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66  たくさんの悪口

週明けの月曜日。


家の玄関のドアを開けたら、流青くんが立っていた。

朝日を浴びて格好良いにも程がある。

昨日の夜あんなに断ったのにお迎えに来てくれていた。


「美久子。おはよう」

「……。おはよう。もう、流青くん…」

「さあ、行こう」

「…はい。ありがと…」


「平松さん。おはようございます。」

「おはようございます。今日は良いお天気ですね!

さあ、出発しましょう。私は朝のドライブが一番好きでして、いい気分ですねー」

「……。ごめんなさい。平松さんにまでご迷惑をお掛けして…」

「美久子。俺が一緒に行きたいんだ」

「…はい。ごめんなさい。ありがとう」


そう。

流青くんがゴリ押しでお迎えに来てくれたのには訳がある。


一昨日の土曜日の放課後。

渋谷を美形高校生5人(と庶民1人)が歩いていたのが目立っていて、

その場にいた学院生や他校生までもが写真を撮ってSNSにアップしたらしい。

特に、手を繋いで歩いていた流青くんと私はその写真がアップされて、

コメント欄がエラいことになっているらしい。


私はそれを見ていないから分からないけれど、

昨日きのぴいと七海からRINEが来て注意するように言われた。

もちろん流青くんからも電話でお迎えの事を言われたけれど、丁重にお断りをした。

朝なら明るいし、人目もあるから大丈夫と説得したけどダメだった。

心配してくれたんだな。


当分の間は平松さんに送って頂くことになった。

帰りも流青くんと時間が合わない日は私一人で送ってくださるらしい。

本当に申し訳無い。

けれど、これがとてもありがたい事だとすぐに気付かされた。



「信じられない!流青くんが女子と二人で歩いてるなんて!」

「木下さんや福田さんならまだ納得できるけど、全然似合ってないじゃない!」

「全然可愛くない。流青くんの彼女だなんて認められない。」

「えー!ただのブスじゃない。すごくムカつく!」

「ショック!めちゃくちゃ地味じゃん!」 

「多分、すぐに飽きられて捨てられるって」

「私の方が絶対似合う!離れろ!」



車から降りて教室まで流青くんと歩いている時に四方から聞こえてくる声。

少しは覚悟してたけど、ここまであからさまに酷いとは。

以前のキラキラ女子3人組なんて、可愛いものだったんだ。


流青くんは私を傷つける事を言った人たちを、氷の様な冷たい目で睨みつけ、黙らせる。

その後、私に甘々なとても優しい笑顔で話し掛けてくれる。

それを見た周りの女子たちは息を吞んで固まっている。

顔が赤くなっている人もいる。私も同じだ。


悪口を言う人数が多すぎて、一昨日の渋谷みたいに直接言うのは不可能だ。

睨み付け、その後に私にだけにとびきりの笑顔を見せる。

こうしてわざわざたくさんの人に見せつけるのが効果的なんだろう。


流青くんが誰にも見せないこの笑顔は、私にだけなんだって。

だから、諦めてくれって。


改めて、凄い人を好きになってしまったんだと思った。


みんな、流青くんがただ好きなだけ。

私も同じだ。

だから彼女たちの気持ちは痛い程わかる。

でも人を傷付けるような悪口を言うのは、絶対に駄目だ。

そんな悪口を言う人を、流青くんが好きになるはずが無い。

だから私は言わない。





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