67 武将の天敵
「武将、あっ、常盤くん。おはようございます!」
「おはよう。今朝は大丈夫だったか?」
「はい!ちょっとあったけど、流青くんが護ってくれたから大丈夫でした」
「そうか。もし何かあれば遠慮無く言えよ」
「はい。ありがとうございます!
あっ!これ、遅くなってごめんなさい。
ワッフルのお代、立て替えてくれてありがとうございました。
きのぴいに渡してもらおうと思ったら、私からは受け取らないと思うから直接渡してって言われて…」
「…ああ。いや、大丈夫だ。それは取っていてくれ。」
「えっ!でも」
「いや、お礼だ。お蔭で恵と、うまくいった。」
「あっ!…ふふっ。おめでとうございます。」
「…ああ。こちらこそ、ありがとう」
「あっ!じゃあ、このお代で何かきのぴいと二人で食べてもらえるような食べ物買ってきますね!武将は何が好きですか?お菓子?」
「食べられるもんなら何でも…あ。」
「?」
「…らっきょう」
「らっきょう?」
「ああ。あれだけは駄目だ」
「……。」
武将、身体おっきいのに、小さならっきょうが苦手…
百戦錬磨の武将の天敵が、らっきょう…
心優しい武将はきっと、カレーとかに天敵が入っていたら眉間にシワを寄せて、残すのが悪いから必死に食べたり…
「……ぶふっ。あはは!」
「!!」
「はい!わかりました!武将ときのぴいの為に、らっきょう以外の貢ぎ物を調達して参ります!
ワッフル代はお言葉に甘えますね。ご馳走さまでした。ではっ!」
「……。」
美久子は武将の弱味を握ったことでテンションが上がり、散々悪口を言われたことをこの時だけはすっかり忘れていた。
今朝、流青と教室に入って来た時もかなりの女子からキツい眼差しで見られた。
けれど、流青が一緒だったから、直接何か言ってくる子はいなかった。
悲しいけれど、いつかはこの状況も落ち着くだろうと思うようにした。
健二と話し終えた美久子は、きのぴいに何が食べたいかリサーチするために自席に戻りメモの用意をした。
あれは……流青が惚れるのもわかるな。
しかし、すっかり武将呼びだな……フフッ。ま、いいか。
流青が教室に居なくてよかったと健二は少し思った。
さっきの笑顔を健二に向けているのを見たら、流青は嫉妬で大変だっただろう。
その様子を見ていた湊人は、ひとり小さな溜息をついた。
※※※※※※※※※
その頃、アメリカで流青と美久子の手つなぎ写真のSNSを見た百合奈は激怒していた。
「何これっ!誰よ、この女!?流くんと手を繋ぐなんてどういう事!?
絶対に許せない!早く日本に帰らなくちゃ。パパに電話を……」