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【ハルカ彼方遠イ未来のサキで】  作者: 望月雲の介
【俺の世界 私の異世界編】
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【プロローグ】

【プロローグ】


 異世界 星聖歴せいせいれき543年


 地球からやってきた女子高校生《勇者》とこの世界の救世主《英雄》の二人とそのパーティーによってこの世界の魔王は討伐され、世界に平和が訪れようとしていた。

 しかし、魔王は死に際に勇者と英雄に向かってこの世界のとんでもない事実を告げた。



「この世界はお前ら地球人のエゴによって創り返られ、生み出された………。ならば、お前ら地球人を殺さないと……殺さないとっ、この世界に平和は訪れなだいんだっ!!!!

!!」



 と。

 勇者たちは何を言っているのか分からなかった……。

 すると、傷だらけの魔王の側近の女悪魔や部下たち兵士の魔族たちが静かに集まってきた。

 勇者たちは今まで戦ってきた魔族が続々とやってきて臨戦態勢に入り、剣や武器を構えた。

 しかし、魔王の側近は武器や魔法の詠唱などもしないでゆっくりと魔王のもとにより、魔王の上半身を優しく、そっと起こした。

 そして、私たちに語りかけるように淡々と魔王のことを話し始めた。

 それに続き部下や兵士の魔族たちも魔王のもとに集い、頭にかぶった甲冑を静かに床に置いた。

 ――魔王は優しい人で、慈悲深い人だった……、と。

 魔王の部下や魔族の兵士たちが涙しているのを見て、それが本当のことだと手に取るように分かった。

 また、この世界は勇者たちがいる国がある西の大陸の東部に渡れない海《業死の海》の遥か先に東の大陸が存在する。

 そして、西の大陸と東の大陸が唯一繋がっている場所に魔王城が位置している。

東の大陸には魔王軍率いる魔族にとらわれた人間が蹂躙されていると、勇者と英雄召喚された国の王や貴族が言っていた。だから、その人たちを開放するために彼女らはここまで来たのだ。


 ――しかし違った。


 東の大陸は異なる種族であっても争いがなく、身分の上下がない優しい国、楽園が広

がっていて、魔王はその楽園を守る王ではなく守護するための盾でしかないと……そし

て、西の大陸こそ、何度も些細なことで争い、身分に上下をつけ、ものを奪い、自然を 傷つけ、勝手に人を決めつけ……西の大陸の人こそ真の悪魔だと側近の悪魔が言った………。


 すると、小さな籠を持ち赤いふりふりのワンピースを着た、見た感じ兵士ではない悪魔の少女が魔王城の大きな白の扉を「よいしょ」と開けた。

「魔王さま~~! アップルパイ焼いてきたよ~~~!」

 スキップをしながら現れた少女の動きが硬直したように止まった。

 魔王のありさまを見て、持ってきたアップルパイを地面に落とした。

「魔王……様?」

 少女はこの現実を理解できなかった。

 しかし、少女は勇者や英雄とその一行の手に握っている武器を見て、魔王を殺した奴らだということを察した。

 ふつふつと少女の中から何かが込み上げてきた。

「よくも、よくも魔王さまを………」

 それは、悔しさ、苦しさ、憎み、そして怒りだ。

 そんな視線を向けられ、勇者たちは到底いい気持ちではなかった。

 これが世界を救ったものたちなのだろうかと………。

「…ねぇ、僕……魔王………うまくできたかな? 悲しいな、せっかくの楽園がなくなっちゃう。みんなごめんね………」

 魔王が小さく口を開けて側近に囁いて聞いた。

 魔王の声は勇者たちと戦っていた時との威圧的な声とは違って優しい声だった。

「いえ! いえ! うまくできていました魔王さま! かっこよかったですよ………!」

 側近の悪魔は涙をぬぐいながら微笑んだ。

「そっか……それはよかった…!」

 魔王はにっこりと微笑み……


 塵となって消えた。


 それに続いて勇者も粒子となって消えかけていた。

 無理もなかった。

 自身の体がボロボロになっても、骨が折れ肉が裂けても戦っていた。

 それに自身の中にある魔素も使える魔力ももうからであった。

 ………そして勇者は、

「ごめん……」

 ただその一言を残しこの世から消滅した。


 その後、残された英雄はある国の王となった。

 英雄は不死身だった。だから死ななかった。

 英雄はほかの誰にも魔王からのこの世界の事実を伝えなかった。

 単純に怖かったのだ。

 これまでもらっていた声援が罵倒に、喜びが怒りに変わるのが——。


 だが、ある日英雄も国を他の者に任せ消えてしまった。どこに行ったのかは誰も知ら

ない………。


 そして、この勇者と英雄の物語は終わる。誰も誰も五百年先も知らない本当の物語が——。


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