81 創立100周年記念パーティー(9)
「恵っ!大丈夫かっ!?」
健二がGPSを使って探し当てた恵は、地下駐車場のエレベーターホールの外の壁に寄り掛かって座っていた。
死角になっていて、発見され難い場所だった。
恵は健二の呼び掛けに目を瞑ったまま反応が無い。
「恵っ、俺だ!目を開けてくれ!」
薄らと目を開き、恵は健二を見た。
「…健二…」
「そうだ!俺だ!大丈夫か?何処をやられた?」
「脇腹…っつ!」
「大丈夫かっ!?」
「…大丈夫。これくらい…平気。アイツ、多分ボクシング、やってるわ…現役時代だったら絶対、負けないのに…。あっ!美久は!?」
「…大丈夫だ。流青とうちの数人が追ってる。警察も。
恵が連絡してくれたお蔭だ。ありがとう」
「…よかった…お願い、美久を、無事に助けて欲しい。…ごめん。助けられなかった…ほんと、ごめん」
恵はくしゃりと顔を歪ませて泣き出した。
「お前は全く悪くない。恵は良くやってくれた…俺の方こそすまん。恵をこんな目に合わせて…すまない」
健二は泣いている恵を抱き締めた。
「…ふっ、ううっ、ドレス、ご、めん、蹴りの時に、スカートがっ、巻き付いて、動けなくて、破いてっ、ごめんっ」
今夜、恵が着ているワインレッドのサテンのロングドレスは、健二からのプレゼントだった。
健二のスーツの胸元のチーフもワインレッドだった。
恵のロングドレスは右側が裂けたように、太股の付け根辺りまで破れていた。
「そんなの、いい。また買ってやる。…怖かったよな。よくがんばった。本当に…すまない」
更に泣いて健二に縋り付く恵を、ぎゅっと抱き締めた。
「……さっきの…お前の電話の声を聞いて、俺は凄く怖かった」
「ふぅっ…えっ…?」
「…恵に、何かあったらって、本当に怖かった。…もう、頼むから、無茶はしないでくれ。頼む…」
「……うん、ごめん」
恵は初めて健二の泣き出しそうな顔を見た。
胸がぎゅっと痛くなった。
健二は恵の頬の涙を指で拭い、キスをした。