55 美久子の手紙(2)
『 乾くんへ
乾くんの顔を見ると、緊張してちゃんと話せなくなってしまうからお手紙を書きました。
あまり綺麗な字では無いので、読みにくかったらごめんなさい。
昨日は本当にごめんなさい。
私はずっと乾くんに憧れていました。
その憧れの乾くんに告白してもらえて、好きだと言ってもらえて、突然の事で本当に驚いてびっくりして、夢を見ているようでした。
今でも半分信じられません。
今も思い出すと胸がどきどきします。
本当にうれしかった。本当にありがとう。
私の家まで送ってくれてありがとう。
ちゃんとお礼も言わずにごめんなさい。
まさか、乾くんが私との結婚まで考えてくれていたなんて、本当にびっくりして、何が何だか分からなくなって、ひどい態度を取ってしまいました。
あんな冷たい失礼な態度を取ってしまって、反省しています。
ごめんなさい。どうか許してください。
私は乾くんが大好きです。
学院の入学式の時、体育館の壇上で新入生の挨拶をしている乾くんを初めて見た時からずっと好きでした。
私からも改めてお願いします。
私を乾くんの彼女にしてください。
こんな何の取り柄も無い普通の私ですが、乾くんのことが好きな気持ちだけは誰にも負けません。
結婚は、今はまだ高校生だからすぐには考えられないけれど、
将来大人になったら、乾くんのお嫁さんにしてもらえませんか。
そしていつか、プロポーズをしてもらえたら本当に嬉しいです。
これから先、ずっと乾くんと一緒に仲良く過ごしながら、その日を楽しみに待ちたいです。
どうぞよろしくお願いします。
大好きな乾くんへ
美久子より 』
流青は下を向いて食い入るような表情で美久子の手紙を読んでいた。
美久子はその間、不安な気持ちを表に出さないように俯いたままじっとしていた。
ポタッ……
何か音がして、美久子が顔を上げると驚愕した。
流青の頬に、いくつもの涙が流れていた。