82 創立100周年記念パーティー(10)
「お前は俺のものなんだから、もう勝手に怪我をするなよ。いいな?」
「……もう、わかったわよ…」
「ふっ」
キスと健二の言葉と流し目の笑顔に顔が真っ赤になった恵は、俯いて健二のスーツをぎゅっと握った。
恵を抱き締めたまま、耳に付けたインカムで何かを聞いた健二が、眉間に皺を寄せた。
「……恵、悪いがお前の親父さんに、すぐ連絡をとってくれるか」
「え?パパに?」
「ああ、頼む」
「わ、わかった」
恵はスマホで父親に電話を掛け、すぐに健二と替わった。
「御無沙汰しています。常盤です。……はい、実は至急、お願いしたいことがありまして……」
恵の父親と話し終えた健二は、そのまま恵を横抱きで抱き上げた。
ドレスが裂けた所を自分の身体側にして、他人には見せないようにした。
「何処に行くの?」
「医務室だ」
「えっ?私ならもう大丈夫よ。私も美久の所に行く!」
「駄目だ。まだ脇腹が痛むだろう。とりあえず見てもらえ」
「嫌よ、私も行く!」
ちゅっ
「っ!……」
「まだ言うなら、ずっとキスしたまま運ぶぞ」
「!?……やめておきます」
「ふふっ。可愛いな」
「かっ!可愛い!?」
「ああ、可愛い。このまま食べてしまいたいくらい可愛い。
良い子だから大人しく待ってろ。
お前の親父さん、めちゃくちゃ強いから大丈夫だろ?
すぐに戻ってくるから、診てもらって…綺麗にして、待っててくれ」
健二は耳から首まで真っ赤になって固まった恵をホテルの医務室まで連れて行き、湊人と数件に電話をした後、急いで六本木に向かった。