5 乾くん
「乾くん…。」
ベッド周りのカーテンの隙間から、お顔も頭も運動も学年でトップクラスのクール男子、乾 流青くんがじっとこちらを見て立っていた。
驚き過ぎて続く言葉が出ない。
何故!?ここに!?
お互いに無言が続く。
乾くん、お顔半分しか見えないけどやっぱりかっこいい。
180センチ近くある背の高い黒髪美男子は、斜めに流した少し長めの前髪の隙間から切れ長二重の真っ黒な目で、未だこちらをじっと見て立っている。
な、なんか気まずい。
すごい。カーテン越しでもキラキライケメンオーラが見えるよお。
背が高いから威圧感はちょっとだけあるけど。
緊張して顔が火照ってきた。どうしよう。は、恥ずかしい。
「…。大丈夫か?」
やっと、乾くんが喋ってくれた。
「う、うん。ありがとう。大丈夫…です。…えーっと…。」
「…。ちょうどクラブ行くところで前を通ったから…。
昼休み、すごく顔色悪かったけど…本当に大丈夫か?」
「…あー。うん。なんかごめんね。ありがとう…。
ずっと寝させてもらってたから、ちょっとマシになりました。」
「そうか。…なら良かった。」
安心したのか、乾くんが少しはにかんだ笑顔見せた。
でたー!クール男子のハニカミ笑顔!レアすぎる!
かっ、可愛いー!
余計にドキドキしてきた。
ベッドで寝てたけど、なんだか居たたまれなくて上半身だけゴソゴソと起き上がる。
乾くんが更に少しカーテンを開けた。
ほぼ全身が見えた!やっぱりいつ見てもほんとにかっこいい。
こんなに間近でガッツリ乾くんを見られるなんて…
あれ?なんか元気出てきたぞ。
至高のイケメンは下々の者に元気をも与えるんだ。すごい。
「宇佐美、帰りは…?」
「は、はい。…もうすぐお母さんが迎えに来てくれます。」
「…そうか。…じゃ、大丈夫だな…。…俺、そろそろ…」
「…うん。ありがとう。」
その時、ガラガラと保健室のドアが開いた。
今度は美久子の母親だった。
やっとヒーローが登場しました。