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 先輩はもう覚えていないだろう。僕達は中学時代に一度だけ、対戦したことがある。

 先輩と深川は全国も目指せるチームで、僕は地元でもわりかし弱いチームの所属だった。

 僕達に差がついたのは決しておかしなことではなく、順当に才能の差でしかなかった。

 確か、何でもない地元の小さな大会だったはずだ。普段なら先輩達のチームは絶対に出場しないのに、その年に限って、普段は見向きもしない大会へやってきた。そして、その記念すべき第一回戦の外れくじを引いたのが、他でもない僕達のチームだった。

 世の中には案外、どうしようもないことが転がっているものだ。もちろんそれはその時も同じで、先頭打者にホームランを浴び、次の打者にも、その次の打者にもヒットを打たれた結果、マウンドに内野陣と捕手が集まり、しょぼくれた顔を突き合わせた。

「どうする?」

 僕が聞くと、冴えない顔をした二塁手が、次のバッターである藤村先輩を見ながら、能天気にぼやいた。

「昼はチャーシュー丼が食いたい」

「あ、駅前にラーメン屋ができたらしいよ」

 食いしん坊の三塁手がすかさず応じる。

 僕が言った、どうする? は、この状況をどう切り抜けるか、ということであって、この試合のあとのことではなかったのだが、言えるような雰囲気ではなかった。僕達は同じ時間を楽しみ、日々を浪費できれば、それがサッカーであっても、バスケットボールであっても、たいして文句を言わなかっただろう。

 大半は強制的に野球をやらされているだけで、僅かな人間だけが自主的にこのチームに入ってきた、というだけなのだ。僕は少数派で、孤独だった。自主的に入ってくる奴はみんな素人で、自分の実力に見合っているからここへ来るのだ。僕みたいな経験者は、本来ならば、好き好んでこんな場所へはやってこない。

 何度感じたかも分からない失望の味に顔をしかめながら、僕も何とか表面だけは取り繕おうとぎこちなく笑った。

「じゃ、早く終わるように頑張ってみるよ」

 この場合、早く終わるというのはコールドゲーム、点差が開きすぎたことによる強制終了を意味するわけだ。

 大会は、短期間で強行的に実施されるから、一回戦で負けた僕達は午前の割と早い段階で労苦から解放され、先輩達のチームは次の試合のため、すぐさま会場を移動していった。

 その遠ざかっていく背中を見ながら、僕は仲間達の声も聞かずに、じっと立ち尽くした。

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