72 叩き潰す ◇
「コイツら、ほんっとにサイテーだな…」
湊人の声が呆れと怒りで少し震える。
ドガッ!!!
SSRで全ての音声を聞き終わった流青が目の前の机を思い切り殴った。
「…流青。どうする」
「…叩き潰す」
「だな」
「だね-。完膚無きまで、ね」
「…今から行ってくる」
「待て。流青、……敵は泳がせて誘い込め」
「…?」
「…今度、お前のとこの本家の創立記念パーティー。
湊人、あの会場、お前んとこだよな」
「そーだよ。……何でもやっちゃうよー」
「映像が無いのは手ぬるいが……ま、いいだろう」
「…?」
「ふざけた野郎達には、こっちもふざけさせてもらう」
「…いいねー。健ちゃん、さすがだね。相変わらずお顔が物騒だよ」
「…。流青、その日は宇佐美さんとペアルックで行け」
「は?ペアルック?……」
「そうだ」
「おっ!いいねー!俺もうさみみちゃんとペアルッ」
ドゴッ!!!
「痛ってーーーー!!流青っ!!」
「お前がふざけた事をぬかすからだ。顔面じゃなくて有難いと思え」
「湊人、今はやめとけ」
「……はーい。痛ってー」
「…俺は瀬田川病院の財務状況を調べる」
「そうだな。なかなか面白い数字が出て来るんじゃないか?」
「ああ」
「俺もちょっと調べてみるー」
「何をだ」
「前からアノ病院、売りに出すとかウワサはあったんだよねー。
杉並区で土地の規模もまあまああるから、ウチも興味は持ったみたいなんだけど。仲介業者がちょっとキナ臭いらしくてねー」
「なるほど」
「…来週が楽しみだな」
「だね!……」
健二は百合奈のスマホとスクールバッグに超小型のGPSと盗聴器を着けていた。
何か仕掛けてくると警戒はしていたが、まさか父親まで関わっていたとは。
昔から恵は百合奈と合わず毛嫌いしていた。
不思議に思っていたが、今思うと女の勘は恐ろしい。
健二はまだまだ修行を積まねばと自省した。