92 創立100周年記念パーティー(20)
六本木署に着くと個室に案内され、事情聴取を受けた。
初めて受ける事情聴取の雰囲気に緊張し怯える美久子の傍に、流青はずっとついていた。
美久子は自分が覚えていることを全て話し、その時感じた恐怖なども正直に話した。
途中、恐怖を思い出し話せなくなると、流青が握っている手をぎゅっと握り締めてくれて心が落ち着き、改めて話し出すことが何度かあった。
恵の父レオン、健二、岩田部長、一橋達も事情を聞かれそれぞれ30分もかからず終わった。
「……わかりました。大変なご経験の後に、話しにくいお話にも丁寧に答えてくださってありがとうございました。
今日はこの辺りで大丈夫です。」
「…あれ…?もういいんですか?」
「はい。レオンさんのお店の防犯カメラの映像と、ホテルでの防犯カメラの映像も提出頂いてますので証拠としては十分です。更に…」
「……?」
「…福田大臣から…強いお達しがありまして…」
「へ?福田大臣?」
「はい」
「…えーと、どちらの?」
「現総務大臣兼内閣府特命担当大臣です。」
「はぁ」
「美久子、福田の父親だよ」
「?……うええっ!?な、七海のおとーさんっ!?」
「そう」
「えーーっ!?し、知らなかった…。
七海、お父さんは公務員なんだーって言ってたけど…」
「公務員……間違ってはないな…。
国会議員は国家公務員で特別職だからな」
流青に言われ、ほえーっと口を開けて聞いていた。
警察の方々は美久子を苦笑いで見つめていた。
「もう…上の方は大変だったみたいです。
いきなり福田大臣がものすごい剣幕で警察庁長官と警視総監に電話を掛けてきて、宇佐美さんを今すぐに救出しろと」
「はぁ」
「…とにかく、ご無事で何よりでした」
「本当に…警察の皆さま、ありがとうございました」
美久子はしっかり頭を下げて警察の方々にお礼を言った。
部屋を出ると、美久子の両親の孝とゆり子が待っていた。
「美久子っ!!!」
「美久ちゃん!!!」
「お父さん!お母さんっ!」
美久子は両親の顔を見ると張り詰めていた気持ちが一気に溢れ出し、号泣した。
二人に抱き締められ、暫く泣き止まなかった。
その三人の姿を、流青は唇を噛み締め苦しい形相で見つめていた。