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逆行転生した悪役令嬢だそうですけれど、反省なんてしてやりませんわ!  作者: 九重


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14/20

馬鹿ね……おかしすぎて、泣けてくるわ

「え?」


 頭からバサリと何かを被せられ、その何かごと強く押さえつけられる。

 フワッと香ったのは、アーサーが好んでつける香水の匂いだ。

 子どもとはいえ、貴族が香水を使うのはエチケットの一つで、王族ともなれば専属の調香師が本人のイメージに合った香りを創作する。


 つまり私は、認めたくはないのだが、アーサーに庇われているのだった。


「グッ」という間違いようのないアーサーの呻き声が聞こえて、私はその事実を確信する。


「アーサー! 離して!」


「アマーリア……無事か?」


「無事よ! 無事に決まっているでしょう! いいから、離しなさい!!」


 叫びながら私は身を捩った。

 呆気なく解放されたのは、アーサーの力が弱くなっているためなのか?



「アーサー!」



 果たして、目の前には血塗れになったアーサーがいた。


「何をやっているのよ! 誰も助けてほしいなんて言ってないわ!」


 思わず私は怒鳴りつける。

 アーサーは、力なく笑った。


「俺はお前の婚約者だからな。婚約者を庇うのは、普通だろう?」



 普通じゃなかったわよ!

 少なくとも、以前のあなたはね!!



 怒鳴りつけたい思いを堪えて、口を閉じる。

 同時に、わかってしまった。

 目の前のアーサーが、既に逆行転生前のアーサーでは“ない”のだということが。


 “あの男”なら、口ではなんだかんだと偉そうなことを言っておきながら、こういう場面では一目散に逃げ出したことだろう。


 少なくとも、“私”を庇うために怪我などしないに違いない!


「…………逃げろ、アマーリア」


 ボロボロの体で血を流しながら、こんな風に私の前に立とうともしなかった。


「馬鹿ね。アーサー」



 本来の自分をねじ曲げられて――――

 以前なら、見向きもしなかった私を助けて――――

 傷だらけになって、なおも私を助けようとするなんて――――



(きっと、逆行転生前のあなたが、このことを知ったなら、地団駄踏んで悔しがることでしょうね)


 おかしすぎて、泣けてくる。

 アーサーの姿が涙で滲んで…………私も、自分が以前の自分ではなくなっているのだと、気づいた。


 そうでなければ、目の前のボロボロのアーサーに、“ときめく”なんてあり得ない!

 カッコイイとか、ステキだとか、思えるなんて…………腹立つ!!



 私は、パン! と自分の頬を勢いよく叩いた。

 スックと立ち上がり、素早く周囲を観察、状況を判断する。


 私とアーサーの目の前には、まだ光を帯びたままの、たぶんドラゴンの幼体がいた。

 トカゲに似た黒い体と二枚の小さな羽、頭に瘤のような小さな突起があるから、間違いないだろう。

 体長はおよそ一メートルほど。

 成長すれば十メートルだが、赤子であればこの程度で不思議はない。


 私の背後には、あんぐりと口を開けた間抜け面のマリアがいた。

 右隣には、イアン。こちらも呆然として固まっている。


 ドラゴンは、まだ意識が覚醒していないようで、生まれたてのひな鳥のように口を大きく開けたまま、羽をパタパタ動かしている。


 この状況を瞬時に見て取った私は、右手をイアンの方に伸ばした。



「イアン! 私に剣を! ドラゴンスレイヤーを渡しなさい!」


 日頃の調教の成果か、イアンは条件反射で私の言葉に従う。

 先ほど自分が落とした剣を拾い、柄の方を私に向かって差し出した。


 即座に受け取った私は、ドラゴンスレイヤーの剣を両手に持って、大上段に振り上げる!

 ドン! と足でアーサーを突き飛ばすと、ドラゴンの前に躍り出た。



「アマーリア!」



 呼びかける声に答える暇はない。



「喰らいなさい!!」



 そのまま剣を、ドラゴンの真っ赤な口の中へ突き刺した!


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