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反省? それ美味しいの?

お久しぶりです。

そう長くはならないお話になる予定です。

お付き合いいただけたら嬉しいです!

 昨今のロマンス小説の流行(はやり)は、逆行転生なのだそうだ。

 処刑されたり暗殺されたりと、非業の死を遂げた主人公が、気づけば子ども時代に戻っていて、そこから人生をやり直す。

 以前の失敗した記憶を生かし、今度は大成功。

 幸せになるというのが王道ストーリーだ。


 しかし、ここで考えていただきたい。

 そんな死に方をする人間に、まともな奴がいるだろうか?

 大多数は、処刑されても文句も言えないような悪人である可能性が大きい。


(少なくとも、私はそうだわ)


 私――――アマーリア・ユーギン公爵令嬢は、そう思った。


 どうやら、私は、そういったロマンス小説の主人公らしい。

 聖女を虐げ暗殺を謀った罪で公開処刑。首チョンパされたのに、気づけば子ども時代に戻っていたからだ。

 ここで、思い出した事実に憤り復讐でも誓えば、立派な物語の主人公のできあがりだ。


 しかし、私は、処刑されたことに対しては憤ることはもちろん、抗議するつもりもさらさらなかった。

 だって、すべて事実だったのだから。


 自分で言うのもなんなのだが、私は、最悪の性悪令嬢だった。

 性格は我儘で傲慢。

 己の幸せのためなら他人を陥れるなんて当たり前。

 目的のためなら手段を選ばず、汚い手でもなんでも、使えるものは使う。


(私に対する告発に冤罪は一つもなかったもの。むしろ、発覚したのはそれだけなの? って、呆れたくらいだわ。ホント、聖女も王子も甘ちゃんなんだから)


 私は、声に出さずに嘲笑う。

 鏡が見えないので確認できないが、きっと幼女にはとても見えない冷笑を浮かべているに違いない。


(まったく、ひとりで鏡台の椅子にも座れないくらい小さな子どもになるなんて、思ってもみなかったわ)


 私は、ふくふくとした子どもの手を握ったり開いたりして確認する。

 どうやら本当に間違いなく逆行転生したらしい。


(今の私は、三歳から五歳くらいの間かしら? 部屋に見覚えがあるから、アマーリア(自分)なのは、ほぼ間違いないわよね? まあ、何歳に戻ろうとも反省する気になんて全然なれないんだけれど)


 そんなことができるくらいなら、死ぬ前にとっくに反省している。

 甘ちゃんの聖女や王子は、私を許したくてしかたなかったみたいだから、嘘でも一言謝れば、処刑から修道院送りくらいには簡単に減刑できただろう。


(謝るなんて死んでもゴメンだわ)


 結果、本当に死んでしまった。

 反省できなかったから殺されたのだ。

 自明の理である。


 こんな私がロマンス小説の主人公みたいに、ハッピーエンドになるなんて、お笑いだ。

 人間の性格や性根なんて、そんなに簡単に変えられない。

 つまり、私は相変わらず性悪令嬢のままなのだった。


(とはいえ、このまま、また同じ結末になるのも面白くないわよね? 首チョンパは一回経験すれば、十分だわ。まあ、だからって、処刑回避のために、前の人生の行いを悔い改められるかって聞かれたら、できないんだけれど)


 なんで私が変わらなければならないのだ?

 そんな面倒くさいこと、したくない。

 それができるくらいなら、死ぬ前にとっくに――――ああ、いや、これはさっきも言ったわ。


 だったら、どうするのかという話だが。


(自分が変わるのがイヤならば、周囲を変える以外にないんじゃないかしら? みんな、私と同じところまで堕としてやればいいのよね?)


 我ながら、いいことを思いついた。


 ――――品行方正で、正義面していた王子も。

 ――――慈悲深くお優しい聖女も。

 ――――厳格でお堅い騎士団長も。

 ――――そして、彼らに同調して私を断罪した人間たちも。


 みんなみんな、私と同じ悪者にしてしまえばいいのだ。


(幸い王子や聖女は、まだ子どもだもの。性格を捻じ曲げてやるのなんて簡単だわ。悪事には絶対手を染めませんって顔をしていた聖人君子たちを、私と同じ穴の(むじな)にするのは、とっても楽しそう)


 別に頼んだわけでもないけれど、せっかく逆行転生したのだ。

 それくらいの手間ならかけてやっても惜しくない。



(いったいどんな風に変わってくれるのかしら? 将来見物(みもの)よね)



 私は、クスクスといつまでも上機嫌に笑っていた。

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