第五話 緊急事態! 再び聖女の森へと入るロリコン大学生
数日前
「最近、聖女様の森で悪魔が住み着いたって噂聞いた事ある?」
それは皆んなで食事していた時の事だった。
「悪魔? しかも聖女様の森って俺とルージュちゃんが会った場所じゃないか。」
俺が確認するかのようにルージュちゃんの方へ向く。
「うん、そうだよ! でも何で悪魔がそこにお母さん?」
「さぁ、詳しくは分からないけどとにかく暫くの間はその森に入らない事ね。」
「え~そんな…。」
残念がってるルージュちゃんも可愛い!
「そもそも、悪魔って何ですか?」
「あぁ、そういえば記憶喪失して何も知らなかったんだったね。悪魔は私達の住んでる場所から遥か遠い島国に住んでいる種族で私達人間とは本来敵対関係みたいだから、よっぽどの事がない限り余りこっちには来ないはずなのだけど。」
悪魔か、実際に見た事がない。一体どんな姿をしているのだろう?
そういえば悪魔にも幼女っているのかな? コウモリのような羽が生えて小さい角と短い尻尾が生えているそんな可愛い幼女がいると思うとたまりませんな~。 ぐへへへ
「どうしたのお兄ちゃん?」
「あ、いや何でもない。それよりも悪魔ってそんなに恐ろしいものなのか?」
「恐ろしいもの何て程じゃないよお兄ちゃん!
悪魔は私達を食べ物としか見てなくて、中には痛ぶり尽くしてから食べる最悪な種族なんだよ!」
そんなに凶暴なのか…。余り関わりたくない。
そして、その悪魔を再現するかのようにジェスチャーするルージュちゃん、可愛い!
「分かったら聖女様の森には絶対に行かない事ね。」
「…は~い。」
言いつけを守ってるけど未だに納得出来ない雰囲気を出すルージュちゃんもまた可愛い!
そして、現在
異世界転生初の緊急事態が発生した。
「ルージュちゃんが聖女様の森へ行った⁉︎ 」
俺が質問するとフライネさんは今でも泣きそうな顔で答える。
「あの子、学校の帰りにどうしても聖女様の森へ行くって聞かないものだから無理にでも止めようとしたのだけれどいう事聞かなくて…。」
「捜索とかは?」
「2時間ぐらい前に国の兵士達や冒険者が捜索に出たのだけれど、全然帰ってこなくて私…。」
「まさか…。」
嫌な予感をした俺は咄嗟にその森へと走って行った。
ルージュちゃんが森へ行ったきり帰ってこない。捜索隊の連絡も来ず、もしかしたらあの悪魔によって…いや、余り考えるのはよそう。今は取ルージュちゃんを助けるのが先決だ。
例え恐ろしい悪魔だろうと、駆け出し冒険者だろうと幼女を黙って待つ俺ではないからな。
森に着いて中に入ると、そこは俺とルージュちゃんが出会った頃に比べて木が何本かなぎ倒されていき随分と荒れ果てていた。
そして、微かに異臭が漂ってくる。
恐らくあの悪魔の仕業なのだろう。
恐る恐る中へ入るとその異臭の正体が人間の死体だと分かった。
死体は多分、フライネさんが言っていた兵士や冒険者達だ。
その人達は悪魔に襲われたのか体に大きな爪で切り裂かれた跡や食い散らかせた跡があった。
「今にでも吐きそうだな。」
とりあえずここは後にして先へと向かう。
ゆっくり進んでいるとだんだん森が酷く荒らされているように見える。
なぎ倒されている木はもちろん、散らばっていく血の痕跡、人間の死体や森に住んでいるであろう動物達の死体。悪魔ってのは俺が想像してたよりも恐ろしいのだろうか。
あんなやつがいてルージュちゃんは本当に大丈夫なのだろうか? いや、弱気になってはダメだ! ルージュは絶対に生きているそう信じたい。
すると、
「ぐす、ぐす…。」
泣き声が聞こえてくる。もしかして、ルージュちゃんか⁉︎
俺はその泣き声を辿って慌てて走り出す。
そしたら、ルージュちゃんは茂みに身を丸めて隠れていたのだ。
「ルージュちゃん!」
俺がその子を呼ぶと、
「ヨウイチ兄ちゃん!」
っと走って俺にすがり付くかのように抱き抱えられた。
「怖かった、怖かったよー!」
「よしよし、兄ちゃんが来たからにはもう安心だよ。」
そう言って俺は安心させるかのようにルージュちゃんの頭を撫でる。
やばい、ルージュちゃんの頭から甘い臭いと抱き抱えられた部分から温かみを感じる。最高の気分だ! このまま永遠と続ければいいのに。
おっと、いかんいかん。今はこんなことしている場合じゃない。
「さ、ルージュちゃん。ここから今すぐ抜け出そう。」
ルージュちゃんはボロボロのローブで涙を拭いこくりとうなずく。
これを見る限り、あの悪魔によっぽど酷い目に合わされたのだろう。
ローブだけでなく身体も薄汚れていて、俺が来るまでずっと泣きべそをかいていたのだろう。
あの悪魔、今度会ったら絶対に殺してやる!
「お兄ちゃん、私をおんぶしてくれる?」
「え、おんぶか?」
まぁ無理もない、あの悪魔にトラウマを植え付けられたからな。今だって立っている足が震えている。
「よいしょっと。」
俺はしょうがないかのような雰囲気を出し、ルージュちゃんをおんぶし始める。
ルージュちゃんの太ももを持ち、ルージュちゃんのお腹が俺の背中とくっつくという温もり、そして横顔との半端ない近さ。
今日も最高の幸せを味わえたのかもしれない。
このままいけばもしかしたら、お姫様抱っことかいけるのではないだろうか。
そして行く行くは…あー、考えただけでも興奮してくる。
おっと危ない、つい冷静さを失うところだった。早く急いで子を家まで送ってやらないとな。
ズドーン!
突然後ろから物凄い音が聞こえてきた。
「見つけたよ、人間の餓鬼!」
その正体はコウモリのような翼の生えた高身長の男性だった。だが、その男性から多大なる殺意を感じる。
「あわわわわ…。」
後ろでルージュちゃんが慌てている。やっぱりこいつが…。
その男性は俺達を見た瞬間、楽しそうな笑みを浮かべていたのだ。
「おやおや、人間の餓鬼を背負っているやつがいるとはね。でもちょうどいい、探して余計な体力使ったから二人まとめて食ってやるとしましょう。」