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ぼくらのヒーロー  作者: 六郎ノベルス
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プロローグ

初めまして、六郎ノベルスです。

人生初の執筆小説になります。楽しんで頂けたら幸いです。

 20XX年 日本・某所

 人の往来が激しい都市である其処では、多くの人の足音や、話し声が合奏曲のように喧騒を奏でていた。

――突如、爆発音が辺りに響いた。その刹那、規則的に鳴り響いていた足音と話し声が奏でる喧騒のアンサンブルは逃げ惑う人々の不規則な足音と、悲鳴により様変わりした。

 爆発音の発生源では、異様な光景が広がっていた。其処では、膨れ上がった爆煙のように異常発達した体躯に、血管がマスクメロンの如く浮かび上がった人型のバケモノが理性を感じさせない様子で暴れまわっていた。そのバケモノは、大災害のようにアスファルトだろうと、車だろうと、一般人だろうと構わず破壊して回っていた。

 人々が絶望の淵に立たされていたその時、自動小銃の音が鳴り響いた。それと同時にバケモノが無数の弾丸をその身に浴びて破壊行為の歩みを止めた。バケモノの足を止めたのはロボットの様なスーツを纏った10人の集団であった。その内の5人が自動小銃をバケモノに向けて乱射し、残りの5人がサーベルの様な武器を構え、訓練された連携を発揮しながらバケモノを斬りつけていった。どうやら、その集団はバケモノを退治しに来た何らかの部隊のようだ。


「皆さん、我々が来たからにはもう安心です! だから、早く避難してください!」

 

 隊員の1人が民衆に向かって声を上げた。人々は状況を完全に呑み込めてはいなかったが、助けが来たことを察して、一目散に駆け出した。中には、その場に留まり携帯電話で撮ろうとしている者もいたが、隊員の一人が声を荒げ追い払った。

 人払いが済み、隊員達とバケモノだけになると、其処は戦場へと変わった。凄まじい力で暴れるバケモノに対して、ロボットスーツを着た隊員達は息の合った陣形戦術で応戦していく。あまりの猛攻にバケモノが膝をつくと、その瞬間を狙っていた1人の隊員がサーベルを構えながら飛び上がり、首を切り落とした。バケモノは切り口からおびただしい量の血を吹き出し、巨体を地に伏せた。


「やったか?」

「ああ、我々の勝利だ!」

 

 銃を構えた隊員の一人が、バケモノにとどめを差した隊員に問いかけた。問われた隊員はサーベルに付いた鮮血を振り払いながら堂々とした口調で答えた。


      ○


 後日、政府が緊急の記者会見を開いた。大勢の記者団の前に姿を現したのは、防衛大臣だった。大臣は挨拶を済ませると、バケモノの一件で犠牲になった人々への哀悼の言葉を発した。


「――まず、今回の件で多くの方が犠牲となったことを心からお詫び申し上げます。我々の対応がもっと迅速であれば防げたはずでした。忸怩たる思いです」

 

 防衛大臣が記者団の前で深々と頭を下げた。その姿を収めようと一斉にフラッシュが焚かれた。


「大臣、あの恐ろしいバケモノは一体何なのですか?」

「あのバケモノと戦っていた人達は何者なのですか?」

「政府はあのバケモノが現れることを知っていたのですか?」


 矢継ぎ早に記者団から質問が飛んできた。防衛大臣は、目を閉じて一人一人の質問に耳を傾けていた。


「お答えしましょう。先ずは――」


 防衛大臣からの回答を要約すると


“政府は、(くだん)のバケモノを『怪人』、ソレが起こす人的被害を『怪人災害』と正式に定めた”

“怪人は、人為的に創られたものであり、それを用いて国家転覆を企む者がいる”

“政府はその事を予め察知していて、水面下で対策を進めていた”

“その一環として国家機関『怪人災害対策本部』を設立した”

“怪人と戦っていた者たちは対策本部直属部隊の隊員達である”

“隊員達は『ヒーロー』と呼称する”

“ヒーロー達が纏っていた武装は『SUIT(スーツ)』と呼ばれ、とある1人の天才発明家が主体となって開発された”


ということであった。

 この政府からの発表に世間からは疑問と批判の声が上がった。「知っていたのに国民に黙っていたのか」、「犠牲になった人々の無念はどうなるんだ」、「対策のためとはいえ政府が武器の開発を承認していたというのか」などといったものだ。

 しかし、次第にそういった声を上げる者は少なくなっていった。それ以降、怪人災害が立て続けに起こり、その度に政府とヒーロー達が迅速に対応したことで、批判よりも賞賛の声が多く上がるようになったからだ。さらに、政府は怪人災害発生時の避難・対策に関するマニュアルを自治体に発布し、怪人災害が発生した際に人々にそのことを報せるための警報器(アラート)を速やかに整備した。その甲斐あって人々は怪人災害が発生しても落ち着いて対応できるようになった。

 何時しか人々は、地震や台風と同じように怪人達を身近に起こりうる災害として捉えるようになった。


 ――しかし、人々は知らなかった。怪人の出現に備えていたのは政府だけでは無いという事を。


 場所は、とある廃研究所。そこでは、15人の若者たちが集まって怪しげな活動を行っていた。”ヒーロー達が着用していた『SUIT(スーツ)』によく似たモノを製造している者達”、”怪しげな薬品を研究している者達”、”ひたすらに己の身体を鍛えている者達”。それぞれ、行っていることがバラバラな集団が薄暗い建物内で一種異様な光景を演出していた。


「諸君、万事は順調か?」

『はい! 滞りなく進んでいます!』


 身体を鍛えている集団にいた1人の男が鍛錬を中断し、施設内アナウンスで他の者達に声を掛けた。すると、統率の取れた返事が建物内に響き渡った。


「そうか、それならば良い。――諸君、やはり世界は怪人たちの登場により混沌という暗い闇に覆われてしまった……。だからこそ我々が救いの光で照らすのだ! この計画を実行に移すことが出来れば、それが可能になる!! そして、我々が真の英雄になるのだ!!」


 男は、力強くそう告げると『オォッ!!』と、その場に居た者達から建物を震わせるような力強い返事が返ってきた。どうやら男は、この集団のリーダー格のようだ。

 彼らこそが、人知れず政府と同じように怪人の出現に備えていた者達である。15歳前後の少年達で構成されたその組織の名は――“少年英雄団”――彼らが織りなす物語は輝かしき英雄譚か、それとも、目も当てられないほど悲惨な残酷劇(グラン・ギニョール)か。


――今、物 語 の 幕 が 上 が る。

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