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1.貴方はこの国にいてはいけません。

「エンジュリオス・リリオンメディチ・ペルセフォネ! 今日から貴様を王室からの除名及び、我が国――聖ペルセフォネ王国から永久追放処分と処す!!!」





王国の象徴である大きな城の中。


高い壇上に設置された玉座に座る国王ランダーから見下ろされる王子ジュリオは、泣きながら土下座をして慈悲を求めていた。





「お、おお……お待ちくださいお父様っ!!! お慈悲を……何卒お慈悲を!!!」





ちなみに、エンジュリオスというのはジュリオの本名だ。

正式な名前は、エンジュリオス・リリオンメディチ・ペルセフォネである。



そんな大層な名を持つ王子ジュリオは無才のバカ王子と呼ばれていた。


勉学も運動も魔法も何をさせてもダメであり、どこに出しても恥ずかしい立派なバカ王子として子供の頃から毎日毎日蔑まれていた。





「お許しくださいお父様!! この城から追放なんてされたら、僕は生きていけません!」





ジュリオは、白い服がよく似合う、甘ったるい顔立ちの美男子であった。



自慢の長く美しい金髪は、汗ばんだ白い頬に貼り付き乱れており、長い睫毛に縁取られたくっきり二重の若草色の目は悲壮に染まっている。


体も華奢で筋肉の気配すら感じられない。恐らく、魔物どころか野良猫にすら勝てないだろう。





「慈悲だと? その軽い頭が体に繋がっているだけでも有り難く思わぬか。大聖女デメテルの息子でありながら、治癒魔法もろくに扱えず、王家の品位を落とす行為ばかりを繰り返す恥晒しが……! 追放が不服ならば、いっそここで死ぬか?」





ランダーは高い壇上に設置された玉座にふんぞりかえり、泣きながら土下座をして駄々をこねるジュリオをゴミを見る目で見下ろしている。



その冷たい表情は、息子を見る父親の顔とは言えない。





「……死ぬって……そんな」





ジュリオの震えた声に、聴衆が意地悪そうにクスクスと笑う。



玉座の間には、ジュリオの追放と言う名の公開処刑を一目見るため、様々な人間たちが集まっていた。


王族に召使いに兵士に文官達に、娯楽を求めた暇な貴族達や、バカ王子が遂に追放されると言う特ダネを取材に来た新聞記者共が、ジュリオの追放公開処刑を見物に来たのである。趣味の悪い見世物であった。 



ジュリオが、必死に追放処分を許してもらおうと、みっともなく泣いて土下座をしていた――――その時である。





「往生際が悪いですよ。兄上」



「そうですわ殿下。お潔く追放を受け入れなさったらよろしいのではありませんこと?」



「ルテミス!? それに、ネネカまで」




ジュリオの腹違いの弟であるルテミス王子と、その婚約者である聖女ネネカが、冷たい目をしてジュリオを見下ろしていた。




「ルテミス……」




ジュリオは腹違いの弟ルテミスの涼しく上品な顔を見上げた。

明るい黒髪の短髪が爽やかな、優等生的な雰囲気を持つ美青年である。

黒縁眼鏡をかけた顔は生真面目そうで、ジュリオとは違うタイプの美男子であった。

バカ王子のジュリオとは真逆に、何をさせても完璧にこなせてしまう、ランダーのお気に入りの息子である。





「兄上、貴方はこの国にいてはいけません。――早く、出て行って下さい」




愛する弟にそう言われてしまえば、ジュリオはもう何も言えない。



ルテミスは床に座り込んで涙目になっているジュリオを暗い目で見下ろしており、そんなルテミスの背後でネネカは不気味な程に美しい微笑みを浮かべていた。


ご拝読いただきありがとうございますー!ジュリオの物語にお付き合い頂けますと幸いです。

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