第二話 異世界転生して運命の人と出会うロリコン大学生
「大丈夫、お兄ちゃん?」
何やら声が聞こえてくる。
「意識はあるみたい。」
幻聴だろうか? それとも…
「お水、飲ませた方がいいかな?」
口の中に水を無理矢理飲まされ、身体を揺らされる。
「う…俺は…。」
「あっ、やっと起きた。」
ふと目が覚めるとそこには黒いローブを羽織って杖を持った小柄な人が俺の目の前にいたのだ。
よくみると、その子は飛びっきりの可愛い幼女だったのだ。
俺は幻覚かと思い咄嗟に目を逸らしたが、もう一度見るとやっぱり幻覚ではないみたいだ。
黒いショートの髪にルビーのようなキラキラな赤い目、綺麗な素肌に潤いそうな肌色の唇、正に完璧なロリっ子ではないか!
「どうかしたの?」
「あ…いえ、別に何でも。」
つい見惚れてしまった。まさか、出会って早々俺がロリコンである事に気づいたのでは? そうなってはかなりまずい、ここは冷静に保たなければ。
「あの、君が助けてくれたのかな?」
「うん、お兄ちゃんここで倒れてるいたから私が見つけて看病したんだよ。」
幼女との会話、しかもお兄ちゃん呼ばわりと看病。嬉しすぎる!
「ところでお兄ちゃん、何でこんなところで倒れていたの?」
「あぁ、さっき後ろから刃物で刺されて…。」
そう言って俺は周りを見渡すとそこには見た事もない景色が広がっていた。
俺がそこにいたのは暗い夜道のはずなのに、空が明るく周りは木や芝生だらけの森林の中にいたのだ。
「ここ、どこ?」
余りにも変わりすぎた景色により俺は呆然と立ちつくす。
「うん? ここは聖女様の森『ラテス』だよ。もしかして、お兄ちゃん記憶喪失?」
記憶喪失なのか? それに至っては随分と世界観が違うような…。
「あ、そういえば名前言って無かったね。私はルージュ・ニコラ、お兄ちゃんの名前は?」
「俺は、田辺洋一。」
「変わった名前だね。じゃあヨウイチ兄ちゃん、今から私の家に来ない?」
ヨ、ヨウイチ兄ちゃん。何て美しい響きだ。しかも、この子の家にお呼ばれされるとかラッキーすぎる!
「そうだな、とりあえず君の家まで着いてってみるか。」
「やったー! そうと決まれば早く行こう!」
「お、おう。」
ギュ…。
!!
確かルージュちゃんだっけ、何て可愛いお名前なんだろう、目も赤いし、名前からして外国人なのだろうか?
確かに俺は後ろから刺されて死んだはず、なのに血の痕跡はおろか、背中の傷の痛みまで感じない。
だが、今はそんな事はどうでもいい。俺は今、そのルージュちゃんに右手を握らされている事にものすごく感動しているのだ。
小さくて暖かく、柔らかい手つきで離さないかとしっかりと掴まれ引っ張られるという至福のひと時、俺はもうこの右手を一生洗わないかもしれない。
「さ、家までもうすぐだよお兄ちゃん!」
「これは…凄いなぁ。」
森から抜けるとそこにはまた見た事もない景色が広がっていた。
それはまるでヨーロッパやフランスでもいるかのようなレンガや木等で作られた家々がたくさんあって、しかも周りには鎧やローブ等日本では滅多に見られない服装を着た人ばかりでまるでゲーム等の世界にいるかのようだ。
ルージュちゃんの服装を見て半信半疑だと思ったが、今のそれらを見た瞬間直ぐに察した。どうやら俺は小説等で流行りの異世界転生したのだろう。
異世界生活は当時小説等で憧れていたから嬉しい状況ではあるが、死ぬ前に色々とやる事があるのが心残りで何かモヤモヤした気持ちになる。
「どうしたのヨウイチ兄ちゃん?」
「嫌、何でもない。それより早く家まで急ごうか。」
「うん! 家まであと少しだよ!」
やっぱり、ルージュちゃんは可愛いな。こんな可愛い子が他にもたくさんいるのかと思うと皮肉にも異世界転生して良かったと思ってしまう。
「ここが私の家だよ!」
「へ~ここが。」
ルージュちゃんの家は思ったよりもでかいレンガづくりの建物で俺が前の世界で住んでた二階建てアパートの半分くらいに思える。
ガチャ
「お母さん、ただいま!」
「お帰りルージュ、今日は少し帰りが遅かったわね。」
家に上がって見ると中は思ったより結構広いし2階の階段もある。結構羽振りがいい家計なのだろか。
それと、さっきからルージュちゃんにすがりつくお母さんらしき人は何やら台所でごはんを作っていた。
「実はね、今日聖女様の森で倒れている人を助けたんだよ!」
「え、そうなの?」
お母さんは慌てて振り返り俺と目が合った。
見た目からしてルージュちゃんのお母さんはさすが親子というべきか、髪型のロング以外ルージュちゃんと似ている。だが、ところどころに化粧をしている。
所詮はがめつい女、前の世界の女と同じというわけか。
「初めまして、俺は田辺洋一といいます。この子は俺を助けてくれた命の恩人です。」
「まあ、そうなんですか、こちらこそありがとうございます。あ、申し遅れました、私はルージュの母『フライネ・ルージュ』と申します。」
案外、がめつそうに見えて結構礼儀正しい人のようだな。信頼していいのかもしれない。
「それでね、お母さん。このお兄ちゃん記憶喪失して自分の名前以外何も分からないから暫くの間、ここに留まらせてもいい?」
記憶喪失したって一言も言ってない気がするが、その方が何かと都合が良いかもしれない。
「そうねぇ~、いきなりだけどまぁいいわ。家に入れても。」
「やったー!」
「いいんですかお母さん。そんなあっさり受け入れて。」
「いいわよ一人や二人くらい留まらせても。それに、行き場所を失った人を放って置くのも気分が悪いしね。」
「ありがとうございます。あなた達にご迷惑をかけないようお世話になります。」
そう言って俺は申し訳なさそうに頭を下げてはいたが、本音をいえばこの子と一緒に暮らせる事に今でも興奮しそうだった。
「それじゃあ、これからよろしくねヨウイチ兄ちゃん!」
「あぁ、よろしくな。」
僕に見せるルージュちゃんの笑顔、何て微笑ましいのだろう。
今日は最高に幸せな1日だな!
こうして俺は異世界転生で新たな人生スタートを歩む事になる。