣っているはずなのに! あぁ、最悪だ。気分が悪いときに見ると本当にあいつに見える。お前が、私たちの偉大な母から血を分けた●なんて信じられるか.......!)
フード・ディートの洗面台に置いた手は力がこもる。そしてまた、鏡にひびが入り、フード・ディートの憤慨している表情が細かく砕けた鏡同士で反射して、無数に映る。
すると、背後に気配を感じる。
フード・ディートは「ふーっ」と息を吐き、気持ちを切り替え、
「どうですか?やはり、あの少年はウィズダム魔導学校に入学しましたか?」
侯爵悪魔のフード・ディートはフードを被った背後にいる人物に聞いた。
そのフードを被った人物がほくそ笑むように口を開く。
「えぇ、全ては予定通り」
フードを被った人物の声はねっとりとした女性の声だった。
「えぇ、そうですね」
(まっていたまえよ、少年.......。必ず君を捕まえて、あの方に献上する。そうすれば、今度こそは......!)
フード・ディートはほくそ笑んだ。