80 創立100周年記念パーティー(8)
「は?お前、誰にそんな口聞いてんの?」
「あ…」
「このホテル、俺のだっちゅーの」
「え!?」
「俺がここの大株主。もちろん個人で。
だからこんな若造にでも、ちょっとしたお願いなら皆さん叶えてくれるんです。
お待たせしましたー。そろそろお願いしまーす」
「おいっ!離せっ」「ちょっと!何するの!嫌っ、離して!」
湊人が目で合図をすると、スーツ姿の男達が瀬田川親子の両腕を掴んで立たせ、抵抗する二人を引きずりながら奥にあるバックヤードの通路から連れて行った。
部屋に静けさが戻り、警察に電話をし終えた信彦が戻って来た。
「あいつらは?」
「…当ホテルには、お暴れになるような馬鹿野郎ども用の、特別なお部屋をご準備いたしております。
地下3階で窓がまーったく無いので、自慢の景色等は皆無ですが、最高級の鉄格子を備えております」
「……」
「警察にはそちらに直接行って頂きます。
僕と先ほどの者達で対応しますので、信彦おじさんはそろそろ会場にお願いします。
乾家の主役がいらっしゃらないと、パーティーが始まりませんよ」
「…主役は正彦兄さんと父だ。…湊人君、色々とありがとう。本当に助かったよ」
「いえ、僕は何も」
「…君、もしかして」
「はい?」
「……いや、大丈夫だ。すまない。本当にありがとう。
先にそちらを片付けてから会場に行くよ。
パーティーなんて私がいなくても全く支障は無いからね」
「良いんですか?すみません、ありがとうございます。
ではご案内します」
「……湊人君、最近、きみの親父に似てきたね」
「やめてください。あんなめちゃくちゃじゃないです」
「……そうだね。確かにね」
信彦と湊人は、瀬田川親子が居る特別な部屋へと向かった。