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逆行転生した悪役令嬢だそうですけれど、反省なんてしてやりませんわ!  作者: 九重


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禁止されている? あら、私はされていませんわ

いつも皆さまから誤字報告いただき、たいへん助かっています。

ありがとうございます。

文中のフローティングについてフローリングではないかというご報告をいただきました。

フローティングとは宙に浮いていることで、この場合浮き階段を表しています。

誤字ではないためそのままにしています。

ご了承ください。

 四阿から少し奥に入ったところに噴水があり、それを迂回して五分ほど歩いた場所に一階部分がガラス張りのアトリウムとなっている塔がある。

 中は温室で、濃い緑の植物と極彩色の花がガラス越しでもよく見えた。

 塔は五階建て。見上げるような高さで、らせん階段を上った最上階は見晴らしのよいテラスになっている、はず。


(たしか、あと五年くらい後に上ってみたことがあったのよね)


 そう。今ではない、五年後だ。


 逆行転生をする以前、五歳ではじめてここにきたときは、アーサーと二人アトリウム内の椅子にずっと座っていた。

護衛としてついてきていた騎士は外に待たせたまま、迎えがくるまで一切会話もなく過ごしたのだ。

アーサーはアトリウム内の書架から図書を取り出し読んでいたし、私は、姿勢正しく座っていた――――と見せかけて、実は目を開けたまま眠っていた。

 私の、数多い特技の一つである。


 今回も同じようにアトリウム内に入り、本を読みはじめようとしたアーサーに、私は笑顔で話しかけた。


「殿下、この上にいってみませんこと?」


 右手人差し指を一本立てて、らせん階段の上を指さす。

 アーサーは、不機嫌そうに眉をひそめた。


「塔は高いし、階段は危険だ。上ってはいけないと言われている」


 私は、クスリと笑ってみせる。


「それは、どなたに?」


「…………ニーナだ」


 ニーナとはアーサーの乳母。王子第一主義の口うるさいオバサンだ。

当然のごとく私を嫌っている。


「乳母は、ここにはいませんわ」


「いないからといって、言いつけを破っていいわけではない」


 ホント、クソ真面目な面白みのない王子だこと。


「では、殿下はここにいらしてください。私一人で上りますわ」


 サッとドレスの裾を翻し、私は、さっさと階段へと向かった。


「待て! 禁止されていると言っただろう!」


「私は、されていませんわ」


「危険だ!」


「屋内の階段を上ることの“どこ”が?」


 私は、馬鹿にしたように笑った。


 ――――とはいえ、実際には危険である。

 丸い塔の壁に設置された階段はフローティング。段板を支えるささら桁がないタイプで、強度は十分なのだが壁から離れるほどに揺れ、かなりのスリルとサスペンスを与えてくれる仕様だ。


 ここに、侍従や騎士たちがいれば、間違いなく止められただろう。

 しかし幸いにして、彼らは王子の命令で外にいる。

 アトリウムはガラス張りでも、植物だらけの内部には死角がたくさんあって、私たちの姿が多少見えなくとも不審には思われない。


 つまり、今この場には、階段を上ることの危険を指摘して、私の行動を制限する大人は誰もいないのだ。


(でも、いつ何時入ってくるかわからないから、実行するなら早いほうがいいわよね?)


 私は、階段の一段目に足をかけた。


「ダメだと言っている!」


「そうですか」


 かまわず上りはじめる。

 階段の蹴上はそれほど高くなく、五歳の子どもでもタンタンと上っていける程度だった。

 これなら、なんとかいけるはず。

 五階分を上るのかと思えば、ちょっとうんざりするけれど、まあやってやれないことではないだろう。



「…………クソッ!」


 私を見ていたアーサーが、悪態をつきながら後から階段を上ってきた。

 しめしめと、私は、ほくそ笑む。


「あら? 殿下はこなくていいんですよ」


「お前を一人で上らせられるか!」


「私が勝手にしていることなので、どうぞおかまいなく。別に階段が上れなくとも、『男のくせに怖がりだ』とか『弱虫だ』とか、思いませんわ」


「絶対、思っているだろう!」


 五歳の男の子は、扱いやすい。

 ちょっと煽ってやれば、思うがままだ。

 その後、私とアーサーは、黙ってひたすら階段を上り続けた。

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