75 創立100周年記念パーティー(3) ◇
「こちらは父の八木不動産に入ってきた案件なのですが…」
「これは!うちの病院の…」
「瀬田川院長、病院の土地ですが、既に半分は担保に入っていますよね。」
「何故それをっ!」
「瀬田川院長が土地を担保にお金を借りられた金融業者の方は、かなりディープな組織の方です。ご存知ですよね?」
「……」
「その業者の方が、弊社に話を持って来られました。内々に。もちろん、こちらとしては丁重にお断りしましたが」
「……」
「…かなりギャンブルがお好きだそうですね。
そろそろ、あの金融業者の方にも返済が難しくなってきているのではないですか?」
「だっ、黙れっ!若造がっ!」
「ええ。仰る通り若造です。17歳ですので」
「瀬田川。お前が黙れ」
「っ!正彦っ!」
「おれの名前を呼ぶな。
今、お前に呼ばれると反吐が出る。
……経営失敗の隠蔽も、自分の欲で出来た借金返済にうちを当てにするのも、最低だ。
しかしそれ以上に、何も悪くない女の子に……お前たちは何をしようとしたんだっ!!
同じ事を自分の娘にされたら、お前はどう思うんだ!!
…医師としても、経営者としても、人間としても、お前は最低だ。
俺は今後一切、お前とは関わりを持たない。
百合奈ちゃん、君には大変失望したよ。
流青と婚約なんて論外だ。
うちの甥には今後一切関わらないでくれ」
「正彦おじ様っ!」
「二度とお前たちの顔は見たくない。
話が終わったら、ここからさっさと帰れ。
信彦、俺は先に行く。悪いが後は頼む」
正彦は瀬田川を一切見ずに、部屋を出て行った。