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9  藍子おばあちゃんのこと(3)

孫の中で唯一の女の子だった私は、おばあちゃんにとても可愛がってもらった。

小さい頃、周りは兄や従兄弟のような男の子しかおらず、幼稚園に入るまではてっきり自分も男の子なんだと思っていた。

私にラブリーな服を着せたがった母親は、兄と同じ短パンを履きたがる私を見ては涙目だった。

そんな母親を見て困った私は、大人しく薄いピンクのフリフリワンピースを着た。

性格は元気だけど結構空気の読める素直な子供だったと思う。


そんな元気いっぱいの私の頭をおばあちゃんはいつも優しく撫でてくれた。

おばあちゃんの少し皺のある手のひらの、優しい温かさを今でも覚えている。

懐かしい。おばあちゃんに会いたい。



おばあちゃんの口癖は『身の丈に合った生活をしなさい。もったいないオバケが出るよ』だった。

私も何度もおばあちゃんから聞いた口癖。


でもね、おばあちゃん、矛盾してないかな。

小市民の私にこんな凄いセレブ学院は本当に合ってるのかな。

入学して一年経った今でも周りから浮いてるし、身の丈に全く合っていない気がして仕方がない。

楽しいけれど違和感が半端じゃない。

けれど、どこかしっくりくる気もする。何故?

……と、ずっと不思議に思っていた。


前世の記憶が追加され、その理由を知った。



孫たちの教育費は全て、亡き藍子おばあちゃんの遺言で『藍子おばあちゃん教育基金』から出してくれている。

実の孫達のみならず、大変優秀なのにもかかわらず家庭の事情で進学を断念せざるを得ない他人様(ひとさま)の子供達にも、基金は支援を惜しまなかった。

基金で学校、大学に進学し、立派な社会人になった当時の子供達は、感謝の気持ちを倍返しにして基金に寄付してくれる。

基金の潤沢な資金は、心も温まる素晴らしいお金なのだ。


さて、そんな素晴らしいおばあちゃん基金のお蔭で我が家の家計は火の車にならず、私は日々格差社会を身を持って経験しながら毎日元気に学院に通っている。

私もいつか将来、必ずおばあちゃん基金に倍返ししようと思っている。


初めはひとりぼっちで寂しかった高校生活も、七海ときのぴいという最高にステキな友達と出会えたから、今ではここに通わせてもらってよかったなあとつくづく思う。


天国の藍子おばあちゃん、本当にありがとうございます。合掌。



そして、前世の記憶が追加された、今なら更に解る。


ずっと心の奥底で思ってた。

今回は間違えない。今度こそ間違えない。

いつでも出過ぎず出なさ過ぎず。


地味に目立たず、普通に生きるのだ。




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