第八話 少女のピンチで怒りが爆発したロリコン大学生
「おい、お前!」
田辺は無意識に立ち上がった。
それはまるで憤りで自分の人格を失ったか、それとも何かに取り憑かれたようなそんな感覚だった。
そして、燃え盛る赤い炎が俺の身体に纏わり付く。
「ほほう、まだ立ち上がれるとは。」
悪魔はそれに興味を持ち始めたのかルージュちゃんを食べるのを中断し、再び戦闘準備に入った。
「ケホッ、ケホッ…。」
悪魔から解放されたルージュちゃんは急いで離れて木の物影に入る。
「お兄ちゃん…。」
俺はルージュちゃんが助かったのを確認できたのか、これで手加減せずに戦えると思い剣を抜き始めた。
「貴様だけは、絶対に許さない。」
そこに奥底に眠る力が暴発したような悪魔よりも鋭い殺気が放たれ、まるで別人かのようだった。
「ハハッ、ハハハハハッ! これは素晴らしい! こんな人間が他にもいたとは、やはり貴方は面白い! ますます食べ応えがありそうですね。」
こんな状況でも悪魔は楽しんでいるかのようだった。
「ならば今度こそ、確実に貴方を喰い殺してあげましょう!」
シュ!
そう言って音速のように真正面から俺を攻める悪魔、そしてその首を跳ね飛ばすかのように鋭い爪で狙いをつける。
悪魔はそれで確実に取れたっと思っていただろう。だが…、
ガキン!
!!
俺は悪魔の爪の攻撃を予測できたのか目を向けず、その爪を剣で受け止めたのだ。
悪魔は驚いたのか一旦距離を離れる。
「はは、これは凄い! 私の攻撃を伏せる事が出来るとは。」
未だに余裕の笑みを見せる悪魔だったが、内心は先程の受け止めにとても疑問に思っていたのだ。
さっきとはまるで違う雰囲気、まるで別人かのようだ。あの纏わり付く炎といい彼に一体何が…。
そう思っていたその時、
スッ!
!!
悪魔は田辺に間合いを詰められた事に気付かず、剣を振り下ろされるが運良くギリギリに横へと避けた。
だがそのせいで、悪魔の顔に擦り傷がつきそれによって怒り狂う。
「よくも…この私に傷を付けやがって!」
今までの紳士のような口調や笑みは消え、余りの怒りにイケメンとは程遠い鬼のような顔になっていたのだ。
そしてその悪魔は儀式でも行うかのような両手でクロスするポーズをとる。
「大人しく私に喰われればいいものを、貴様が私を怒らせたからには…圧倒的な絶望の死を送らせてやる!」
そう言って悪魔は自分の中にある本来の力を発揮ができるよう集中し始める。
だが、田辺は余裕であるかのようにその隙をつかず呆然としていた。
「魔力解放!」
グワー!
悪魔は腹の奥底から光を宿し、その瞬間その悪魔の原型は消えていきつつだんだん大きくなっていた。
それはまるで頭に角が二本生えて翼を持つ鬼のような顔、本物の悪魔のようである。
「本来私は偵察のつもりでここまでする必要はなかったのだが、私にプライドを傷つられた貴様だけは何としても殺すべきだと本能が訴えかけているのだ!」
殺気と怒りによる気迫で目の前の相手に放ってはいるが、田辺はそれを平気そうに立っていた。
まるで、余裕で勝てるかのような表情である。
悪魔はそれも気に入らなかったのか怒りに任せて思いっきり殴りかかってきた。
ズドン!
その拳は地面にヒビを入れ地震を起こすかのような威力だった。
しかし、田辺はそれを避け空中へと飛び跳ねた。
これはチャンスだと思った悪魔はそれを追いかけようと自身の翼で飛び、そのまま殴りかかる。何故なら、空中では身動きが取れないため悪魔にとっては絶好の的になると思ったからだ。
だが、その機会も虚しく田辺はその振りかかる拳を簡単に避けたのだ。
悪魔はそれを見て驚き呆然としてしまった。
「バ、バカな。 私の拳を避けるだと!? まさかこいつ、『空中浮遊』のスキルを持っているのか? そんな素振り、一度もなかったはずだが…。」
これは本当に殺すべきだと思った悪魔は大きな口を開き何かを解き放そうとしていた。
「ディアブルスコノキャノン!(悪魔の殺人破壊砲)」
グワーーーーーー!
放たれた凄まじい破壊砲は田辺に向かって直撃する。この技は放つ度にその体力を大幅に減らすためよっぽどの事がない限り使わない悪魔特有の必殺技なのである。
そして、その技は放つ範囲が広く威力は絶大なため例え空中浮遊が使えてもそれを避ける事は難しい。
衝突による煙で田辺の姿が確認できなかったがその技によっぽど自信を持ったのか、悪魔はその技で疲れ果て休もうと地面に降りたとうした。
すると…、
!!
何と、田辺はあの攻撃を受けたにも関わらず無傷でいられたのだ。そして、彼の左手に宿していた光の壁のようなものが放たられていたのである。
恐らく、この壁で悪魔が放った技の直前に発動させ防いだのであろう。
悪魔はその壁を見てまたも驚きを隠せない状況だった。
「まさか、あれは…『完全魔力防壁』⁉︎ バカな、あれは上位悪魔でも習得が難しいとされている最高上位スキルだぞ! こんな人間が何故そのようなものを…。」
その瞬間、悪魔はその人間に対し数々の予想がつかない出来事から先程の怒りが恐怖へと移り変わったのだ。
田辺はその壁を解除した後、ゆっくりと悪魔に近づいていく。
「ヒッ!!」
無様な声を出してビビる程の恐怖、もしかしたら、とんでもない人間に勝負を挑んできたのではないかと後悔し始める。
だが、そのような恐怖心を認めたくなかったのか、自分の強さによるプライドで塗り替え力任せに自慢の爪で切り裂こうとしていた。
「ぐああああああー!」
認めない、認めないぞー! 私は上位悪魔『ピソ・キリオス』だぞ!こんな下等生物に負ける事等あってはならないのだ!
そのような執念を持ちつつ、その恐怖を忘れるかのように田辺に間合いを詰め始める。
しかし、
ズザン!
彼はその振りかざす腕を意図も簡単に切り落とした。