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96  創立100周年記念パーティー(24)

「湊人……あなた、やっぱり…」

「!……」

「…何となく。そうじゃないかなって、ちょっと思ってた」

「……」

「で。どうなのよ?」

「…………好きだよ。大好き」


湊人は観念したような、開き直ったような、複雑な笑顔で恵に答えた。

恵は胸の前で両腕を組んでじっと湊人を見据えていた。


「……」

「だからって、何もしない。俺がもし動いたら……うさみみちゃんが悲しむから」

「……」

「こんな気持ち、初めてなんだ。めっちゃ好き。今までも好きになった女の子はいたし、彼氏がいようがいまいが欲しかったら奪い取ってた」


恵は薄々知ってはいたが、湊人のクズ発言にまた目を細めた。


「でも。うさみみちゃんにそんな事をしたら絶対泣かせるから……できない。泣かせたくないんだ。彼女は」

「……あなたも本当の恋、したのかもね」

「……ああ。歌でよくツライ恋の歌とか聴いてたけど、ほんっとにこんなに苦しいとはねー」

「……大丈夫?」

「……うん。また、流青がヘマしたり何かしたら、その隙を確実に狙っていくから」

「ふふっ」

「ああっ!!きのぴいっ!!!」

「美久ーっ!!」


新しいドレスに着替えてきた美久子が、恵と湊人の元に駆け寄ってきた。

恵も美久子に走り寄り、ぎゅっと抱きしめた。


「美久……よかった。よかった、無事で。ごめん、助けられなくて、ほんとにごめん!」

「違うっ!違うよ!!きのぴい、私こそごめん!不注意で、あんな奴らに攫われて」

「怪我は無い?痛いところは?あっ!肩!青くなってるっ!」


美久子が着ているドレスが肩まで見えるオフショルダーのため、恵に右肩の青アザがバレてしまった。


「何っ!?怪我っ!?」


湊人も走り寄り、美久子の肩を見る。


「だ、大丈夫!自分でソファーから転げ落ちた時にちょっと打っただけだから!今は全然痛くないから、大丈夫!」

「……アイツら……ぜってぇコロス」

「湊人、あなたは何もしなくていいから。警察におまかせしたらいいから。大丈夫よ。あなたのホテルのビデオと、パパのお店のビデオで奴らは何の申し開きも出来ないわ」

「あああっ!そうだ!きのぴい、きのぴいパパが助けに来てくれたの!もうどうしようと思ってたら、きのぴいパパが来てくれて、縛られてた紐を切って助けてくれたの。きのぴいが連絡してくれたんだよね?本当にありがとう!」


恵がガシッと美久子を抱きしめた。


「き、きのぴい…」


恵は少し震えながら泣いていた。


「縛られてたなんて…そんな怖い目に…あの時、助けられなくてほんとに、ごめん…」


美久子も目に涙を浮かべながら、恵を抱きしめ返した。


「きのぴい、私こそ本当にごめん。アイツらと戦ってくれたって流青くんから聞いたよ。怖かったよね。きのぴいこそ怪我したって。本当にごめん。どこを怪我したの?大丈夫?痛くない?」


少し離れお互いに顔を見合わせた。

二人とも涙でマスカラが取れて、鼻が赤くなった顔を見て噴き出す。


「ぶふっ!美久!パンダ目になってるよ!鼻も赤い!」

「あはは!きのぴいもマスカラ取れて、涙が黒いよ!」



湊人は美久子が笑っている姿を見て、小さく微笑んでいた。

自分が選んだドレスを着て笑っている美久子が可愛くて仕方がない。

本当なら抱きしめたい、このまま攫ってしまいたいという気持ちに蓋をした。


「はいはい!二人ともー!パーティー終わっちゃうよ!お化粧直してもらって、早く行こう!」

「はっ!ほんとだ!」

「急がなきゃ!」


美久子と恵は慌てて美容室のプロにメイクを直してもらった。

美久子の肩の青あざは、プロが素晴らしい早業テクニックで隠してくれた。

更に肌がキラキラ見えるボディーパウダーを施してくれて、自分がキラキラしているようで何だかフワフワドキドキした。


準備が整い、三人はパーティー会場に急いで向かった。


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