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96.女子にも人気だからね!


 翔太が北村を保健室に送り届け戻ってくるなり、心配そうな顔をした六花が話しかけてきた。


「ね、北村くんは大丈――」

「葛城くん、北村くんの怪我は!?」

「どんな感じなの、歩けないほど!?」

「結構思いっきりこけてたよね、心配……っ」

「――はわわわっ」


 しかし六花を押しのけるようにして他の女子たちがやってきて、北村の安否を問われる。小柄な六花は揉みくちゃにされ、目を回す。

 思わぬ事態にたじたじになりながらも、保健教諭の言葉を伝える翔太。


「ちょ、ちょっと足を捻っただけだって。冷やして少し安静にしとけば問題ないって」


 するとたちまち彼女たちは「よかったぁ」「もぅ、変に頑張っちゃうから」「でもそういうところが北村くんらしい」と安堵の言葉を零す。

 そして女子たちだけでなく、そば耳を立てていた男子たちも「はぁ……ったく、びっくりした」「豪快にこけたもんな」「無事ならよかったわ」と気を緩ませている。

 翔太が驚いたように目をぱちくりとさせてると、騒ぐ女子たちから抜け出してきた六花が、えへんと胸を張りながらどこか誇らし気に言う。


「北村くん、女子にも人気だからね!」

「そうなのか? 男子の方は運動能力やリーダーシップもあって頼られてるからわかるけど……その何ていうか、女子の方は美桜の件もあってその……」

「ん~、そういう恋愛面的な感じじゃないというか……こう、一途な姿が推せるとかそんな感じ?」

「……はぁ、そういうもんか」

「うん、そういうもの!」


 何故かドヤ顔になる六花。

 わかるようなわからないような、何とも曖昧な返事をする翔太。ただ、北村が皆に愛されていることはわかった。翔太としても、どうにも憎めない相手だ。自然と六花と笑い合う。

 するとそこへ北村が怪我をする原因になってしまった美桜が、少しバツの悪い顔をしながらやってきた。


「ま、とにかく北村くんの分も取り戻すために頑張るよ!」


 そう言って美桜が力こぶを作ってポンッと叩けば、英梨花もやってきて静かに気炎を上げる。


「ん、私も!」

「わ、私だって!」


 そして六花も後に続けば、近くで聞いていたクラスメイトたちも、「うんうん、うちらも気合を入れよ!」「あれだけじゃ別に勝敗は決まらないし!」「戻ってきた北村をびっくりさせてやろうぜ!」「北村くんの敵討ちだ~っ!」と盛り上がっていく。

 翔太も内心、(仇ってなると美桜になっちゃうよな)と苦笑しつつも、心が高揚するのを感じるのだった。



 そんなアクシデントがあったものの、翔太たちのクラスは一丸となって競技に取り組んでいく。

 特に女子の方はムードメーカーである美桜や六花に牽引され、皆のやる気と力を引き出し、各所で縦横無尽の活躍を見せる。

 その中でも意外な形で活躍したのは英梨花だ。

 英梨花自身はインドア派で運動神経があまりよくないものの、玉入れや棒倒しといった戦略が求められるもの、また障害物競走や大玉転がしといったゲーム要素があるものには指示を出していた。

 その指示はあまりに的確で、女子だけでなく男子からも意見に求められるようになるほど、皆に一目置かれるように。

 そして本人もまた、美桜との二人三脚で見事な結果を出し、まさに陰の軍師。立役者。

 特に文化系の人たちからも英梨花のように貢献できるのだと意見を述べるようになり、クラスの交流が活発に。

 とはいえ必死なのは他の色の組も同じ。

 一進一退を繰り返し、どこが勝つか分からない状態のまま、お昼を迎えた。



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